467 エヴァンズ邸へ
あれから……。
荷物を乗せるためのワゴン車として使用されている馬車と、時間差で、皇宮を出立し……。
馬車の中で、アルや精霊関連のことについての詳しい事情を説明すると、侯爵夫人は、お伽噺にしか出てこないような精霊の存在に、驚きでいっぱいの雰囲気だったものの。
こういう場面で、私達が嘘を言う訳もないだろうからと、私達の言葉を一度も疑うことはなく、ソフィアさんを今後、助ける意味合いでも、精霊の協力が絶対に必要不可欠だということで、私達の説明を聞いて、どこまでも恐縮して、感謝しきりの様子だった。
本当は、ルーカスさんも一緒に来れたなら、極秘で一緒に来ることが出来れば良かったんだけど……。
流石に、今現在、ルーカスさんの身柄が、皇宮に拘束されていることを思えば、難しい問題であり……。
もしも万が一、ルーカスさんが皇宮から外部に出ているのが、貴族などの上流階級の人達に見つかってしまったら、それだけで、ルーカスさんの今後についても不利になりかねず、厳しく追及されてしまう恐れもあることから、当初、その案は出ていたものの、お父様の判断で、泣く泣く却下されることになってしまった。
本当なら……、心の底から大切にしている妹さんがどうなったのかを見届けたかっただろうし、許されるのなら、私達と一緒に、一度、妹さんのもとへ戻りたかったと思うんだけど……。
こればっかりは、ルーカスさんのことを守る意味でも、大事なことだからと、お父様が決断し、その通達が行われた時、ルーカスさん自身も、そのことに関して、『改めて、最大限のご配慮を頂き、本当に、ありがとうございます』と、直ぐに納得して、受け入れてしまったみたい。
その代わり、私が自分の能力を使って、ベラさんとソフィアさんを助けることが出来たあと……。
今、現在、皇宮に身柄を拘束されているルーカスさんに、ウィリアムお兄様も含めて、ソフィアさんのことを伝えに、私達が、別途、面会をすることの出来る時間を、わざわざ、お父様が用意してくれることになっていた。
それについては、食事会があった、あの日以降、ルーカスさんとは、全く喋れていなかったこともあり、本当に、お父様に感謝していて……。
私だけではなく、テレーゼ様が捕まってから、ウィリアムお兄様も、あまりにも多忙すぎて、未だに、あれ以降、ルーカスさんとは面と向かって、きちんと話し合うことも出来ていなかったみたいで、この機会に、お互いにしっかりと話し合えるのなら、その方が絶対に良いと思う。
――ルーカスさんには、かけたい言葉が、あまりにも沢山ありすぎるから……。
特に、私ですら、そうなのだから、ルーカスさんと幼馴染みで、長年の親友でもあるウィリアムお兄様は、きっともっと、ルーカスさんに対して思っていることや、かけたい言葉が、今この瞬間にも、募っていっているんじゃないかな……?
