4話 冒険者登録
ロイグルについた俺たちは、すぐに冒険者ギルドへと入っていた。
何かしらのスキルでミデルの正体がバレないかと若干不安だったが、特に騒がれている様子もない。
ミデルの変身は完璧らしく、俺は安心しつつ冒険者登録を行えていた。
「こちらにお名前など、紙に書かれている必要事項を記入してください。読み書きはできますか?」
「はい、一通りは。それとこの子も一緒に登録したいので、二人分お願いします」
カウンターでギルドの受付嬢から用紙を受け取り、その場で記入していく。
幼い頃に最低限の読み書きは両親から教わっていたので、こういうところで困らないのはありがたかった。
俺は記入した用紙を、受付嬢に渡した。
「はい、これで書類の方は問題ございません。次にスキルを鑑定して、それによって成人か否かを判定してから認識票を発行します。ここまで済めば手続きは終了となります」
受付嬢の話を聞いて、俺はなるほどと頷いた。
成人の儀でスキルを授かる以上、スキルの有無で成人かどうかを判別できる。
未成年が冒険でむやみに命を落とさないよう、そこはきっちり調べると。
「では、この水晶に手をかざしてください」
俺は言われるまま、受付嬢の出してきた水晶に手をかざした。
すると水晶が青く輝いたと思いきや、赤くなったり黄色くなったりと点滅を繰り返していた。
「あ、あらっ? 調子が悪いんでしょうか? 普通だったら色が安定して、表面にスキルが表示されるはずなんですが……」
受付嬢はおろおろとした様子だったが、俺はこの原因に思い当たる節があった。
「メインスキルとサブスキルがあるから、水晶が安定しないのか?」
「んっ、何か言いましたか?」
「あ、いえ。何でもないです」
思わず呟いてしまい、俺は急いで訂正した。
成人の儀で授けられるスキルは一人一つで、一生変更できない。
女神からの「補償」と言う形で俺みたいに複数のスキルを持っている方が例外なのだろう。
……いきなり悪目立ちは避けたいし、ここは黙っておくべきか。
「うーん、水晶は安定しませんが……ひとまず何かしらのスキルはお持ちのようなので、これで登録完了とさせていただきます。次にお連れの方もお願いします」
『はい、ミデルの番ですね』
ミデルは前に出て、水晶に手をかざした。
……ミデルは人間じゃないしスキルを持っているかも不明なので、不安ではあった。
しかし無事に水晶に文字が表示され、受付嬢は笑顔になった。
「おお、【変化】のスキルですか。珍しいスキルをお持ちですね、応用の効く良いスキルですよ」
『えへへ、そうでしょうか?』
褒められたミデルは満更でもなさげだった。
一方で俺は胸をなで下ろしていた。
どうやらミデルの月光竜としての変身能力が、水晶には【変化】スキルとして認識されたらしかった。
「では、こちらが冒険者としての認識票になります。ランクはFからA、さらに最上位のSまでありますがお二人はFランクからのスタートです。こちらは身分証明証にもなりますので、常に身につけてください」
そう言って受付嬢が差し出してきたのは、名前やランクが金属部分に刻まれたネックレスのようなものだった。
スキルにもグレードがあるように、冒険者にもF〜Sまでのランクが存在すると。
「依頼が貼られているクエストボードは、このカウンターの両脇にあります。お二人の冒険がよいものになることをお祈りしております」
「ええ、ありがとうございます」
俺とミデルは認識票を首から下げ、受付嬢に会釈をした。
それからひとまず、今日のところは宿を取って休もうと言う話になった。