379【皇帝Side】
恐らく、色々と嫌な記憶がぶわりと蘇ってきたのだろう。
あの事件の話になった途端、目の前で見る見るうちに顔面蒼白になり、ぶるぶると震え出したアリスに、尋常ではないものを感じ取った私は……。
アリスの騎士であるセオドアの制止に、内心でホッと胸を撫で下ろしていた。
……そうでなくとも、あの事件で、母親が殺されてしまったのは事実なのだから。
この件に関して、どこまでも慎重にしなければいけなかったというのは、私自身が理解していたつもりだったのだが。
普段から大人びていることもあって、度々、アリスがまだ10歳の子供なのだと忘れてしまいそうになる時がある。
だが、元々、あの事件が起きた際に、アリスに事件の事実確認をしなかったのは、主治医がアリスのことを『まだ体調が優れない』と、診断し続けていたからというのもあるが。
その年齢を考慮して、事件のことを思い出させるようなことは無理にしなくても良いと判断したからでもあった。
アリスにとってはまだ、1年も経っていない間に起きた事件であることは間違いない上に……。
ショッキングなことを目の当たりにしていることで、当然、あの日の傷が癒えていないものだと理解して、この話をアリスの前でするべきではなかったのだろう。
ぎりっと僅かに唇を噛みしめながら、後悔したあとで……。
セオドアがアリスに対して『辛いようなら、自分に寄りかかってもいい』と言っているのを聞いて、居ても経っても居られなくなった私は、アリスに自分の元へと来るように促した。
ほんの少しでも『アリスが楽になれれば……』と思い、声をかけたのだが……。
思えばアリスとは、仕事を理由に今まで殆ど関わらなかったこともあって、マトモにそういう事をしてやった記憶すら一切ないと、内心で反省する。
親子として血が繋がっているのに、どこまでも遠慮がちにしているアリスを見れば、アリスが生まれた際に抱き上げた以来のことなのだから、それも当然だと苦い笑みがこぼれ落ちた。
まだ幼いアリスと関わるには、皇后宮に行き、アリスの母であった前皇后とも関わらなければいけなくなる。
彼女には嫌われているのだから、必要以上には話しかけない方が良いだろう、と思いながら……。
そうやって、今まで私が仕事を言い訳にして、アリスに対しても、彼女に対しても向き合うこともせずに『ただ逃げていただけ』なのだと、こういう時、つくづく思い知らされる。
――父親としても、夫としても、本当に失格だった、と……。
それから……。
本人は気付いていない様子だったが、ずっと顔面蒼白だったアリスの顔色がほんの少し落ち着いたのは、私の腕の中で、眠りについた後だった。
暫くは、この腕の中でカチコチと緊張していた様子だったが、それでも疲れには抗えなかったのだろう……。
そもそもが、昼に茶会で夜に夜会という、タイトなスケジュールをこなしていただけではなく。
宮廷伯という、一癖も二癖もある連中と会話の遣り取りをしなければならず……。
私自身が、アリスに子供っぽさを強要して『アーサーのことを聞いて欲しい』と無理強いをしたことで、普段以上に気を遣っていただろうし。
実際、今日のアリスの立ち振る舞いを考えれば、殆ど満点に近いと言ってもいいくらいだった。
私の中では基本的に、ウィリアムが基準になっているから、どうしても子供達に対しては厳しい目で見てしまいがちだが……。
最近になって、私の一番の忠臣である執事のハーロックが。
【陛下、正直に申しますと、ウィリアム様もギゼル様もアリス様もあまりにも早熟すぎます】
と、進言してきて、頭を抱えてしまったことを思い出す。
ハーロックが言うには、ウィリアムが『神童』という前例を作ってしまったばっかりに……。
ギゼルやアリスまで、その振る舞いをしなければいけないと、頑張って努力しているのではないか、ということだった。
実際、ギゼルがウィリアムに対し『強い憧れ』を持っているのは、私自身も幾度となく目にしてきて感じているし、その考えは間違っていないように思う。