それに、結果的に、夫人も、皇宮へと残してくることになってしまったルーカスさんのことは、何よりも気がかりで仕方がないはずで……。
お父様とお兄様の配慮で、ルーカスさんの刑罰については、おおよそ決まったことで、多少なりとも、安心する気持ちもあるとは思うものの。
今、この瞬間にも……。
やっぱりどうしても、自分の息子であるルーカスさんのことや、娘のソフィアさんのことを思い遣って、複雑な心境を抱いているであろうということは、しっかりと私達の説明を聞いてくれつつも、心ここにあらずといった感じで、時折、疲弊し、憔悴したような顔を覗かせていることからも、明らかだった。
――私自身、その姿に、どうしても胸が痛くなってきてしまったんだけど……。
私達に対しては、気丈に振る舞えるようにと努力してくれているのが、目に見えて分かるから、何も言えなくて……。
結局、侯爵邸に着くまでの間、私は、さりげなく、侯爵夫人が、馬車の中で少しでも休めるようにと、必要最低限のこと以外で、話す頻度を下げたりするくらいのことしか出来なかった。
……そうして。
私達が、侯爵邸へと辿り着くと……。
直ぐに、エヴァンズ家の家令が、平時では考えられないくらいに、バタバタと慌てた様子で、私達のことを出迎えてくれた。
皇宮から紹介された人と共に、侯爵夫人が帰ってくることは分かっていても、まさか……、皇太子であるお兄様と、皇女である私が一緒に来ることになったとは、夢にも思わなかったのだろう……。
「……奥様っっ、お帰りなさいませっっ!」
と、声を出してから、私達の姿が一緒に見えたことで、目が点になって、硬直するように固まったあと。
一瞬の間があって……。
「……もっ、申し訳ありません。
まさか……、皇太子殿下、ならびに、皇女殿下まで、いらっしゃるとは夢にも思っておらず……。
きちんとした挨拶も出来ないまま……っ、先に奥様に、挨拶をしてしまって……!」
と、困惑しきりの様子で、頭を下げて、律儀に、何度も、皇族に向ける挨拶をし始めてくれたのを、ウィリアムお兄様が『……いや、大丈夫だ。俺たちに、堅苦しい挨拶なんかは必要ない』と、止めてくれるのを、横目で見ながら……。
私自身も……。
「お気遣い頂き、本当に、ありがとうございます。
ですが、今は、緊急事態ですので、先に、ソフィアさんの命を救うのが、第一優先だと思います……っ!
今すぐ、私達を、ソフィアさんのいる場所に案内してくれますか……?」
と、急ぎめで、声をかける。
私の言葉を聞いて、優秀な、エヴァンズ家の家令は、直ぐにハッとした様子で、挨拶もそこそこに、『ソフィアお嬢様は、此方です……っ!』と、パタパタと来た道を戻るように、長い廊下を通って、ソフィアさんがいる場所まで、私達のことを案内してくれ始めた。
そのタイミングで、ソフィアさんの身体のことなどを考えて、侯爵邸のメイド達に、自ら指示を出しに行った侯爵夫人と、ほんの僅かばかりの時間、別れることになり、先に、ソフィアさんがいるという子供部屋まで、みんなで、足を向かわせていると……。
建国祭の期間中に、私達が来た時には、活気があって賑やかだったエヴァンズ家の状況とは、まるで、様変わりをするかの如く、暗く淀んだような雰囲気があり、従者達も含めて、何も手に付かない様子で、侯爵夫人と共にやってきた、来客者である私達のことを、みんな、遠目から見守るように気にしているのが、私にも理解出来た。
それだけで……。
エヴァンズ家の人達が……、侯爵を筆頭に、夫人についても、ルーカスさんについても、従者達からの信頼が厚くて、『自分が生涯仕えるべき、大切な主人』だと思われていることの、何よりの証拠だと言えるだろう。
こういう緊急時においても、従者としての教育が、日頃から徹底されているからこそ……。
私達がいる手前、此方に向かって、詳しく事情を聞いてくるような人は、誰もいないものの。
ルーカスさんのことも、ソフィアさんのことも、まるで、自分達の子供のように心配しているのが、その姿からも明らかで……。
自分達の今後を心配するよりもまず……、『若様と、お嬢様は、一体どうなるのだろう……?』と、不安に駆られた様子に、私は、一人一人の心のケアをしながら、安心させてあげたい気持ちを、今は、グッと堪えつつ、家令の案内で、みんなと一緒に、なるべく急ぎめで、ソフィアさんのもとへと向かっていく。
そうして、その道中で……。
「あの……っ、皇太子殿下……、皇女殿下……っ。
この期に及んで、失礼なことをお聞きするようで……、誠に、申し訳ないのですが……っ!
今回、皇宮の紹介で、ソフィアお嬢様のことを、助けてくれるという御方は、一体、どちらに、いらっしゃるのでしょうか……?
