Pensilis pants talka conference. ★
またパンツ画像があるので背後に気を付けてください。(あとお爺さん画像も)
2015/02/01 第一話に扉絵追加
「彼女はパンツを見せて……じゃなかった。彼女は身体を張ってくれた!」
おおーっ!! と、吊り庭園の勇者たちが声を張り上げて議会の空気が震えた。
吊り庭園の第一議会場は、まるでローマの議場のような簡素な作りである。
円形の部屋で机もなく、長椅子が半周する階段状の議場。石造りの剛健なアーチが高い天井を支えている。
吊り庭園で各種勇者団体の長を務める者たちが集まる中、その視線の中心でバルダッサーレは力強く叫ぶ。
そして若い勇者たちは鼻息荒く同調していた。
「これはもう彼女にさらなるサービスを要求するほかありませんよ! みなさん!」
急進派が立ち上がり発言した。
バルダッサーレは腕を組み、目を閉じて「うんうん」と頷く。
「しかし我々の印象が悪くなってしまうのではないか? もっと彼女の信頼を得てからだな……」
穏健派が口を挟む。
バルダッサーレは議会中央で「うんうん」と頷く。
「いやそもそもだな……。今回のパンツは同行者の行動による結果であって、彼女がパンツを見せてくれたわけではない。その変をみなさんはご理解しているのかな?」
懐疑派の発言はいつも冷水だ。
バルダッサーレは、さらに深く「うんうん、もっともだ」と頷く。
「待て諸君! あれは申し合わせた一種のプレイだった可能性もあるのではないか? 単にパンツを見せるだけでなく、より一層我らのパトスを掻き立てるために、あのような芝居を打ってくれたとも思えるぞ」
浪漫派がパンツにあるロマンを、中二階の少女たちが理解していると訴えた。
バルダッサーレは、「うんうん、それはそれで」と寛容に頷く。
「こら! それを言ったら萎えるだろう。パンツが良いと分かっているならば、意図的にパンツより良いと思う形而上学的対象と同一視し……、いやもちろんそれは自然的対象と同一視するという誤りではあるが、それを悪いと同一視するような定義主義的誤謬に沿わせるなど以ての外だ。あれは本人の意思に反していた。そう思うのが精神衛生上いいもんだぞ」
浪漫分派普遍的指令主義派が浪漫派の意見を窘めた。
バルダッサーレは、うんうん……んん? と、こいつ何言ってんだといった表情で首を捻った。
「あの……みなさん……。なにを言ってるんですか?」
バルダッサーレの補佐を務める夏旺が、恐る恐る発言した。
「あー、つまりだな。より良いとされるパンツの見え方と同一視すること――」
浪漫分派普遍的指令主義派がわけのわからない事を語り始めたので、夏旺は両手を振りあげ慌ててその発言を押し留めた。
「いえ、そっちの哲学? 的な話じゃないですよ。パンツの話ばかりしてませんか? みなさん?」
この会議は中二階に吊り庭園をあげて協力すべきか、どう協力するのか、どこまで協力するのかを協議するためではないのか。と、夏旺は言いたいのだが――。
「そういえば彼女たちは荷物が少なかったな。着替えを持ってきていないんじゃないか?」
「よし、着替えとして俺達好みのパンツをアメニティグッズに紛れ込ませようじゃないか!」
「そうと決まれば縞パンだな。明日は……そう……黒をっ!!」
「ふざけるな! 毎日純白だろうが! この色パンツ派めっ!」
「いややっぱり日替わりだろ!」
「いやいくつもラインナップしておいて、どの子がどれを選ぶか、今日は何を履いているのかを想像するのも……」
「あ、あのー。みなさん。もっと重要な議題がありませんかー」
夏旺の声は「パンツパンツ」の声にかき消される。
「ああ、これでは冬奈に顔向けできない……」
妹に頼られ、兄としての尊厳が保てなくなるのではと夏旺は頭を抱えた。
それ以前に、この変態たちをどうにかしないといけない。夏旺は吊り庭園の一員として、兄としてだけでなく男としての尊厳も保たねばならない。
それなのに議会はパンツの話題で荒れるばかりだった。
夏旺が諦めかけたその時、思わぬ増援が現れた。
「夏旺の言う通りじゃ! この愚かどものがっ!!」
議場の一番高い席に居並ぶ老人たちの一人が叫んだ。
高い位置に陣取る事から、山岳派と呼ばれる老人たちは、吊り庭園で一目置かれる勇者たちである。
自分たちを自らロートルと揶揄するが、名実ともに吊り庭園のベテラン勇者である重鎮たちだ。
「先ほどから聞いておれば、パンツパンツと全く本題に入らんではないか」
痩せ老いているのに、なお硬く重々しい気を放つ老人が髭を撫でつつ若者たちを諌める。
「年寄りは気長だがな。それでも……今のお前たちは目に余るぞ」
静かに窘める老人から、歴戦の勇者である怒気が発せられていた。
大抵のことでも飄々としている夏旺でも気圧されてしまう。
「で、バルよ……」
重鎮の代表がゆっくりと重々しくバルダッサーレの名を呼ぶ。
「は、はい」
「そのパンツ娘はどんな子じゃ? めんこいのか?」
「はい、それはもう……。はっ?」
バルダッサーレは老人に問われて思わず間抜けな声を上げた。
「パンツがどうのばかり言われては、その場に居らんかった者では想像のしようがないわ」
「パンツの写真とはいわん。出来ればその娘の顔写真……せめてどのような娘なのか分からねば楽しみようがなかろう」
これらの発言を受け、夏旺は愕然とした。
誰も中二階からの援軍要請を真面目に考えていない。
この老練な勇者たちですら、中二階からきた少女を……少女のパンツを気にかけているのだ。
「ええっと、ですね。それはもう見目も麗しいことはもちろんですが、男を知らぬ雪のような……まさに処女雪というに相応しい少女で――――」
バルダッサーレから晶という娘の詳細を聞き、老人たちはご満悦だ。
だが夏旺は納得いかない。いろいろ納得が行かない。というか今現在の議会すべてが納得できない。
「あ、あのぅ……本題は救援では?」
夏旺は弱々しく疑問を投げかけた。
すると怒涛のような言葉が夏旺に襲いかかる。
「そんなもん行くに決まっとるじゃろう」
「今更に何を言っとるんじゃ、夏旺」
「予算とか人員の予定調整は各団や血盟で決めればいいだろ」
満場一致であっさり協力とその方法が決まった。
「あれー!?」
夏旺は間抜けな声で叫んだ。
「いま大切なのは彼女のパンチラを……いやそれ以上のサービスをどうすれば報酬と位置づけられるかだろうが」
「まったくそれなのに肝心の娘の容姿すら場に上げずパンツのみを語るとは呆れた若者たちじゃ」
「呆れた奴らじゃわい。まったく、最近の若者どもはパンツのみで盛り上がりおってからに」
「パンチラはパンツのみにてならずじゃ。バカモン」
「うむ、その娘の個性や状況、恥じらい方、隠し方など味わうべきところが山ほどあるというのに」
「いや、すんません、ほんと。モンタニャールの方々……」
「バルも分かればよいのじゃ。よしでは改めてその娘に合いそうなパンチィの手配を――――」
「……今時パンティとか」
「それどころかパン『チ』ィだってよ」
「誰じゃ! いまパンチィに文句を言った奴はァッ!!」
第一回吊り庭園八椚晶パンツ会談はまだまだ続く――。