アリスが急激に大人っぽくなってしまったことに関しては、あの事件以降、アリスの医者が書いた診断書にもあったように『……心が壊れている』とのことで。
やっぱり、あの時の誘拐事件が関係しているのだと思うが……。
“死”という恐怖に触れてしまったことで、物事を達観するようになってしまったのか、そこまでのことは私には分からない。
……だが、私にも重大な責任があるということだけは確かだった。
アリスの母親が死んでしまった事件以降、初めてアリスと面会した時の、無機質な……、何の色も乗っていない表情を思い出す。
そう考えれば、今は少しだけでもその様子に変化が見られて、良い方向に改善されたと言ってもいい。
まだまだ、私と接する時は戸惑いや遠慮が見られることが多いが、それでも、一緒に食事を取るようになってから、私を見て、アリスが明るく笑ってくれる時間も増えてきた。
【やはり、未だに、無理はしているのだろうな……】
と、思うことは多々あるものの。
それだけでも、かなり、大きな進歩だと言ってもいいだろう。
……ウトウトとしながらも。
やがて、ゆっくりと閉じていったその瞳と、規則正しく聞こえてくる寝息に、心底安堵する。
――せめて、眠っている時くらいは幸せな夢を見ていて欲しい。
再び、静寂が訪れた車内で、アリスの騎士であるセオドアが心配そうな表情のまま険しい顔つきになりながら、アリスにだけ視線を向けているのが見えた。
騎士団長から、アリスが我が儘を言って『ノクスの民』であるセオドアを騎士にしたと聞いた際には驚いたが……。
アリスが、能力の練習をすると言って古の森へ行ったあと、精霊王様を連れて戻ってきた際に、私には決して見せない安心しきったような微笑みをこの騎士に見せ……。
この騎士が、アリスの……『能力が使えるようになった褒美に私の騎士に馬を与えて欲しい』という私へのお願いに対し、慌てて辞退しようとしたのを見た時から、アリスにとっては、良い主従関係を築ける存在だと強く認識していた。
勿論、その出自に関しては調べさせて貰ったが、碌な情報が出てこなくて少しだけ不審に思っていたのが、いっそ恥ずかしいと思えるほどだった。
あの事件以降、私の前では一切、その表情が変わることの無かったアリスが……。
それまで傍にいた侍女と医者を除いて、初めて心を開くことの出来た人間であるということは、間違いなかっただろう。
こうも、主人のことだけを一心に思ってくれる従者を得ることが出来るのは本当に貴重なことだし……。
セオドアが今まで『ノクスの民』であることで……。
実力だけではなく、家柄を殊更重視する貴族出身の騎士団長から不当に扱われていたことは、アリスの騎士になった“この男”のことを調べる過程で私も知ることになってはいたが……。
それでも、長年、騎士団に未だ強く根深く存在する問題に関して。
禍根を除く為の手段には、中々出ることが出来なかった関係から……。
この騎士のことも思えば、アリスが選んだことで、護衛騎士になったというのは、お互いにとっても良かったと言えるだろう。
アリスの眼は、良き臣下を見極めるのに長けていると私は思う。
いや、それとも、アリスに仕えることで皆、心の底からアリスの傍にいたいと思うようになるのか……。
――もしかしたら、後者かもしれない。
セオドアもそうだが、アリスの傍に仕えているローラというあの侍女もそうだ。
それから、イレギュラーだと言っていいが、精霊王様も……。
あの方の場合は、常に自由な選択を取れる訳だし。
そのお立場から誰にも縛られることはなく、厳密に言うとアリスの臣下とは決して呼べないが……。
それでも、自分の存在が公にならないようにと、なるべく『人間の作ったルールを遵守しながら、アリスの傍にいる』というだけで、どれほど凄いことなのかは火を見るよりも明らかだろう。