も、もしや……っ、アルフレッド様が、お嬢様のことを……っ!?」
と……。
とりあえず、人命救助が優先だからと、碌に説明もしないまま、真剣な表情を浮かべて、廊下を歩いていた私達の姿から……。
肝心の、ソフィアさんを助けることが出来る人間に、心当たりがなさ過ぎるほど、いつもの人間しかいないことに、不安を感じてしまったのか。
あまりにも戸惑った様子の家令から話しかけられて、ソフィアさんを助けたいという逸る気持ちが抑えられず、ここまで来てしまったことを、私自身、ほんの少し後悔しつつも……。
よくよく、ウィリアムお兄様、私、セオドア、アル、ローラ、エリスといった、この場にいる人間を見てみれば、確かに、世間から見ても、お父様の紹介で皇宮に留まることになったとされる、毒などの分析などにも詳しいアルが、一番、ソフィアさんを助けるには、あり得そうな人材であることには間違いないだろう。
それ以外に、新たにやってきた人がいないのだから、エヴァンズ家の優秀な家令が、そう考えてしまうのも、本当に、極々、自然な流れだといってもいい。
実際に、私自身も、もしも、同じ立場だったなら、自分達の大切な人を助けられる人間が、一体、誰なのかと、不安に駆られてしまい、きっと彼と同じように考えたはずだから……。
「あの……っ、えっと……、一応……、今回、ソフィアさんのことを助けるのは、私なのですが……っ」
そのあとで、何となく、自分が大手を振って助けるのだとは言いにくい状況に、おずおずと控えめながらも、白状するように、そっと、声をあげると……。
目の前で、エヴァンズ家に長年勤めているであろう、老年の執事のその瞳が、ただただ、驚きに見開かれていくのが見えた。
――侯爵と、夫人に言った時もそうだったけど、まさか、皇女自らが、助けに来てくれただなんて、きっと、予想もしていなかったのだろう。
「こ……っ、これはっ、大変、失礼致しましたっっ……!
まさか……っ、皇女殿下自らが、ソフィアお嬢様のことを助けに来て下さるとは、思いもしていなかったものですから……っ!
本当に、何とお礼を、お伝えしたらいいのか……っ!!
皇女殿下は、まさしくっ、この世に舞い降りて下さった一筋の光……っ、救世主に他なりません……っ!」
と……。
まさかの、教会で信仰されている最上級の神様と並んでしまうくらいに、大袈裟に感謝の意を表すかの如く、誇大表現をされた上で、何度も何度も頭を下げて、お礼を伝えられたことで、その言葉に恐縮しながらも、口元を緩ませて……。
「そんなふうに言って頂き、ありがとうございます。
一生懸命に頑張って、必ず、ソフィアさんのことを救いますね……っ!」
と、私は、張り切って声をかける。
ともすれば……。
先代の頃から、長年、エヴァンズ家に仕えてきたであろう、この人にとっても、生まれた時から傍で見守っているルーカスさんや、ソフィアさんのことは、最早、『主人と従者の絆』を超えて、本当に血のつながりがあるくらいに、可愛い孫のように思っているのだろうな、と……。
こうして会話をしているだけでも、私にもしっかりと伝わってくるものがあって、改めて、私自身も『ソフィアさんのことを、絶対に助けたい』という気持ちを強くしていく。
一応、この日がくるまでに、私の能力に関しては、事前に、アルと、相談済みであり……。
あの日の食事会の時に起きた、アルヴィンさん関連の事件において……。
アルヴィンさんの口から……。
【アリス……っ!
……アルフレッドと、セオドアと共に、僕のもとへ来い。
この日を、どれだけ、僕が、待ち望んでいたことか……っ!
多分、他の奴らは気付いていないだろう……っ!?
だけど、君だけが、自分の能力の有用性に気付いてる……っ!
能力を使用して、寿命が削られた魔女の時間を巻き戻して、ほんの少しでも、症状を遅らせることが出来るかもしれないって……っ!】
と、言われたことや……。
【……君も気付いていないだろうけど、君が、思っている以上に、君の能力は可能性の塊だ。
もっと、ちゃんと、その能力を、正しく扱える者の側でこそ、輝けるものだ……っ!
