373 それぞれの関係性と、偶然出会った人物
段々と私にも五老星の人達、それぞれの個性のような物が分かってきたところで……。
環境問題のブライスさんと、総務部のヴィンセントさんは、騎士団長の遣り方にどちらかというのなら反対派。
法務部のベルナールさんと、財務部のノイマンさんは、騎士団長の遣り方に賛成派。
そして、外務部のスミスさんに関しては、曖昧すぎて、どちらか分からないという所から考えても。
そこに、お父様を入れたとして……。
一応、3対2対1で、騎士団長の遣り方をあまり良く思っていない人達の意見が優勢になるとはいえ。
騎士団長が半ば騎士団を私物化していることについて、法案を変えようと思ったら……。
どう考えても、今の段階でのらりくらりと、『どっちにもつかない雰囲気を醸し出している、外務部のスミスさんの意見が、かなり重要な鍵を握ることになるだろうな』と、考えた所で……。
確か法案を変えるのに、賛成派と反対派で同数の票になった場合、その法案は可決されることなく、一応、一回だけ多数決についてもう一度やり直しの機会が設けられたあとで。
【それでもやっぱり、票が動くことなく同数になってしまった場合は、否決として扱われるようになったはず……】
と……。
私は何とか、中央の行政についての、自分の浅い知識を引っ張り出してくる。
厄介なのはここで、議題として議会に持ち込まれたものは、一度否決されると、そこから数年は『同じ内容のもの』を、貴族会議に持ち込むことすら出来ないという決まりがあることで……。
つまり、自分がどうしても推し進めたい法案がある場合は、議会に持ち込む前に、ある程度周囲の人達にも根回しして、きちんと賛成票が集められると確信を持って挑まないと、返り討ちに遭ってしまうだけではなく。
そこから、数年単位という『貴重な時間を無駄に消費』しなければ、再度、議題をあげられることすら出来なくなってしまうから……。
国の政治の内容を変えるということについては、議題にあげるタイミングすら、どこまでも慎重にならなければいけない、というのは私にも理解出来る。
ひとまず、五老星の人達の誰と騎士団長が仲良くしているのか、ということについては、何となく読めてきた所で……。
「そうだったんですね。……皆さんのおかげで、凄く勉強になります……」
と、なるべく今、初めて知ったことかのように驚きつつ、にこやかに声を出してお礼を伝えたあと。
私は騎士団長の話から、さらりと、話の矛先を変えることにした。
「……あの、そういえば昨日、皇宮で勲章の授与式があったことで……。
私自身、以前、一度だけ目にしたことのある騎士が気になっていて、彼の姿を探してみたんですけど、どこにも見当たらなくて……。
確か、アーサーという名前だった筈なんですけど、皆さんはご存じではないでしょうか?」
そうして、ちょっとだけ、強引にも思えるような内容に、内心でドキドキしながら……。
お父様に聞いて欲しいと言われていた、アーサーのことを問いかけてみると。
「ふむ、皇女殿下がお探しになっている、騎士団に所属する騎士ですか……?
流石に、騎士団でも大いに活躍している、……例えば今も、陛下の後ろに控えている近衛騎士のジャン・クロードや、有名な花形の騎士以外は、私は存じ上げませんね」
という言葉が真っ先に、ブライスさんの口から返ってきた。
その言葉に、お父様の後ろでピシッと背筋を正して控えていたジャンが、敬礼するように手を挙げたあと。
『はっ……! ブライス卿に覚えて頂けているだけで、大変光栄に思います』と、真面目な声を上げるのが見えた。
「あぁ、まぁ、そうでしょうなっ……。
ここで、ブライス殿の意見に、大手を振って賛成をするのは癪だが……。
勿論、有事の際に、陛下に変わって、騎士団を動かすということはあれど……。
そういう場合、総務部であるヴィンセント殿が現場に命令を出すことが多いと言っても過言ではないし。
基本的に、普段は、騎士団自体に、私たち五老星の人間は殆どノータッチなのでねぇ。
それに、アーサーという名前だけでは、国内でもよくある名前なので、その騎士がどういう雰囲気をしているのかさえも私には分かりかねますが……」
それから、次いで、ベルナールさんに、至極真っ当なことを言われた私は……。
「えっと……、私自身も一度、騎士団において、お見かけした程度なのですが。
髪の毛と瞳の色はこの国でもよくある茶色で。
短髪の……、なんて言うか凄く優しくて真面目そうな騎士のイメージがあるんですけど。