その上で、少数精鋭ではあるもののアリスの近くにいる人間が今、アリスの事を真に思って傍にいたり、仕えていることは私も把握している。
人心を掌握するというのは、帝王学の基本中の基本だが……。
自分の傍に居る存在を、何があっても裏切ることがないばかりか、窮地に陥った際に助けてくれるような『絶対的な味方』に出来る人間は、そう多くはない。
ウィリアムのように、きちんと帝王学を勉強している訳でもないし。
恐らくアリスに関しては殆ど無意識にしていることで、意図など何もしていないだろう。
――今まで、アリスの事で裏で関わった人間は、漏れなく全員、適切な処分を下してきた。
アリスに対しては、毒の入ったクッキーについてきちんとした話を聞こうとした際、エリスという侍女を付けたことを問いかけられたことで……。
あの誘拐事件が起きてから、その当時アリスに仕えていた人間の処遇に関してのみ、碌に働いてもいなかったことから簡潔に『解雇した』と伝えていたが。
実際は、アリスの傍で働いていた侍女達も、騎士達も、それからマナー講師に至るまで、皇宮を辞めた人間も含めて、全てが調べる対象だったし……。
マナー講師によるアリスへの体罰が発覚してからは、遡って『全員が、アリスに対して今まで何をしてきたのか』という所まできっちりと調べて、その罪も全て暴いてきた。
結果的に、ローラというあの侍女だけが、完全な白であり……。
侍女に関しては、碌に仕事もせずにサボるのが当たり前で、アリスに対しては殆ど、育児放棄に近いようなことが横行していたという証拠が、ザクザクと出てきた。
唯一、アリスの世話をしていたローラが見ている際は……。
ローラが何度か、この現状を訴えようとしていた事実から『上に色々と進言されては自分達が困る』と、なるべく控えていたようだったが。
暴言だけではなく、マナー講師と同様に、度々、見えない所を狙って『躾』と称してアリスのことを暴行していた侍女達も、数多くいたという。
それでも、ローラが上へと進言した際には、アリスの傍にいた全員がグルになって、そのような事実はないと否定したことで……。
侍女長もまた、ハーロックと同様に、アリスの癇癪が酷くて、それを抑えるために。
『侍女達が、手を焼いている』と思って、そこまでのことが行われていたとは知らなかったと証言しており……。
【お恥ずかしながら、私自身も、皇宮内でのアリス様の良くない噂を信じ切ってしまっており……。
侍女達から、少し手荒に見える事もあるかもしれないが。
それは、泣きわめいて、手当たり次第に物にあたり、凶暴になってしまうアリス様の癇癪を抑えるための配慮だと言われて……。
その言葉を鵜呑みにしてしまい、彼女たちのことを信じて疑っておりませんでした】
のだと……。
発覚と同時に、私自身、今までアリスのことをしっかりと見ることが出来ておらず、気付くのが遅れてしまったことを、本気で悔やんだ。
私自身にも勿論、責はあるが『本来なら、しっかりと皇宮のことを把握しておかなければいけない人間が、揃いも揃って何をやっているのだ』と……。
その後は、皇宮で働く侍女達の監督不行き届きだったとして、侍女長の減俸処分と共に、キツく言い含めておいたが……。
アリスの傍に置く人間について、未だに私が人を厳選しているのは、セオドアやローラのように本当にアリスに仕えたいと思っている人間が、その傍に付いてくれることを望んでいるからでもある。
【だが、どうしても、ローラ一人で全ての仕事を賄うのは不可能で……。
アリスの身の回りのことに関しては、行き届かないこともあるからな……】
私が、アリスの元に、テレーゼの推薦でエリスという侍女を送ったのは、明らかに侍女が一人しか付いていないことで、アリスの身の回りの世話が疎かになってしまわないように、ということと……。
新米の侍女ならば、皇宮で働く者達の噂や偏見などに『そこまで染まりきっていないのではないか』と期待したからだったのだが。
