400 嫌な予感への心配と、セオドアの本音
それから……。
「何事もなく、アリス様の経歴に一切の傷も付かず、無事に婚約破棄出来るケースを考えれば……。
かなり、状況については限定されてくると思います。
代表的な例で言えば、皇室とエヴァンズの同意の下で、アリス様が成人するまで仮の婚約者になっておき。
皇女であるアリス様のお立場を考えて、国のための嫁ぎ先が別に見つかれば。
その際に、改めて皇室側が婚約を破棄する申し出をエヴァンズにする場合などでしたら、エヴァンズの家柄としての役割を思えば、特に問題はないと感じますし。
もしかして、ルーカス様は、アリス様にいずれ“別の婚約者”が出来るというケースを考えているのでは無いでしょうか?」
と、みんなが黙ってしまってから、恐らく色々な状況を想定してくれた上で『一番ありそうなことを』と、顔を上げたローラにそう言って貰えたんだけど。
私自身も、最初はそうだと思っていたものの。
それについては、もう既にルーカスさんとの話し合いで、お互いに皇室側から解除されることはないだろうという結論に至ってしまっているため……。
私は、折角考えてくれたのに『申し訳ないなぁ……』と思いながら、ローラのその言葉を否定するように、ふるふると首を横に振った。
「それが、……ルーカスさんには、そこまで詳しい状況を“説明”していないものの。
私以上に、精霊のアルが国外に出してしまうことを損失だと思っているお父様が……。
私の相手として、エヴァンズほど婚約者候補として、相応しい家柄はないと思っている節があるから……。
一度、私と婚約してしまうと、恐らくルーカスさんとの婚約は“皇室側からは、絶対に解除されないと思う”ということは、伝えてるんだけど。
その上で、ルーカスさんはあの日、私との婚約をいずれ破棄することが出来るから、特に問題ないと思ってるような雰囲気だったの……っ」
そして改めて、ローラの言うように、元々ルーカスさん自身も、友好などを保つため『政治的』にも、私が他国に嫁いだ方が利があると思っていて、いずれ婚約自体が破棄されるだろうと予測していたものの。
魔女関連のことや、アルのことについては詳しく話す訳にもいかないから……。
(といっても、私が魔女であり能力を持っているということに関しては、ルーカスさんも既に知ってるんだけど)
精霊としてアルが持っている『魔女関連の知識』だけでも、国にとっては莫大な恩恵があるからこそ。
その流失を防ぐために、私の嫁ぎ先に関しては、国内の人間の方が良いと思っているであろう“お父様の考え”については伏せた上で。
ルーカスさんも、今回の婚約については『皇室側から解除されることはない』と知ってくれているのだと、みんなにも分かって貰うために、はっきりと今ここで説明すれば……。
アルもローラもエリスも私の言葉を聞いて、再び考え込むような素振りで黙ってしまった。
……ローラの言う通り、私に別の婚約者が出来て『婚約関係が解除される』ということは、状況が状況じゃなかったら、一番説得力のある答えだったし。
やっぱり、それ以外のものをと考えた時には、私も全然思いつかなかったくらいだから、どうやっても直ぐに正解の答えなんて出てこないよね……?
『そんな、魔法のような方法があるのか』と、私自身も、未だに半信半疑に思っているところはあるし。
それでも……、今、この場で、みんなにだけ考えて貰う訳にはいかないと、出来る限り、必死で頭の中を悩ませていると。
それまで黙ったまま、アルやローラと同じように思考を巡らせて考え込んでくれていた様子のセオドアが、どこまでも真剣な表情を浮かべてから……。
「……だとしたら、尚更、姫さんとの婚約を破棄することについては難しいと、あの男も分かっているはずだよな?