でも、確かに、これだけだとあまりにも手がかりが少なすぎますよね……、?」
と、あくまでも『申し訳ないなぁ……』という表情を前面に押し出しながら……。
少しうつむき加減になりつつ、五老星の人達全員に聞こえるように、更にアーサーの情報について、追加してみる。
先ほど、ベルナールさんに『ヴィンセントさんが有事の際には騎士団に命令を出して動かすこともある』という貴重な情報を貰ったことで……。
もしかして、ヴィンセントさんは、アーサーについて知っているかもしれないと、ダメ元ながら期待を込めて、そっと窺うようにヴィンセントさんの方を見てみると。
「……申し訳ありません、皇女殿下。
あくまで私の仕事は、陛下が動けない際に、その代わりに陣頭指揮を執ることで、騎士団長や副団長などの騎士団を纏め上げる人間と遣り取りしたり、命令を出すのみであり。
あまりにも数が多すぎるため、騎士団にいる騎士それぞれ、一人一人の名前をきちんと覚えられている訳ではありませんから。
アーサーという名前の騎士には、一切、心当たりがなくて、殿下のご期待にはお応え出来そうもありません」
という、もの凄く真面目で、まるで模範解答のような、キチキチッとした言葉が返ってきてしまった。
なんて言うか、ヴィンセントさんは、無機質な感じがするというか、どこか人間味が感じられないような雰囲気を醸し出しているなぁ……。
そういう意味では、割と茶目っ気な雰囲気も出してくれて、感情表現豊かなブライスさんや……。
大げさな感情表現をすることで、周りにいる人の反応を見たりするようなタイプっぽいスミスさんとは、真逆と言ってもいいかもしれない。
「……まぁ、そうでなくても、不慮の怪我などで退役する者も多いですし。
入隊試験での厳しい条件をクリアして、騎士という役職に就いてみたはいいものの。
我が国の過酷な訓練に付いていくことが出来ず、振り落とされて、辞めていく者も多く……。
国で働いている人間の中でも、特に下級兵においては、もっとも入れ替わり立ち替わりが激しいとされるのが騎士団ですからね。
残念ですが、皇女殿下がお探しのアーサーという騎士も、もしかしたら、もう辞めているかもしれませんよ……?」
そうして、財務部のノイマンさんが騎士団について。
『辞める人間も多いのだ』と、明け透けに色々と説明してくれた所で……。
「まっ……、騎士団のことについては、騎士団にいる人間に聞くのが一番でしょう……?
我々はあくまで、中央行政についてのスペシャリストであり、騎士団のスペシャリストではないのでね。
探している騎士がいるということで、気になることがあるのなら、是非、騎士団長や副団長に直接聞いてみるのをお勧めしますよ。
その方が、確実ですからね」
という何の邪気もないような、からっとした台詞が外務部のスミスさんの口から降ってくる。
その姿を見て、誰も怪しいことを言っているような人がいない上に、私自身が、彼等をきちんと見ることが出来ていないだけかもしれないけれど……。
みんな、それぞれにアーサーについては、本当に知らなさそうであることを感じて。
『宮廷伯の人達は、誰も、仮面の男やアーサーの件には関与していないのかもしれない』と、新たな情報と共に自分が今持っている情報についても簡潔に整理する。
私のデビュタントの時にワイングラスに毒を入れた『マルティス』に計画を伝えて、犯行自体を押しつけるという、仮面の男……、裏で暗躍している手練れっぽそうな人を雇っていたり……。
病気のアーサーのお母さんを治療に専念させるため『教会預かり』にすることが出来るほどの経済力を持っていて。
なおかつ、一連の事件の犯人を同一人物であると仮定するのなら……。
アーサーという『囚人を監視する、皇宮でも特殊な仕事に就いている騎士』に、難なく接触することが出来て、更に、囚人を監視する騎士達の仕事内容や、警備が手薄になる時間帯なども把握していなければいけないことから。
その対象人物に関しては、ある程度、宮廷の内部に詳しい人間で……。
それこそ『宮廷伯』のようにかなり立場を持った人間なのではないか、と予測していただけに肩透かしだったというか。
彼等が違うのだとしたら、圧倒的に、その位は落ちてしまうけど『子爵』を持っている人間が動いているか……。
【上流階級ではあるものの、宮廷貴族のように爵位を持っている人間ではなく、別の人の可能性も出てくる、よね……?】