――もしも、一連の事件の黒幕がテレーゼなのだとしたら、また話は変わってくる。
幸い、エリスという侍女に関しては、度々、その姿を見る限り、アリスのことを本当に慕って仕えているように見えるし。
……テレーゼに言われて、アリスに対して何かをしようとしている雰囲気は見えないが。
一応、その素性に関しては、男爵家の平凡な生まれで、皇宮で働くようになったことについて、家の借金を返すためだという所まで調べは付いているものの。
今まで、テレーゼを信じ切っていたために、あの侍女に関しては、そこまで注視して影などをつけて『調べるように……』と、命じたりはしていなかったことが悔やまれる。
少しでも、アリスの生活面を良くしようと思ってのことだったが、全てが後手に回ってしまったかもしれない。
はっきり言って、今日の夜会で宮廷伯達と話をするまでは、その可能性を見てなかった訳じゃないが……。
一連の黒幕に関して、宮廷伯か、テレーゼかという二択ならば、宮廷伯の方をまず真っ先に疑っていたと言ってもいい。
……そもそも、今まで何を調べてもテレーゼの周りは常に清廉潔白であり、何の痕跡もなく『不審』とも呼べるような物すら出てきてないのだから、それもそのはずで。
常に完璧な仕事をすると思っていたし。
実際、定期的に私が確認していたテレーゼの仕事ぶりは宮廷伯や他の人間達にも絶賛されるほどだ、と言っても差し支えない。
だが、テレーゼが裏で関わっているのなら、侍女長についても俄然、怪しくなってくる。
皇宮内で働く侍女達のことを管理するのは、本来なら皇后の仕事の内に入るのだが……。
アリスの母親は身体が弱くて、とてもじゃないが、皇宮内を見渡して数多く働いている侍女達の全を管理することは出来ずにいたし。
テレーゼも今までは第二妃という立場で『そういう事に関しては、私が関与すべきではないし、適任者にお任せします』と言っていたほどだ。
だからこそ、長年、皇宮内では侍女長が、皇宮の侍女達に関する一切を取り仕切っており……。
勿論、皇后としての仕事で、テレーゼも侍女長と完全に関わらない訳ではなく。
皇宮内の予算などを確認する関係上、洗濯なども含めた皇宮で使われている金銭について、どれくらいの支出が出ているのか等、必要な書類を見せて貰ったりなど……。
そういうことで、遣り取りをしなければいけない場面は幾度もあった為。
それで『侍女長とも仲を深めたのだろう』と、少なくとも私は、今までそう信じ切っていた。
私がアリスの傍に付いていた侍女や騎士達を念入りに調べた時も、テレーゼがこの件に関わっていたという証拠はどこにも出てきていない。
実際、アリスに今まで関わっていた侍女達のことを尋問した時には、マナー講師のように『皇族は、その証でもある金を持つべきだ』という凝り固まった思想を持っている人間が殆どであり……。
赤を持っている人間が気に入らなくて、自分達の意思でアリスを手ひどく扱っていたと自白したし、それに対して『お許し下さい』と土下座し、泣きながら乞われはしたが。
……他に、関わった人間を聞いた際には、当時、アリスの傍に付いていた人間以外の名前は一切、出てこなかった。
つまり、侍女長の証言通り……。
ハーロックや私と同じく『癇癪で騒いでいたように見えていたアリス』に対して、表面だけで見て判断していたと言われてしまえば、その可能性の方が高いと、現状では言わざるを得ないし。
アリスの侍女であるローラが上へと訴えかけた際に、きちんと状況に目を配り『対処』をしていなかったことから。
この件では、侍女長を監督不行き届きとしてでしか、罰することは出来ない。
それでも、今、侍女長がテレーゼに付き従っている様子を見れば『そこから、疑わなければいけないのではないか?』とさえ思ってしまう。
もしも、侍女長が状況を分かった上で、敢えて見て見ぬふりをしてアリスのことを放置していたのだとしたら、許されざる重罪だ。
……当然、罪の重さも変わってくる訳だが。