君によって、多くの能力者が、救われる未来が、必ず訪れるっ!
だからこそ、僕と一緒に、来てほしい……っ!
君を、蔑ろにして、差別するような人間なんて、別に、どうだっていいだろう……っ?
アリス、お前だけが、革命の旗印なんだ……っ!
赤を持つ者達と、僕達精霊にとって、過ごしやすい未来を作るために、僕と一緒に、使命を持って、この世界に、革命を起こしてほしい……っ!】
などと……。
アルヴィンさんが、私の能力について色々な可能性があると言っていたことからも、私自身が、能力によって寿命が削られていってしまっている魔女のことを助けることが出来るのだということは明らかで……。
今、この瞬間にも、苦しんでいる魔女達を救うため、お父様や、アルともここに来るまで、本当に、様々なことを検討して、話し合った結果……。
私だけが唯一、寿命の削られてしまった能力者を救うことが出来るのだと、一体、アルヴィンさん自身が、私の能力について、どんな可能性を見ていたのか……。
私自身も気付いていない能力の使い道に関して……、『もっとちゃんと、その能力を、正しく扱える者の側でこそ、輝ける』のだと言っていたことの意味については、未だに、よく分からない部分も沢山あることから……。
『今の段階で、時を司る能力について、僕自身、不明瞭なことが多すぎて、考える時間が必要になってくることを思えば、どうしても、アルヴィンが辿り着いていたであろう答えには、直ぐに辿り着けそうもない』
と、アルにも言われてしまったものの。
それでも、私自身が、ベラさんのことを救いたいと思っているうちに、辿り着いた仮説に関して、人の年齢を、1年だとか2年、巻き戻す訳ではなく……。
魔女自身が使った能力を、復活させるように働きかけることで、年齢を操作して、その人の人生を巻き戻すことはせずに、今の状態のまま、寿命だけを延ばすことが出来るだろうと、アル本人からもお墨付きをもらうことが出来た。
ちょっと複雑で、凄くややこしい話になってしまうんだけど、実質的に、魔女は、能力を使用したら、それに対して、連動するように、寿命を削っていってしまうという性質があることを逆手に取って……。
寿命と能力の使用においては、切っても切れないほどに、深く結びついて関係がある以上、魔女本人が、元々、使用できる能力の回数には制限があるという、アルの考えのもと……。
使った能力分を元に戻すという感覚で、その人の能力の使用回数を増やすことが出来るように、私自身が、彼女達の持っている能力だけに働きかけて、時間を巻き戻せば……。
――それに応じて、削られていってしまっていた寿命もまた復活するはずだ、というのが、アルの立ててくれた仮説だった。
『アリス……。
アルヴィンは、もっと、時を司る能力を深く理解して、あのような言葉を、お前に投げかけた可能性の方が高いが……。
現状……、僕が、思いつける範囲で、術者にも、対象者にも殆ど負担がかからないような、魔女を救うことの出来る遣り方は、その方法だけだ。
あまりにも時間が足りなくて、能力を使った魔女に関して、完全に救える方法とは、どうしても言い切れず、急場しのぎのような形になってしまい、本当に申し訳なく思っているのだが……』
……そうして。
今回の手段について、少ない時間の中で、自分が思いつく限り……、術者である私のことも、対象者であるソフィアさん達のことも、しっかりと考えてくれたアルから、本当に申し訳なさそうに謝られてしまったんだけど。
私自身、時を戻す能力については、段々と、その性質も分かるようになってきているものの、時を司る能力全体に関しては、時間を止めるものと、未来へと時を進めるものなども含めて、まだまだ、自分が使い慣れていない能力も沢山あって……。
私自身も未だに自分の能力の全容をしっかりと理解出来ていないことを思えば、アルが、そこまで、考えてくれただけでも、本当に有り難いことだし、充分すぎるほどだと思う。
勿論、それには、あまりにも繊細なコントロールが、必要になってくるだろうけど……。