例えば、教会で働いている聖職者でも『大司教』と呼ばれるような人達や、皇宮内でも『医者』という職業を持つ人達だとか。
そういうことは、あり得ない話ではないと思う。
それからも、当たり障りのない程度に、彼等に向かって気になることは話しかけてみたけれど。
結果的に、私の目から見た状態では、誰もがあまりにも黒っぽくない、ということが強まっていくだけで……。
【私よりもずっと、人を判断することに長けている、セオドアや、お父様は、彼等の態度をどう思ったんだろう……?】
と、心の中ではそっちの方が気になってきてしまった。
ただ、一応、知りたいと思っていた彼等の関係性……。
相関図については、ある程度、私でも理解することが出来たから、全然情報が得られなかった訳ではなかったのは僥倖だと言えるだろうか。
少し話した結果、お父様からも『清廉潔白』だと言われている、総務部のヴィンセントさんに関しては、五老星の人達みんなが、一目置いているような雰囲気で接していて。
私とも親しくしてくれている、環境問題のブライスさんは……。
ベルナールさんとはお互いに『水と油』と言っているように、意見の食い違いが頻繁に起きやすそうな感じがしているのと、事前にお父様に聞いていた通り、財務部のノイマンさんともあまり親しくなさそうな雰囲気だった。
それから法務部のベルナールさんは、ノイマンさんとは親しげな雰囲気で接しているから仲は悪くないんだと思うけど、基本的に誰に対しても神経質な雰囲気で……。
勲章の授与式で、挨拶をしてくれた時、私に『周囲の人間から、お前の言葉は一言余計だと言われる』と言っていた通り、割と眉をひそめて、周りの人達に怒ったりしていることも多かったと思う。
そして、ノイマンさんは、外務部のスミスさんに対して、特に当たりが強そうな所から、ここに関しては、お互いに『関係性が良好』だとは到底言い難かった。
というか、スミスさん自体が、完全に五老星の人達の中では一人だけ浮いている雰囲気を醸し出しているから、余計、そう思うのかもしれない。
みんな個々としての我が強すぎて、誰か特定の人と、べったり親しくしているという雰囲気はなく、それぞれに独立していると言ってしまえば、その通りなんだけど。
中でもスミスさんの、周囲の人達に全く迎合しない様子は、異常、というか……。
良い意味でも悪い意味でも、マイペースな雰囲気を醸し出していることから、今この場においては、特に異質さを放っていたと言ってもいいと思う。
会話の最後には、ウインクをされながら……
「では、また何かの機会がありましたら是非お会いしましょう、皇女殿下」
と、笑顔で声をかけられてしまったし……。
他の人達も、本当に一癖も二癖もあるような人達ばかり、というのは事実ではあったんだけど。
スミスさんは、それに輪をかけるようにして個性的だったと言わざるを得ないくらいだった。
そうして、私自身『人の感情の機微』を、慣れないながらも一生懸命探ろうとしていたから、誰かと普通に会話する以上にドッと疲れてしまったんだけど。
とりあえず、彼等の簡単な関係性を知れただけでも良かったと、ホッとしたのもつかの間……。
彼等との会話を無事に乗り切って終えたあとも、お父様と、おまけで私に挨拶をしに来る人達の列は途絶えることがなく。
ひっきりなしにやって来る人達に、忙しさで目を回しそうになりながらも、凜と背筋を伸ばして、皇女として恥ずかしくないような対応を心がけて……。
一体、どれくらい経っただろうか?
ようやくその状況にも、身体が慣れてきたと思い始めた頃……。
「帝国の太陽に、そして帝国の可憐な花にご挨拶を。
いやはや、流石にこのような場に出られると、それだけで陛下と話したい人間は多いでしょうし、中々お忙しそうでしたなぁ……っ!
隙を見て、私も話しかけたかったのですが、あまりにも人気すぎてお二人に近づくことさえ出来ずにいました」
と……。
見知った、というには、デビュタントの時に、一度しか会話をしたことがない人ではあったけど。
私でも、その顔を見ただけで、判断することが出来る存在が、お父様と……、それから私に挨拶をしに来たことで、思わず目を瞬かせた。
「あ……、えっと、バートン先生……?」
その人が、お兄様やテレーゼ様の『専属の医師』ということは覚えていたものの、その名前を中々思い出せずに、ちょっとだけ間があったけど、何とか辛うじて思い出せて……。
戸惑いながらも、目の前で挨拶をしに来てくれた人に視線を向けると。
「おっと、これは光栄ですなぁ……!
