第1話
初めて真面目な小説を書いてみます。
最近忙しいので、執筆は遅くなりますが、よろしくお願いします。
※政治に対しては初心者なので、おかしなところが多々あると思いますが、温かく見守ってくださると幸いです。
日本時間午前6時、トウキョウ都庁の一室。顔に幼さの残る、若い男――都知事が、椅子に座ってモニター越しに会話をしている。
「それで、今のところは」
茶髪にピアス、少ししわの入ったシャツに緩んだネクタイ。とても政府関係者のものとは思えない出で立ちだ。
《晴れ、本日も帝都圏内への敵の侵入は無し。しかし本日未明、西日本ではヒロシマがついに陥落。そのため、ヒョウゴで防衛戦が繰り広げられている模様。至急援助を頼みたい》
「分かった。亮二、調査ご苦労」
モニターの向こうで、亮二と呼ばれた男――サイタマ県知事は、緊張していた頬を少し緩めた。彼もまた、都知事と同じでそうとう若く見える。
《それにしても慎、いいのか?あっちはキョウト=ユニバーシティがあるだろ。住人も多くいる。早いとこ、トウキョウ=ユニバーシティと統一してそっちに移した方がいいと思うが?》
「いや、その前にヒョウゴの防衛を確実にすることだな。それと、キョウト=ユニバーシティの図書館から、書籍データをなるべく早くトウキョウに移したい」
ぺらぺらと、手元の資料をめくりながら慎は答えた。ここのところ、戦地への動員人数は右肩下がりだ。軍事研究に重点を置いた結果が、ヒロシマの陥落かもしれない。
「それが完了したら、即刻ヒョウゴ行きの赤紙を発行するってことで」
《了解。近く、サイタマからキョウトへ人員を出張に行かせるよ。そこで彼らに書籍移動作業をしてもらう。それと、ボストンからまた学生団が到着した。後で羽田に迎えに行ってくれないか?》
すらすらと、亮二はこれからの動きの予定を報告する。慎は手帳に走り書きでメモを取った。
「ああ、そうする。……しかし、ボストンも大変だな。この前まで独立を保っていたと思ったら……それに、派遣した調査員もまだ帰国してないし」
《無事だといいんだけど。でも、アメリカにありながら連盟軍からの攻撃を今まで防いできただなんて、奇跡に近いことだと思うよ》
「そうだな。この大戦下の世界において、独立地域があるって事自体が奇跡だから…」
諦めを含んだ口調で、亮二は返した。帝都トウキョウも、いつ連盟軍に侵略されるか知れない。そうなったらこの国は。
《そんなため息ばかりついてんなよ。…じゃあ、こっちはまた忙しくなるから、切るよ。身体に気をつけて》
「はいよ…平和な明日のために、な」
《ああ。平和な明日…》
挨拶を交わすと、プツ、と回線が遮断され、モニターには砂嵐が浮かんだ。
「さて、と…」
デスクから離れ、慎は大きく伸びをした。
窓越しに見る朝のトウキョウは静寂を保っている。林立するビルの間から洩れる朝日が、整然とした町並みと木々を華やかに照らす。
「あれからかなり経つけど…日本だけはこのままであって欲しい…」
ため息とともに発した言葉が、緊張した一日の始まりを告げた。