11話 新たな依頼へ
引越し後の数日間は、家具を揃えたり衣服を買ったりで充実した日々を過ごせていた。
けれどずっとのんびりしているのは、ミデルの性には合わないようで。
『アレーン! ミデルはお出かけも兼ねて依頼に行きたいですっ!』
朝一番、起きて来たミデルの一言目がそれだった。
俺は作りたてのフレンチトーストを皿によそいながら言った。
「今日は天気もいいし、そうするか。ここしばらくゆっくりできて体も休まったし。フィベルーも行くか?」
机の端でミルクを飲んでいたフィベルーは『いいのかにゃん!?』と顔を上げた。
「ニャーはずっとお留守番だと思ってたから、ご一緒できるならぜひ行きたいにゃー。ずっとこの家に引きこもっていたし、ニャーもお日様の光を浴びたいにゃ」
「一人で待つのも寂しいだろうし、一緒に行こう。でもまずは、朝食を食べてからな」
『はいっ、今日の朝食もいい匂いです〜』
ミデルの前にフレンチトーストを出すと、ミデルは美味しそうに頬張り出した。
『はむはむ……美味しいっ! 卵の味わいがまろやかです。人間の姿だとドラゴンの時では味わえなかった食事を口にできるので、ミデルはとても嬉しいです』
「おう、俺も作った甲斐がある」
それから俺たちは朝食後、身支度を整えてギルドへ向かった。
金には余裕があるし、今回はフィベルーを連れていくのでのんびりとした依頼を受けようかと考えていた。
ひとまずミデルがまた勝手に依頼を選ぶ前に、素早く依頼書を確保する。
『アレン、クエストボードからどの依頼を選んだのですか?』
「薬草採取だ。これなら俺にも心得があるし、のんびりもできる」
依頼書を見せると、ミデルはしょげてしまった。
『ええぇ〜。今日もモンスターを倒して、ミデルの活躍をアレンに見せたかったのに……』
「今日はフィベルーもいるし、毎度激戦続きだと疲れちゃうだろ? たまにはこう言う依頼も受けてみよう、何事も経験だ」
俺はそのまま依頼書をギルドのカウンターに持っていくと、受付嬢は目を丸くした。
「まあ、今日はえらく大人しい依頼ですね」
「普段のはミデルが選ぶからああなってるだけです」
『むぅ、次こそはミデルが活躍できる依頼を選びますもん』
頬を膨らませるミデルを見て、受付嬢は微笑ましげ言った。
「それでは今回の薬草採取依頼に向かうのは、アレンさんにミデルさんに飼い猫一匹ですね。行ってらっしゃいませ」
その直後、フィベルーの『ニャーは飼い猫じゃないにゃーんっ!!!』という怒りの叫びがギルド中に轟いた。