まさか、皇女殿下に、私のことも覚えて頂けているだなんて……っ!」
という言葉が、彼の口から返ってきた。
バートン先生のように、お医者さんという立場の人は爵位は持たないものの……。
名声の高い人ほど、上流階級の人間の一員として、誰かのパーティーに参加していることは、特別、珍しいことではないんだけど……。
「……驚きました。
まさか、バートン先生が此方のパーティーに参列しているだなんて。
ブライスさんとは親しいんですか……?」
と、私はバートン先生に純粋に気になったことを問いかけてみる。
その立場から私のデビュタントにも参列してくれていたくらいだし『ブライスさんなど、特定の貴族の人達と仲良くしていても可笑しくないなぁ……』と思いながら質問すると。
「えぇ、私は、皇宮に勤務してあまりにも長いですからな。
伊達に、歳ばかり食っていないというか……。
ブライス卿だけではなく、宮廷伯の方達とは、全員と面識があり、パーティーなどにも一応、上流階級にいる有力者として呼んで頂けることも多いんですよ」
という言葉が返ってくる。
その言葉に、私は……。
【バートン先生は、宮廷伯の人達、全員と面識があるのか……】
と、驚いて、目を瞬かせる。
この言い方だと、バートン先生が『宮廷伯の、誰と一番親しくしているのか』までは分からないけど。
テレーゼ様やお兄様達だけではなく、やっぱり長年皇宮で働いている以上は、その交友関係も広いのだろう。
意外な事実を知って、動揺しつつも……。
バートン先生って、確か、この国でもトップクラスに医学の第一人者みたいな扱いを受けているような人だから、そういった方面で誰かに相談を受けたりすることも多いんだろうな、と納得する。
「……バートンか、久しいな?」
「えぇ、陛下。
皇女殿下のデビュタント以来ぶりの再会ですなぁ……っ。
あのときは、私の弟子の不始末でご迷惑をおかけしてしまって、誠に申し訳ありませんでした」
「……あぁっ、……まぁそうだな」
「して……、あれから事件についての進展などはあったんでしょうか……?」
そうして、私を置いてけぼりにするように、お父様とバートン先生の間で、会話が続けられたことで私自身、びくりと肩を震わせる。
バートン先生からしたら、自分のお弟子さんだったマルティスが捕まったことと、マルティスがあの場で『仮面の男』の存在を匂わしていたことから……。
あの事件の行く末などに関して、気にしてくれているのだろうということは理解することが出来たんだけど。
パーティーという公の場所で、唐突に聞かれたその言葉に、思わず動揺してしまった。
「……事件については、此方できちんと調査している。
パーティーという、人の目が沢山あるこの場で話すことでもないし、お前が必要以上に気にかけることではない」
そうして、眉を寄せて難しい表情を浮かべながら。
『事件自体が解決していない状態で、誰かに話すことは出来ない』と判断したであろうお父様の……。
はっきりとした物言いに、バートン先生が苦笑しながらも。
「……いやはや、この老いぼれが、出しゃばるような真似をして申し訳ありません。
何しろ自分の弟子が起こした事件ですので、どうにも気になってしまいましてなぁ……。
陛下がきちんとお調べになって、解決に向かっているのだとしたら、ホッとしました」
という言葉を返してくる。
そうして、この場に訪れた重たい空気をがらりと変えようとしてくれたのか。
「そういえば、皇女殿下。
殿下は確か、此度の建国祭で行われるファッションショーについて、自分の身を景品にされたのだとか?
私も皇宮内で噂されているのをお聞きしましたが、皇族という御方がファッションショーに出られるだけではなく、自身を景品にされるというのは、なんとも斬新というか……。
それはもう、目立つことでしょうなぁ……」
と、此方に向かって声をかけてくれた。
その言葉に目をぱちくりと瞬かせ……。
私はバートン先生に言われた内容に、バートン先生が私が『ファッションショーの景品になった』ということを肯定してくれているのか。
それとも否定的で、皇族としてはあまり良くないと、窘めるために今声を出してくれたのか、判断出来ないながらも……。
「はい、そうなんです。
有り難いことに、私が衣装を開発する権利を欲してくれている方達がいらっしゃって……」
と、当たり障りのない言葉で返すことにした。
私の言葉を受けて、バートン先生は、何処までも柔らかく口元を緩めたかと思ったら……。
「……えぇ、ちょっと前の皇宮内は、そのことで持ちきりでしたから。
勿論、私も、そのことは存じていますとも……っ。
確か、皇女殿下が懇意にしているジェルメールと、他の店が競い合っているんでしたかな?
