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中二階の勇者様 (表)  作者: 大恵
行進の魔王と病いの少女
46/106

言い訳の口づけ ★

久しぶりの主人公partなのに短くなってしまいました。すみません。

どうしても引き伸ばせないのでUPします。


2015/10/28 挿絵追加

 晶は伸びる魔王の手を待ち構え、燃え盛る太陽を背にして宇宙空間に漂っていた。


 振り返れば神秘的な核融合の脈動を繰り返す太陽。神々しい太陽を背にする晶は、人智を越えた存在に思える。


 過酷な宇宙空間の環境を無視アンセルする晶は、太陽風を背に受けて伸びてくる魔王の手に両手を当てて進行を止めた。

 盲進してくる巨大な手を、そよ風に手を翳すような仕草でピタリと止めてしまう。


 ファファンバルクソーツの星から、燃え盛る太陽へと伸びる手。その進行を待ち構えて防いだ晶は、伸びる大きな掌に全身を寄り添わせ、軽い口づけをして魔王に語りかけた。


 ヤマイで出来た手とはいえ、肉体と同様の感覚をあるかもしれない。もしかしたら直接唇をつけても、晶の言葉が届かない可能性もある。

 だが、晶はファファンバルクソーツの星まで落ちる八分間。魔王へ切々と語りかけた。


「あなたが何者なのか問いません」

 晶は無視していた太陽風や重力などの力のうち、ファファンバルクソーツの星から届く引力だけを選んで能力を解いた。

 ゆっくりとだが、ファファンバルクソーツへと晶は「落ちて」行く。

 

「あなたが何を望んていたのか、ボクには分かりません」

 落ちる晶に押され、伸びる手が縮む。賢明に伸びようとする行進の魔王(クォ・ヴァディス)の黒い手も、晶の暴力的な無視アンセルの力には逆らえない。


「あなたが悪いとも言いません。罪を問うなんてしません」

 距離を無視する晶は黒い伸びる手を押し、光とほぼ等しい速度でファファンバルクソーツの大地へと落ちていく。

 無視しきれないエネルギーが周囲の希薄なガスと反応して、プラズマ化して高熱を放つ。


 晶はプラズマの影響を無視しているので無事だが、魔王の黒い手は高温に耐えかね、宇宙空間で四散し闇の中へと紛れて消えていく。


「だから……。あなたの望みを無視するボクを許してください」

 虫のいい交換条件を並べて、頭を下げた時、晶の小さな胸の膨らみに何か金色の小物がぶつかった。


 消えていく魔王の黒い手の中から、一つの日時計が姿を現した。

 基部は銅で、銀の円盤に、据え付けられた金の指時針。晶の顔ほどの大きさがあり、ずっしりとして細工と精度が素晴らしい工芸品だ。


 地球とは赤道傾斜角――地軸の傾きが違うため、少し角度の違う三角が取り付けられた日時計が晶の胸をつつく。


「……これが君なの?」


挿絵(By みてみん)


 魔王は日時計だった。巨人であるはずなのに、なぜ?

 疑問に首を傾げた時、ふと晶は公園などに設置されたカゲボウシの日時計アナレマチックダイアルを思い出す。

 きっと行進の魔王(クォ・ヴァディス)は、日時計から出来た影法師なのだろう。夕方、伸びる影がずっとずっと伸びて、巨人の影みたいになるように。

 黒い伸びる手も、地上へ落ちる長い長い陰も、全て巨人を思わせるだけの影法師だ。


 実体のない魔王を見上げて、ファファンバルクソーツの人々は怯えて暮らしていたに過ぎない。


 晶は日時計をそっと手にとり、最後の言い訳をする。

 空気の無い空間で唯一出来る語りかけをするため、魔王の日時計に口づけした。


「ごめんね」

 晶の口づけを受け、金と銀と銅でできた日時計は初心な子供が赤面するかのように、真っ赤に加熱して崩れ始めた。

 白熱して原型を失った日時計を抱きしめ、晶はファファンバルクソーツと共に大地へと落ちた。



 八分間――。

 


 晶と魔王が触れ合い、ファファンバルクソーツの大地まで落ちるのにかかった時間は、八分間だった。


エイテネ学園で晶が授業は火起こしではなく、日時計の読み方作り方にしておけば良かったと後悔しているこの頃です。

もしかしたら修正するかもしれません。

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