それこそ、何かがあって本人が死亡してしまったり、貴族籍じゃなくなってしまったりだとか、そういう事でも起きない限りは、厳しいと思うぞ。
あとは、重大な過失による婚約破棄などがあれば、それも一応、条件には合致するかもしれないが……」
と、もの凄く言いにくそうな雰囲気で、あまりにも衝撃的な言葉を私たちに向かって教えてくれるように出してきて、私は思わずその言葉に固まって、自分の瞳を大きく見開いてしまった。
……最初からあり得ないことだと思って、そっち方面の内容については思いつきもせずに、頭の中から自然に除外してしまっていたけれど、確かにその可能性についてはゼロだと言い切れないだろう。
もしも、これから先の未来で、ルーカスさん自身に『何か重大な過失』などがあった場合には、私自身は無傷で婚約破棄をすることが出来るのだから……。
そう考えると、あの日、ルーカスさんが私に対して伝えてきたことの『条件』は、全てクリアしてしまっている。
……だけど、エヴァンズ家は、ルーカスさんしか跡取りになるような人がいない筈だし。
幾ら、この婚約が『私やお兄さまのために利がある』と提案してくれているものだとはいえ。
ルーカスさんが私との婚約破棄のために、今後、何か危険なことをしようとしているというのは、かなり、突拍子もない理論ではあると思う。
第一……、仮に、ルーカスさんが何をしようと思っているのかまでは読めないものの……。
もしもセオドアの言う通り、そうだったとしたら、私やお兄さまのためにはなるかもしれないけれど。
どう転んだって、絶対に、決して……、ルーカスさんのためにはならないよね……?
あの日のルーカスさんは、私と婚約を結ぶことが『自分の為にもなる』と思っているような口ぶりだったし。
もしも仮に、テレーゼ様に恩義があって、テレーゼ様のことについて『私たちに告発出来なかった』のだとしても……。
……どこまでも回りくどい遣り方で、私のことを守ろうとしてくれているんだとしても。
――それではあまりにも、ルーカスさんだけではなく、エヴァンズ家の損失についても大きすぎるように感じてしまう。
だから、セオドアが今思いついてくれたことに関しては『違うんじゃないかな……?』と、否定したかったんだけど……。
さっきから、心の奥底で感じていた『嫌な予感』が、まるで警報を鳴らすように頭の中を過り……。
どうしてか、そのことを否定しきれない自分がいることに気付いて、私はセオドアに何も言葉を返すことが出来ずに、一度、自分の口をきゅっと噤んでしまった。
そうして……。
ローラもアルもエリスも、セオドアの言葉に『まさか……っ』といった感じで凄く驚いたような表情をしていたけど、誰もそのことについて、否定出来る材料も持っていない様子で黙り込んでしまい。
さっきとは別の意味で、重たい空気がこの場を支配していくのを感じながら……。
セオドアの真剣な表情だけが『もしかしたら、ルーカスさんが居なくなってしまうかもしれない』という私の心配を、現実にさせるような気がして。
漠然とした不安感が、恐怖心に変わっていくのに時間はかからなかった。
それから、ややあって……。
「もしも、そうなのだとしたら……っ。
ルーカスさんが、何か危険なことをしてしまうかもしれない前に、出来れば止めたいな……。
私の力だけでは、本当に、微力すぎるかもしれないけど。
何か困っているようなことがあるのなら、少しでも役に立ちたいと思う」
と、ぽつりと出したはずの私の声は、この狭い馬車の中で、存外に大きく響いて落ちた。
多分、みんなの耳にも届いているだろうに、私の言葉に、シーンと一瞬だけ静まり返った馬車の中で。
「……あー、そうだな。
何て言うか皇后のこともそうだが、ここに来て、更に嫌な空気が充満してきちまったな。
まだ、本格的にそうだと決まった訳じゃねぇが……。
いつでも連携を取って動けるように、全員でそのことを共有して、最悪のケースは想像しておいて損はないと、俺も思う」
と、一番に口を開いてくれたセオドアが私に向かって、真剣な表情のまま、そう声をかけてくれたのが聞こえてきた。
瞬間……。
普段から、あまりルーカスさんのことを良く思っていなさそうだったセオドアにそう言って貰えて、弾けるように顔をパッと上げて、セオドアの顔を真っ直ぐに見つめると。
「……胡散臭いのと、やり口が強引で、身勝手に事を推し進めるあの男のことは好きにはなれねぇが。
アルフレッドの、本質的には悪い人間じゃねぇって意見には、俺自身も概ね同意出来る。
俺の経験上、本当の悪人は、それを一切合切、誰にも悟られねぇように完璧に隠し通すことが出来る人間か。
今日の伯爵令嬢のように、自分のやってることに関して何一つ悪いとさえも思ってなくて、堂々と人前で罪を重ねることが出来る幼稚でタチの悪い人間かのどっちかだ。
第一、どっちみち、俺がここで何もしなかったとしても、姫さんなら、きっと、そう言うだろうなって思ってたし。
もしも仮に、それで“あの男”を助けた結果、自分の婚約が破棄されなくなったとしても、姫さんはそんなの関係なく、何としてでも助けようと動くだろっ?
