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唐突に彼女・水沢葵衣は『いつになったら私と結婚してくれるの?』と聞いたきた

本作は『教育実習生に告白されて断ったけど質問ある?(長編)』の最終話から1年前。光晃と葵衣が結婚に至るまでの話です


では、どうぞ

 これは僕の教育実習が終わった1か月後、葵衣と結婚する前の話─────。



 この日は日曜日。大学4年で教育実習があるという事もあり僕はアルバイトをしていなかった。その為土日の休日だろうと平日だろうと真理姉さんや葵衣がいなくても家事はやっていた。


「ねぇ、光晃」


 家事が終わりリビングの掃除が終わり、一休みしようとしたところにソファーでごろ寝する葵衣から呼ばれた


「何?お昼のリクエスト?」


 自分で振っといてなんだけど、この時の時刻は11時でお昼にするにはまだ1時間早かった。


「んーん、お昼のリクエストじゃなくて、光晃はいつになったら私と結婚してくれるのかなと思って」


 結婚。高校生の頃や大学に入った時には考えもしなかった。早い人だと10代で結婚するらしいけど、教師として働いている葵衣はともかく、この時の僕は大学4年。加えてまだ就職すらしてなかったから結婚なんて先の話だと思っていた


「いつになったらって僕はまだ大学4年で就職どころか卒業すらしてないんだよ?そんな僕が結婚だなんて早すぎると思わない?」


 学生婚というのが世の中に存在している以上、早すぎるというのは言い過ぎだったと今では思う。だけど、就職どころか卒業すらしてない僕が結婚するだなんてのは世間体的にどうなの?とは思った


「そうかな?私の時には大学卒業を待たずして結婚したって子達は結構いたよ?」

「それはお互いに大学生同士だったから成立した話でしょ?」


 葵衣の時に学生婚を果たした人達というのは互いに大学生だったからできた事であり、僕と葵衣じゃ学生と教師で差がある


「うん。でも、私は光晃と結婚したいと思ってるよ」


 真剣な表情で僕を見る葵衣。そりゃ僕だって結婚するなら葵衣と決めていたよ?さすがに夫が無職というのはマズいんじゃないかな?とは思ったけど


「そりゃ僕だって結婚するなら葵衣とって決めてはいるけど、就職が決まってない学生との結婚なんて葵衣の両親や紅葉さんが許さないでしょ?」


 本人同士が結婚したいと思っていても互いの家族がそれを許さないって話は珍し事ではない。この時の僕は就職どころか卒業すら決まってなかったんだから。あ、別に単位が足りないとかじゃないよ?レポートの関係で卒業が決まってなかったっていうだけで


「んー、両親はともかく、お姉ちゃんはいいって言うと思うんだけどなぁ~」


 葵衣の姉の紅葉さんは高校生の頃から葵衣と共に家に住んでいるから挨拶もへったくれもない。僕と葵衣の結婚を軽いノリで許してはくれそうだった


「紅葉さんがいいと言っても葵衣のご両親と真理姉さんや僕の両親が許してくれるとは思えないんだけど」


 紅葉さんは許してくれるだろう事は確信していた。だけど真理姉さんや葵衣のご両親、僕の両親は許してくれないだろう。この時はそう思っていた


「じゃあ、光晃は私の両親と真理さん、光晃のご両親が許してくれたら私と大学卒業を待たずして私と結婚してくれるって事だよね?」


 どこの世界に安定した職に就くどころかアルバイトすらしておらず卒業できるかどうかすら不明な男と安定した職に就いてる娘の結婚を許す親がいるんだろう?そんなのいるわけない。という特に根拠のない自信を持っていた僕は


「うん。真理姉さんと葵衣のご両親、僕の両親がいいって言うなら結婚する」


 と答えてしまった。思えばこれが僕の予定を狂わせた原因の一端を担っていたのかもしれない


「わかった。お姉ちゃんと真理さんには夜相談するとして、ちょっと電話してくるから」

「あ、うん。いってらっしゃい」


 気怠そうに立ち上がった葵衣は自身の電話を持ってリビングを出て行った。


「紅葉さんはともかく、真理姉さんや葵衣の両親、僕の両親が学生との結婚を許すわけないんだよなぁ……」


 葵衣の両親の事はよく知らなかったけど、真理姉さんと自分の両親の事はよく理解しているつもりだった。それこそ職どころか卒業すら決まってない学生である僕が結婚する事に反対する事が予測できる程度には