皇族というお立場のある方が、庶民に混じって、ファッションショーに出られるということは……。
それだけ、親しみも湧くというものですし、それが成功するか否かは別として、皇室のブランディングという意味では新たな試みかと思います。
皇宮内でも期待値は高く、私自身も、事前に販売されていたチケットを手に入れるのに奔走したお陰で、かなり良い席を確保することが出来ました。
何事もなく無事に開催されて……。
当日、特等席で、皇女殿下のご活躍と、ファッションショーを見られることを楽しみにしていますよ」
と、その目を細めて私に向かって、笑いかけてくれた。
その言葉に『そこまで悪い印象は持たれていないのかも……』と思いながらも。
バートン先生もファッションショーを見に来る気満々なのか……、と、ちょっとだけ緊張感が高まってきてしまう。
昨日の勲章の授与式では、オリヴィアも見に来てくれると言ってくれたし、どんどん知り合いが増えていくなぁ、と思いながらも。
私は、改めて、ファッションショーを頑張ろうと気を引き締めつつ。
「あの、私自身モデルになるのも初めてのことですし、あまり活躍は出来ないかもしれないので……。
お手柔らかに、気軽な雰囲気で見てもらえると嬉しいです」
と、自信のなさから、バートン先生に気軽な雰囲気で見て欲しいとお願いすれば……。
『またまた、ご謙遜を……っ』と、バートン先生からは、思いっきり目を細めて笑顔を向けられながらそう言われてしまった。
その後も、バートン先生とお父様と一緒に三人で少しだけ会話を交わしたあと……。
ようやくブライスさん主催のパーティーで誰かから声をかけられるという、怒濤の挨拶ラッシュが一段落したこともあって。
お父様が、私に向かって……。
「アリス、今日のパーティでは、話さなければいけない人間が多くて、疲れただろう?
私はまだ、他にも政治的なことで色々な人間と話さなければいけないこともあって、忙しいが。
そこまで私に付き合うこともないから、飲み物を飲んだり、テラスなどで、休憩をしてきても良いぞ」
と、声をかけてくれた。
しかも、お父様の方からセオドアに対して『アリスのことを頼んだ』と言うような目配せがあったこともあり……。
護衛という立場で。主人などの特別な許可などがない場合は、飲み物などは基本的に飲めないセオドアと一緒に、文字通り二人で休んできてもいいと許可を出してくれたお父様の……。
どこまでも有り難い配慮に感謝しながらも、私はカーテシーを作り出し、正式にお辞儀をさせて貰ったあと。
遠慮無く、今日の夜会のパートナーであるお父様の傍から、セオドアと一緒に離れさせて貰うことにした。
いつもお読み頂きありがとうございます~!
ブライス『環境問題官僚』
→アリスと仲良くしてくれる気の良いおじさん。
革新的なアイディアと古き良き物を大切にするバランス感覚を持つ。
茶目っ気たっぷりで、割とダンディーな雰囲気のイケオジ。
ベルナール『法務部官僚』
→礼儀とマナーを重んじる、一言余計なおじさん。
その部下はテレーゼとも関わりが……?
狸っぽい見た目で、五老星の中では一番恰幅がいい。
おなかぽんぽこりん。
スミス『外務部官僚』
→派手派手な柄物のシャツに、グレーのジャケットを着こなす生粋の伊達おじさん。
他国のことに詳しい外務のスペシャリスト。
赤を持つ者に対しては否定的だと言われているが……?
くるくるパーマで、ダンディーなおひげがトレードマーク。
明るくて、チャラ……、軟派な雰囲気を醸し出している。
ノイマン『財務部官僚』
→高そうなヴィンテージ物の眼鏡を付け、柔和な雰囲気を漂わせている上品なおじさん。
保守的で、財務部ということで皇宮のお財布、懐事情を握っており。
騎士団長に肯定的であり、騎士団長とも仲良くしている可能性が高い……?
その雰囲気とは裏腹、割と辛辣なことも平気で口にする。
ヴィンセント『総務部官僚』
→髪の毛をガチガチにオールバックにして固めた、硬派な雰囲気のおじさん。
清廉潔白と言われて、常に公正な目を持つと評判が高い。
騎士団長については、否定的な雰囲気だが……?
見た目からして厳しそう。
――今、始まる
どきっ!☆ おじさんだらけの宮廷内ラブストーリー……!?
は、……始まりません……っ!(笑)
……はい、勿論、私の冗談です(笑)
とりあえず、新規で出てきた人達があまりにも多いので。
宮廷伯の人達の簡単なプロフィールを置いておきます……っ!
更に更に、バートンが出てきたことで、この中に、怪しい人が……、?(笑)
『五老星』とかいう、まるでアイドルグループみたいな名前を付けられたおじさん達ですが。
今後も適度に作中に出てくる予定にはなっていますので、それぞれの特徴は今現在こういう感じなのだなぁ、と思って頂けたら幸いです……!