だったら、姫さんが単独行動をして一人であの男を守ろうとするよりも、俺たちもあの男の動向については常に気をつけておいて、何かあった時には直ぐに動けるようにしておいた方が良い」
と、セオドアが私に向かって、苦笑しながらどこまでも優しい声をかけてくれた。
……その言葉に、私は真っ直ぐにセオドアを見つめたまま、『……ありがとう、セオドア』と、心の籠もったお礼を伝えて、こくりと頷き返す。
私だけじゃなくて、セオドアがルーカスさんのことを守ろうと動いてくれるのなら、こんなにも心強いことはないし……。
私一人だけの力ではどうやったって限界があることだから『本当に有り難いな……』と、心の底からそう思う。
「……それに、従者って言う立場を笠に着て、幸せになれねぇから止めて欲しいって、主人を心配するフリをしながら。
本心から、ただそれだけが理由なんだと思い込もうとしていた俺にも、問題があるしな。
今の今まで、卑怯なことをやってた自覚はある」
その上で、ぽつりと、どこか後悔が混じったような声色でセオドアに何かを言われて、私はきょとんとしながら、首を傾げた。
――決して、声が小さかったりして、セオドアの台詞が聞き取れなかった訳じゃないんだけど、言われている言葉の意味が今ひとつよく分からなくて……。
『幸せになれないから止めて欲しい』というのは、多分、ルーカスさんと私の婚約についてのことだよね?
セオドアが私のことを従者として、ずっと、ルーカスさんとの『愛がない婚約』について、必死で引き留めようと……。
猛反対して心配してくれていたことに関しては、他の誰でも無い私自身が誰よりも一番、理解していると思うんだけど。
どうして急に、その言葉を根本から覆してしまうようなことを伝えてきたのかが分からなくて、頭の中を“はてな”でいっぱいにしてしまう。
困惑している私の姿に……、どこまでも真剣な表情を浮かべたまま。
「……そりゃぁ、そうだよな。誰と婚約しようが、許せねぇんだ。
だから従者として、姫さんのためにって心配する気持ちだけで反対すんのは、もう、止めることにする。
あの男が、何か危険なことをしようとしているのなら、それを止めるのは別に構わねぇけど。
俺自身も、ちゃんとこれから先のことについて、姫さんとあの男の婚約が破棄出来るように、その方法を一緒に考えるからっ。
……だから、頼む。今はまだ、誰とも婚約するだなんて、言わないでくれ。
姫さんと誰かが婚約するっていう話が出ただけで、正直に言って、心の底からムカムカしてくる気持ちが抑えられなかったんだ。
俺の我が儘で、卑怯な願いかもしれねぇが……、出来れば、聞き入れて欲しい」
と、普段、何かをお願いしてくることなんて滅多にないセオドアに、懇願するようにそう言われてしまい。
――私は思わず、この場で一人、時が止まってしまった。
……だって、まさか、私とルーカスさんの婚約が、セオドアにとっては『凄く、ムカムカしてしまう感じのもの』だったなんて、今の今まで知らなかったから……。
というか、ルーカスさんとの婚約だけではなく、誰と婚約しても許せない感じになってしまうだなんて思いもしていなかったから、言われた言葉にただひたすら動揺してしまった。
そうして、『もしかして、今まで、ずっと嫌な気持ちを抱えていたのかな?』と混乱しながら……。
私のことなのに“セオドアがそんな気持ちになってしまう”なんて、私の今までの行動とかで嫌な思いをさせてしまって、凄く無神経な感じだったりしたんだろうか、と心配になってきて……。
あわあわしながら、セオドアの方を見つめていると。
「むむっ、お前達っ……!