「葵衣、もしかして焦ってるのかな?」


 僕が初めて葵衣と出会ったのは高校生の頃。僕はその頃17歳で葵衣は22歳だった。当時で20代前半だという事は結婚する前の葵衣は限りなく30代に近い20代。だとすると周囲には結婚している人もいるだろうから焦る気持ちも理解出来なくはなかった


「でもなぁ……」


 葵衣が焦っていたとしたらその気持ちも理解出来ないわけではなかった。でも、安定した収入を得るまでは葵衣と結婚するわけにはいかない。そう決意を新たにした時……


「光晃、お父さんが電話変わってだって」


 電話を持った葵衣が戻って来た


「え?何で?もしかして説教聞かされるの?」


 僕は葵衣の父親から説教される事なんて何もしてない。電話を変われと言われた時はそう思ったし、実際に説教(?)もされた。ただし、別の意味で


「違うよ!とにかく!話があるから変われって」


 葵衣父の用件が何なのか知らされないまま僕は葵衣にスマホを押し付けられ、とりあえず電話に出る事にした


「お電話変わりました、岩崎ですけど……」

『岩崎君かい?葵衣の父だ。久しぶりだね』

「はい、お久しぶりです」


 葵衣の父である裕也(ゆうや)さんとは葵衣と紅葉さんが家に住み始めた頃に1度だけ会った事があり、その時に葵衣が僕を彼氏だと紹介しはした。でも、裕也さんは『そうか。だらしない娘だけど頼んだよ』とだけ言ってそれ以降は何も言わなかった


『そうだね。ところで、岩崎君は葵衣との結婚について僕達や君のご両親、従姉さんや紅葉。自分の立場を使って先延ばしにしているようだと聞いたのだが、それは本当の事かな?』


 裕也さんは葵衣から僕が言った事を聞かされたらしく質問は的を射ていた


「本当です。僕はまだ就職どころか大学を卒業すらしてませんし、そんな状況の男と結婚だなんて紅葉さんや僕の両親、従姉である真理姉さんが許しはしないと言いました」


 普通の思考を持っている人間なら就職どころか大学卒業すらしてない人間との結婚だなんて許すはずがない。まぁ、教育実習生だった娘が生徒だった男と交際する事を許した時点で僕の周囲には普通の思考を持った人間なんていなかったのかもしれないけど


『そうかい。でも、僕としては紅葉もそうだけど葵衣も早いところ結婚してほしいと思っている。それに、家の事は君がやって外で働くのは葵衣がすればいいと思わないかい?』


 裕也さんの言う通り家事は僕がやり、葵衣が外で働くという提案は魅力的だとは思う。


「それは魅力的な提案ではありますが、葵衣さんばかりに負担をかけるわけにはいかないと僕的には思うんですけど」

『男のプライドか……。僕も男だから岩崎君の気持ちはよく解かる。でもね、葵衣も紅葉も家事は壊滅的なのは一緒に暮らしている君がよく知っているはずだよ』


 裕也さんの言う通り葵衣も紅葉さんも家事は壊滅的だった。料理を作らせるとお米を洗剤で研ぐだなんてお約束をするし、洗濯をさせると衣類がボロボロだなんて当たり前


「た、確かに……葵衣さんも紅葉さんも家事は壊滅的でした。家に来るまで1人暮らし出来てたのが不思議なくらいです」

『だろ?2人とも自頭はいいけど、紅葉はそれを打ち消すくらい不器用で葵衣は容量が悪い。紅葉の不器用さはともかく、葵衣の容量の悪さは教育実習中に近くにいた君がよく理解していると思う。そんな娘達だ。親としてはさっさと結婚してそれを補ってくれる人が必要なんだよ』


 電話口での裕也さんの声は心なしか震えていてトラウマでもあるのかな?なんて思った


「はあ……父親である貴方がそう仰るのなら葵衣さんと結婚する方向で話を進めますが、従姉の真理と僕の両親にも話してから決めさせていただいてよろしいでしょうか?」


 僕は未成年じゃないから親の承諾なしに結婚出来る。それでも筋は通さないといけない


『僕としては早く結婚してほしいものだけど、筋は通さないとね。わかった、決まったら家に来なさい』

「わかりました。それでは電話を葵衣さんにお返しします」

『ああ。それではいい返事を期待しているよ』


 僕は裕也さんに“頑張ります”と伝え、葵衣にスマホを渡そうとした


「むぅ~」


 スマホを渡そうと葵衣の方を見ると頬を膨らませていた


「葵衣、裕也さんとの話終わったけど、どうしたの?剥れて」

「光晃、電話が終わったら話があるから」


 唐突な話をしようと思う。僕、岩崎光晃はいつも失敗ばかりしていると思う。それでも僕なりに頑張ってきたし、手を抜いたつもりもない。そんな失敗ばかりの僕が最も失敗したと思う瞬間、それはこの時を置いて他にない。


