上司×部下
「せんぱーい、金貸してくださいよー」
「小林君、給料貰ったばっかりだろ? 何に使ったの?」
「え? 普通にガチャっすけど」
「ガチャってガチャガチャの事? 懐かしいなあ、私も若いころはよくやったもんだ。でもあれって三百円ぐらいのもんだろう? いったい何個買ったのさ」
「俺、月に十万は溶かしてますね。今回も激熱のキャラがいて、そいつが出るまで引いたんで金ないんす。おかげで昨日からなんも食ってないんすよー」
「そ、それは可哀想だね。私の昼ご飯で良ければ少し分けてあげよう。ツナとタマゴどっちが好き?」
「あー俺的にハムっすね」
「……ないよ」
「あーマジ午後からやる気でないわー。会議さぼっちゃおうかなー」
「そ、それはまずいよ。小林君が中心になって進めてるプロジェクトだろう? 専務も出席されるんだからちゃんと出ないと!」
「先輩かわりに出といてくださいよ。資料読むだけなんで。あ、これっす」
「どれどれ……うわー良くできてるねー。さすが若い子はプレゼン資料も上手だなー。色もきれいで読みやすいよ」
「じゃ、お願いしますね」
「いやいや! 出ないよ!? 私プロジェクトメンバーじゃないからね!?」
「こんなん誰が出ても一緒っすよー、会議なんてみんな考えてるフリしてるだけなんすから。適当に相槌打って質問かわしとけば問題ないっす」
「……みんな小林君に期待してるんだから、頑張って会議出ようよ。ほらこれ千円あげるから、ハムサンド買っておいで。急がないと休憩時間終わっちゃうよ?」
「……っす」
「え? なに? 今のお礼? 聞こえないよ」
「あざっっす! すぐ下のコンビニ行ってくるんで待っててください!」
「え、うん。わかったよ」
「はぁ、小林君遅いなあ。もうすぐ休憩終わっちゃうよ……何してるんだろ」
「あれ? 西原課長だけですか? 部長知りません?」
「あぁ、野々原君。部長ならいないよ、どうしたの?」
「まいったなあ……新人の子が午後の会議の資料、間違えてシュレッダーにかけちゃってデータも残ってないんですよ……部長なら控え持ってるかと思ったんだけど……」
「あー、それなら……これかな? 午後の会議で使うって言ってたし」
「……それです! ありがとうございます! 大至急コピーとらなきゃ!」
「階段気を付けるんだよー」
「あーコンビニ超こんでたわー。俺ハムサンド買うだけなのに、前のやつがめっちゃ缶コーヒー買ってたんすよ! カゴいっぱいっすよ!? ありえなくないすか!?」
「……順番は守らないとね。それよりさっき野々原君が来たよ。なんでも新人の子が会議の資料シュレッダーにかけちゃったみたいで、小林君の資料渡しておいたから」
「はぁ!? ……先輩、それ絶対新人じゃなくて野々原の仕業っすよ。あいついっっつもぼーっとしながらシュレッダーかけてるんすよね。まじ使えねー」
「小林君、野々原君の方が先輩なんだからそんな風に言うのは良くないよ。彼だっていいところ沢山あるよ」
「俺、先輩ってだけで人の事認めるの好きじゃないっす。俺が認めてんのは西原さんだけっすよ」
「小林君……」
「だから追加でもう千円もらえませんか? 晩飯代なくて」
「……はぁ。いいよ、私が奢ってあげるよ。牛丼でいいよね?」
「あざーっす! やっぱり先輩最高っす! 午後の会議も頑張れそうっす!」
「うん、頑張ってよ。小林部長」
「もー小林でいいっすよー!」