また、二人っきりで、そのような会話をしてっ……!
僕だって、アリスがルーカスと婚約してしまって。
やがてエヴァンズに嫁いで、“結婚”するような状況になってしまうというのを聞いて、アリスと離ればなれになってしまうかもしれないと不安に駆られて……っ。
気が気じゃなくて、もの凄く嫌だったんだからなっ! 僕たちは、いつだって三人で一つであろうっ……!?」
と、アルがぷんすかと頬をぷくっと膨らませて、私たちに向かって抗議するように声を出してきた。
その言葉に。
【……あぁっ、そっか。
確かに、そこまでの事には一切、気が回っていなかったけど……。
いずれ、セオドアともアルとも離ればなれに暮らすようなことになってしまうというのは、私も凄く嫌だし、堪えられないかもしれない】
と……。
アルのお陰で、私とルーカスさんの婚約が持ち上がったことで、どうしてセオドアが『ムカムカと、嫌な気持ちになってしまったのか』という理由について、何とか理解することが出来た私は……。
「……ずっと、そんな風に思ってくれていたんだね、? ありがとう、セオドア。
……確かに、もしも結婚したら、私の護衛騎士とはいえ、皇宮の騎士でもあるセオドアとは勿論のこと。
精霊のアルとも、エヴァンズの同じ敷地内には住ませて貰えるかもしれないけど……。
成人を迎えた男女が一緒に過ごしているというのは、結婚相手にも失礼になっちゃうかもしれないし、ちょっとだけ距離が出来てしまったかもしれないんだよね、……?
みんなと一緒に過ごせる幸せな毎日が当たり前すぎて、そこまで頭が回ってなくて本当にごめんね。
私も、みんなと離ればなれになってしまうのは、想像したら胸が張り裂けそうな気持ちになって、凄く嫌かもしれない。
だから、私のことを全然好きだとは思っていないルーカスさんにも、一切、落ち度などがないように。
これから先は問題が起きないように、スムーズに婚約破棄出来る方法を模索して、頑張るね……っ!」
と、セオドアが今、私に向かって、嘘偽りのない本心から話してくれたであろう内容について……。
『そんなにも、私のことを考えてくれて本当に嬉しいな』と心の底からじんわりと温かな気持ちを感じつつ。
私も同じ気持ちだよということを分かって欲しくて、一生懸命になりながら、はりきって声をかけると。
「……あー、うん、そうだな」
と、私の言葉については同調してくれながらも、なんだかもの凄く微妙な表情をしたセオドアが……。
「はぁ……。まぁ、別に、今は、それで全然良いんだけど、なっ?
この先も、姫さんに結婚して欲しくないって言ってる俺の言葉の、ちゃんとした意味に関しては、この感じだと、あまりよく分かってねぇよな、多分……っ。
つぅか、居心地の良い場所を与えてくれて、いつも自分のことは度外視した上に、心の底から心配してあれこれと気遣って考えてくれて。
それで、特別を通り越して、こうならないって方が、難しいだろう……?
