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お前を失うのならば鬼になろう(馬4)  作者: 蔵前
五 僕達悪のシージャック
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か、格好いいよって?

 僕達の前にRPGゲームのエンカウントみたいにして出現した四人組、全員が二十代半ばぐらいの若い男で、各々手に武器を持つという、調理室と機関室の造成部隊だった。

 どこぞで手に入れたのか銃を持っているのが一名、サバイバルナイフが三名である。


 彼らは船内の異常を察知して確認に動いていたようだが、彼らの守る者は彼らの悪行の証拠であり、そのためには邪魔をしているらしい僕達を襲撃するつもりでもあるようだ。

 僕が霊的に見通した所では。


「アハハハ!」


「どうしたちび?怖いのか?」


「だって、ゲームの敵出現そのままなんだもの!」


 確実に「殺人者」の仲間であることがよくわかったので、僕は笑ってしまった。

 人を苦しめた人達が殴られるのならば、僕が悪いって思わなくてもいいよね?

 だから、もう大笑いだ。

 怖がるどころか笑っている僕に敵が怯んだ時、僕の後ろの五百旗頭が号令を出した。


「猟犬ども、かかれ!」


 すると、五百旗頭の号令と共にしんがりだった坂下と楊が敵に飛びつき、忽ち三人を制圧した!


 まず坂下が銃の男の手首を掴んで、その手を捻じって隣の男にぶつかるように大きく転ばせた。

 坂下は転ばされた男から間接の外れる音がするとそのまま手放し、ぶつけられた男が体勢を立て直す間も無く肘鉄で落とす。


 その坂下の一瞬のような流れる行動の横では、楊がナイフを持つ男の手首を捻り上げ跪かせて、後頭部を手刀で殴って相手の意識を落としていた。


 最後の一人は二人の猛攻に驚いて立ち竦み、踵を返して逃げようとして、逃げ切れなかった。


 戻って来ていた良純和尚とすれ違いざまに、彼によって何事もないように首筋を叩かれて昏倒したのだ。


 そんな彼は、刑事二人の偉業を見て「やるじゃないか。」と微笑んだ。


 僕の隣の正太郎は「すごい、すごい。」と子供のように手を叩き喜び、僕も本当に感動して思わず口に出していた。


「かわちゃんて、本当は強かったんですね。」


 しかし楊は喜ぶどころか、フラフラと通路の脇に行ってそのまましゃがみ込んでしまったのである。


「どうせ、僕は弱いよ。」


 常に自分で自分を最弱だって言っているくせに、なんて面倒臭い男だ。


「すごい格好良かったですって。僕はかわちゃんがこんな制圧術使える人だったんだなーって、凄い感動しました。二人一時に倒せる坂下さんに及ばなくても、すごく、凄いと思います。実技もある昇進試験に受かるはずです。あれ、どうしたの。ねえ、かわちゃん。かわちゃんったら。」


 しゃがんでいる楊が一層深く頭を垂れ出したので、僕はどうしたのかと彼を揺さぶっていたら、坂下が僕の肩を掴んで僕の動きを封じた。


「あんまりコイツを追い込んでやらないでくれ。」


 え、追い込んでた?


「こいつを警部補に上げたい副本部長の前で、こいつを実技試験で打ち負かせる猛者なんて、県警にいるわけが無いだろ。」


「幸運の亀事件って、そういう事でしたか。」


 楊は甲羅の割れた可哀想な陸亀を拾って数十万かけて看病して葬式まで挙げた馬鹿者だが、その亀の飼い主が県警の副部長だったというおまけつきなのだ。

 愛亀を盗まれて半狂乱だった副部長は、愛亀の死に打ちのめされたが、愛亀が受けられるだけの医術を受けて、死んだ後は葬式を上げてもらえたと聞いたのだ。


 僕にはなかなか教えてくれなかった、楊の昇進に繋がった亀事件。


 それで昇進したんだって改めて知った僕は、楊の背中を慰めるようにしてポンポンと叩いた。


「だいじょぶ。かっこいいです。」


「棒読みだぞ、てめえ。」

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