 葵衣は裕也さんと何かを話している様子だったので僕は平静を装ってリビングを出ようとした。だけど……


「どこに行くの?光晃?」


 時すでに遅し。僕が逃げ出す前に葵衣は電話を終わらせていた


「どこってトイレだけど?それがどうかしたの?」


 内心動揺した。教師や教育実習生に絡まれた時、僕は絶対に感情を表に出すような真似はしない。例えば、自分あるいは我が子がイジメに遭い教師に相談した結果、何の対処もなされなかったとしよう。その時に怒鳴りつけたくなるのが当事者だったり親だったりの心境だと思う。だけど、怒鳴ったらそれこそ教師のペースだ。そこは怒鳴りたくなる気持ちをグッと堪え、淡々と教師の言った事を反復し、その成果を求めるのが僕のやり方だ。この時の僕は怒り狂っているであろう葵衣に動揺を見せまいとしていた


「ふ~ん。じゃあ、トイレに行く前にさ、さっき言ってた私の家事が壊滅的だったっていう話しようよ」


 額に青筋を浮かべている葵衣。誰がどう見ても怒っているのは明らかだった


「それってトイレ行った後じゃダメ?」

「ダメ。だって、トイレに行くと見せかけてそのまま逃げるでしょ?」


 さすが僕の彼女。長い付き合いだけあって僕の行動はお見通しだった


「わかったよ。降参」


 誤魔化してもよかったんだけど、付き合ったばかりだったらまだしも5年も付き合っているととてもじゃないけど誤魔化しきれないと思った僕は大人しく白旗を挙げたのだった



 あの後、僕は葵衣に『私だって日々成長してるんだよ!』と正座で小1時間説教を受けた。そして、その日の夜


「お姉ちゃん、真理さん、ちょっといい?」


 葵衣はリビングでくつろいでいる紅葉さんと真理姉さんに声を掛けた。その時僕はいつも通り洗い物をしていて『葵衣は真理姉さん達になんの話をするのかな?』程度にしか思ってなかった


「ん?どうしたのかな?葵衣ちゃん?相談ならお姉ちゃん頑張るよ?」

「学校で困った事でもあった?」


 紅葉さんと真理姉さんは葵衣が学校関係で相談があると思っているようだ。僕もそう思ってた


「学校の仕事は順調だよ。そうじゃなくって光晃との結婚についてなんだけど……」


 葵衣は昼の僕との会話を紅葉さんと真理姉さんに話し始めた。言った当人としては肩身が狭い


「光晃!!」

「光晃君!!」


 葵衣が昼間のやり取りを話し終えたようでリビングから真理姉さんと紅葉さんの僕を呼ぶ声が聞こえた


「何?っていうか、そんな怒鳴らなくても聞こえてるよ」


 真理姉さんも紅葉さんもいい大人なんだから勘弁してよと思う反面、いい大人でも物の善し悪しが理解出来ない大人がいるから仕方ないかと呆れた


「ちょっとこっちに来なさい!」

「それって今すぐじゃないとダメ?」

「ダメだよ!」


 真理姉さんが僕を呼び、紅葉さんが早くしろと催促。この2人が揃うと面倒だと思いつつ、ちょうど洗い物が終わったところだったのでリビングへ


「何?というか、怒鳴ったら近所迷惑になるんだけど」


 “いい大人なんだからその辺弁えてよ”という言葉を僕は言わなかった。言ったら拗れる事は目に見えていたから


「そんな事はいいから!ここへ座りなさい!」


 真理姉さんが指すのはソファーの前。僕は真理姉さんの言う通り座った。胡坐で


「誰が胡坐でいいって言った?ちゃんと正座しなさい!」

「あ、やっぱり?」


 いきなり呼びつけられてそこへ座れと言われたら正座をするのがまぁ、王道だ


「当たり前でしょ!今から大事な話をするんだから!」


 真理姉さんに言われた通り僕は正座に座り直した。


「正座したよ。それで、話って何?」


 内容は何となく予想出来た。だって、この日は結婚の話がメインだったし






『教育実習生に告白されて断ったけど質問ある?(長編)』の最終話から1年前でしたがいかがでしたでしょうか?光晃と葵衣が結婚している以外はほぼ変わらなかったと思います。付き合い始めたと同時に同棲までしているので本編と関係性についてはほぼ変わらないと思います


今回は最後まで読んでいただきありがとうございました

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