どっちみち、年齢なんか関係なく、いつだって俺にとっては姫さんだけが唯一無二なんだ。
皇室に対しても、国に対しても忠誠を誓ってる訳でもねぇし、例え、姫さんが皇宮を離れることになっても生涯の主でもある姫さんの側を、俺が離れる時なんて、絶対に来ねぇよ」
と、呆れ混じりのような雰囲気で、どこか自分で自分を嘲るような苦い笑みを溢したのが見えて。
私は『……??』と、今、セオドアに言われた言葉の意味が理解出来なくて、戸惑ってしまった。
セオドアに、私の側を離れる時なんて絶対に来ないと言って貰えるのは凄く嬉しいんだけど。
どうして、そんな風に困ったような感じなのかが分からなくて、まだ私が見落としているようなことがあるのかと。
『セオドア……?』と、その名前を呼んで、おずおずと問いかけると。
「……ちゃんと、従者としてはこれからも“十二分の働き”はするつもりだから、安心してくれていいし。
姫さんは何も変わらずに、そのままでいてくれれば、それだけでいい。
いつだって関係のないところで、あの女も、あの男も、外野から好き勝手言ってきやがるし。
……正直に言って、周りにいる全ての人間が敵でしかなくて。
誰に対しても、そんな感情を抱くことすらないと思って、荒んでいたガキの頃のことを思えば、まだ、この感情を俺自身も最近自覚したばかりで戸惑う気持ちの方が大きいんだ」
と言いながら、誤魔化すように、くしゃりとその大きな手のひらで頭を撫でられてしまった。
その姿に、アルが『セオドア、一体、何を言っているのだ?』という雰囲気で……。
エリスも私と同様にポカンとしていた様子だったけど。
私たちの中で唯一、ローラだけは、セオドアが言っている言葉の内容を正しく認識することが出来たのか。
『セオドアさん……!』と、凄く驚いたような表情を見せながらも。
直ぐに、パァァッと、どこまでも明るい表情になって。
「アリス様の幸せを願っているのは、私も同じ気持ちです……っ!
将来、アリス様に心の底から幸せな気持ちで、何不自由なく毎日を過ごして貰うためにもっ。
アリス様の気持ちが一番大事なことだとは思いますが……。
私は、常日頃からアリス様のためを思って、アリス様のことを優先して行動してくれているセオドアさんでしたら、何の異論もありませんし、本当にどれほど良いかという気持ちでいっぱいです。
私ではあまりお役に立てないかもしれませんが、微力ながら、いつだって応援してますからねっ……!」
と、何故か、セオドアに向かってグッと握り拳を作り。
『ファイトです……!』と言わんばかりに、セオドアのことを応援し始めたローラに、更に意味が分からなくて、私は二人の遣り取りに全く付いていくことが出来ずにオロオロしてしまう。
それよりも……、ローラの言葉を聞く限り、私の幸せのために、セオドアが何かを頑張らなくちゃいけないような状況が訪れることがあるんだろうか?
出来ることなら『私のために、セオドアが何かを頑張る必要なんてどこにもないよ』と伝えたかったんだけど。
二人の会話の内容が分かっていない私が、状況を把握していないのにも関わらず、この言葉を言ったとしても、あまりにも説得力に欠けてしまうような気がして、何も言えないでいたら。
「あー、別に、困らせるつもりは全くなかったんだが……。
とりあえず、これからは例え誰であろうと遠慮もしないし、自分の気持ちも隠すつもりもなくて。
従者ってのを隠れ蓑にするのは止めるってだけの話だから、姫さんが気にすることじゃない。
……それより、姫さん、もうすぐジェルメールに着くぞ?」
と、いつものように、むにっと頬っぺたを摘ままれたあとで、苦笑しながらそう言われてしまった上に。
『もうすぐジェルメールに着く』と……。
話の内容をさらっと変えられてしまって、私はそれ以上、セオドアにもローラにもどういう意味だったのか。
……深いところまでは、結局、聞けず仕舞いになってしまった。