もしも、仮に、失敗したとしても、直接、対象者本人の身体に働きかける訳ではなく……。
私自身が、魔女が持っている能力に干渉して、能力の部分のみにだけ、自分の力を使うことから、もう既に、寿命が削られていってしまって、大きな負荷がかかってしまっているソフィアさんや、ベラさんの身体にも、そこまで大きな負担がかからない方法だろうということで、『まずは、一番最初に、その方法から試してみるのが良いはずだ』と、アルから、事前に伝えられていた。
これが、完璧に成功すれば、術者である私自身には、多少の負荷がかかってしまうものの、対象であるソフィアさんの身体にも、余計な負担をかけなくて済むことは、絶対に間違いないだろう。
精霊であるアル自身は、膨大な時を過ごしていたからこそ何もならなかったけど、人の身体を一歳も二歳も若返らせることについては、多少なりとも負荷がかかってしまうだろうし、未成年であるソフィアさんの身体を必要以上には、傷つけたくないと思ってしまうから……。
今回の一件でも、何かがあってからでは遅いということで、アル自身が……。
『あくまでも仮説でしかないが、アルヴィンが、あれだけ、アリスの能力について、自信を持っていた様子だったからな……。
恐らく、年齢を操作せずとも、その方法で成功するはずだ』
と、お父様に、私と一緒に進言してくれて……、更に言うなら、私も今日この日を迎えるまでに、アルと、まるで、針に糸を通すかのように、植物を練習台にして、精密に時間を巻き戻せるようにしてきたから、きっと大丈夫……!
私の性格上、こういう時、『本当に、大丈夫なのかな?』と、どうしても、心配と不安に駆られてしまいがちになってしまうんだけど、今回ばかりは、そんなふうに、不安を感じる訳にはいかず、何としてでも、成功をさせなければいけないと、自分のことを、一生懸命に奮い立たせていく。
先ほど、皇宮において、侯爵や、夫人には、私の時を司る能力については、お父様の口から伝えてもらっていて、ひとまず、年齢を操作せずに、ソフィアさんの能力のみに働きかけて、時間を巻き戻すということをしようと思っているのだと事情を話した上で……。
もしも、それが上手くいかずに、私の能力が、ソフィアさんが使用した分の能力の分だけ、時間を巻き戻すことが出来なかった場合、ソフィアさんの身体には、少し負担をかけてしまうけれど、年齢を若返らせることも視野に入れているというのは、きちんと説明済みだ。
それについては、前に練習をさせてもらったことがあって、アルの身体で実証済みなので、成功は約束されているんだけど。
――出来ることなら、年齢を巻き戻すようなことにはならないようにしたいな……。
私が頭の中で、そんなことを考えているうちにも、エヴァンズ家の家令が、ソフィアさんがいるところまで案内するために進んで行っている場所は、どんどん人気のない、離れのような感じになっていき……。
それだけでも、エヴァンズ家の人達が、どれだけ神経質になって、極秘裏に、ソフィアさんのことを守っていたのかがよく分かってしまった。
そうして……。
「お嬢様は、此方で、眠っております……っ」
と、部屋の扉の前まで、案内されたタイミングで、後ろから、タオルを数枚と、洗面器にお湯を汲んで持っているメイドを一人伴って、夫人が、駆け足気味に、私達に追いついてくれたあと……。
「皇女様、大変お待たせしました……っ!
ソフィアは、この中にいるのですが、私達は、傍で見ていない方が良いのでしょうか……っ?」
と、私が魔女であるということに配慮する形で、あまり誰にも見られない方が良いのかと、さりげなく、声をかけてくれた夫人に向かって、私は、直ぐに、ぶんぶんと、首を横に振ったあと……。
「いいえ……っ!
ソフィアさんのことが、何よりも心配でしょうし、夫人や、他の方達にも、傍で見て貰っていて、全く構いません……っ!
夫人や、皆さんがいらっしゃるだけで、きっと、ソフィアさんも安心だと思いますので……っ!」
と、どこまでも遠慮するような、夫人に向かって……。
『そんなことは何も気にしなくて良い』と、ふわりと微笑みながら、声をかけた。