どこまでも険しい表情を浮かべる私に、ジャンが横目でチラチラと、どこか気にするような視線を向けてくるのを感じながら……。
私は、今の今まで働かせていた思考全てを、一度脇に置いたあと、小さくため息を溢した。
「……そういえば、セオドア、お前はテレーゼのことを疑っている様子だったな?」
ゆっくりと走る馬車は、まだ、皇宮には着きそうもない。
アリスが私の腕の中で眠っていることで、少しでも寝付きが良くなってくれればと、そっと、その頭を撫でながらも……。
私だけではなく、この事件の一連の黒幕に関しては、中々、鋭い所を突いてくるものだと、単純にその推理について、私の目線では見えていないことが見えているかもしれないと……。
『どうしてそう思ったのか……』と……。
可能なら、意見を交わしたいと思って声をかけたのだが。
アリスから視線をずらして、私の方を向いたセオドアの瞳は真剣そのものだったが……。
私の隣に座っていたジャンが、目に見える形で、私の言葉にびくりとその肩を揺らしたのが見えて。
手に取るように、今、ジャンが私の隣で何を思ったのかということを理解した私は……。
『やれやれ……』と思いながらも、今この場で二人に対して明確に自分の意図が伝わるよう声を出す。
「……別に、不敬だと思って声をかけた訳ではない。
現に私自身が、その可能性については否定出来ないのだからな。
単純に、お前に見えていて、私に見えていないことがあるかもしれないとその意見を聞きたいと思っただけだ」
勘違いはしないように、と……。
はっきりと、言葉を出した私に対して、セオドアのその瞳の感情が揺れ動くことはない。
【なかなか、どうして……、骨のある若者だ。
この場で、私を相手にしても、一切動じることもなく、顔色一つ、変えないとはな……】
私に付き従っている騎士でも、長年、修羅場をくぐり抜けてきたような人間は、例え何が起きようとも殆ど動じることはないが……。
少なくとも『この年齢』ならば、ジャンのように素直に、何かしらの反応があっても可笑しくはない。
というか、寧ろ、そっちの方が普通だ。
――これで、まだ18歳だと言うのだから、末恐ろしいな。
一体、今までどれほどの修羅場をくぐり抜けてきたのか。
ノクスの民だということを考慮せずとも、その人となりを見れば見えてくるものがある。
ジャンにはまだ無い人としての深みが、セオドアにはある。
……背負ってきたものが違うのだろうし、その境遇は、決して簡単に人に教えられるような物ではないだろう。
何故、そのように生きてきた者がこの国の騎士になったのかと知りたい気持ちはあるが……。
今は、この存在がどこかの国の傭兵として雇われ、敵にならなかったことを素直に喜ぶべきなのだろうな……。
副団長であるレオンハルトが『目をかけるだけのことはある』と感じるし、あまりにも、貴重な人材だ。
囲えるのならば囲っておきたいと思うのは、一国を背負う者としては当然の判断だし……。
アリスがセオドアを見つけ、自分の騎士にしたことは、結果的に『この国の為』にもなることだっただろう。
例え、肝心のセオドアがこの国ではなく、アリスただ一人に、忠誠を誓っていると分かっていても……。
そういう意味で、自分の感情を隠しきれていない面はまだ、大人になりきれていないと言ってもいいだろうか。
【これから、社交界や上流階級の人間達と遣り取りする中で、そういった面も磨かれていったなら……。
それこそ、手がつけられない程に、十二分の活躍をしてくれる可能性は秘めている】
「例え、私であろうとも、遠慮はいらない。
何かの解決の糸口になるかもしれないし、お前の気になることを話してみてくれ」
今ですら、これなのだから……。
『久しぶりに、将来が楽しみな面白い人材に出会えたな』と。
僅かばかり、口元を緩めながら、セオドアに向かって声を出せば……。
私の方を真っ直ぐに見ながら、セオドアが口を開いたのが目に入ってきた。










