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中二階の勇者様 (表)  作者: 大恵
歯車の少女と無視する少年
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1/106

歯車の月 ★

この作品は【中二階の魔王様 (裏)】(http://ncode.syosetu.com/n2408bg/)のライトサイドストーリーです。

表なのでハッピーエンドです。


挿絵(By みてみん)


もしもダークな話が苦手で無い方は【中二階の魔王様 (裏)】もお読みください。


2012/10/18 ちょっと追加してみました。

2013/08/27 晶のイラスト追加。09/01 晶アップ追加。

2015/02/01 扉絵追加

 歯車がゆっくりと回る。


 ワタシの生まれた世界では、平歯車で造られた月が浮いている。

 ぼんやりと光る平たい盤面を地上へ向けた歯車の月が、ワタシの頭上で音もなく回転した。三十ある歯の一つ分だけ

 

 三十の歯を持つ月は思い出したように、ゆっくりとその歯一つ分だけ回転する。不思議なその月は、地平の彼方に沈む事が無い。いつもいつもワタシたちの街の上で、ぼんやりと光りつつ静かに浮かんでいる。

 ワタシたちを見守るはずの大きな歯車(ギア)は、隣にがっちりと填った小さな歯車(ピニオン)のせいで自由に回転する事が出来ない。


 ワタシは明日、あの小さい歯車(ピニオン)を動かす為の一つの部品となる。

 それが嫌で嫌で堪らないから、こうしてビルの屋上で寒風に吹き晒され泣いている。軽い軽い涙どころかこの身体まで、吹き飛ばすかのような強い強い風に嗚咽をかき消して貰ってワタシは泣いている。


 どうやったらワタシは助かるのだろう? 


 ワタシにとって最悪なのは生贄として明日、ワタシで無くなること。

 ワタシにとって最低なのは、このズルいワタシ自身。


 母も弟も犠牲にしたのに、未だ自分がどうやって助かろうなどと考えている最低でズルいワタシ。

 あの歯車ギアがワタシの思い通りに動いてくれたら、どんなに胸がすく事か。

 あの歯車ギアがワタシの頭上から消え去ってくれれば、どんなに楽な事か。


 このワタシを助けてくれる誰かが、颯爽と現れてくれたらどんなに素敵な事か。


 こんな最低なワタシの行為を全て許してくれて、何もかも解決してくれるような都合が良い誰か。

 ワタシの酷いところを気にしない……無視してくれる。そんな素敵な人が現れてくれたら、どんなに幸せな事か。

 

 そんな自分の保身ばかりを考えていたいた時、ワタシは中二階メザニーンに呼び出された。

 右も左も何処を見ても、いっぱいの勇者たちで溢れる世界に。


 でも、ワタシが夢想した勇者様は、そこにも居なかった。


 あの男の子がやってくるまで……


     * * *


挿絵(By みてみん)


     * * *




 八椚やつくぬぎ あきらは冷たい石の上で微睡んでいた。


 うつ伏せになっていた身を捩り、薄い胸から順に仰向けへ寝返った。その仕草は気怠い昼に目を覚ました令嬢のようで、無垢の中に隠しきれない魅力がはちきれんばかりに詰められた姿態であった。


「きゃーっ! 今回の新入生はとびきり可愛い子ね」

「これは確かに。この姿をみたらアメンテス様の悪い癖がまた出そうだな」

「……はだけたパジャマ。……裸足、うなじ、鎖骨ハァハァ」


 薄暗い部屋に溢れる女の子たちの声で、晶はゆっくりと目を覚ます。


「……むにゃ。……ここは? どこ?」

 晶は頬にかかる栗毛の髪を払い、眠そうにまなこを擦り上半身を起こした。


挿絵(By みてみん)



「うあわぁー……。なんか超可愛いんですけどこの子。今度の十二姫祭の女王に選出されるんじゃないの?」


「……肩幅狭い。顔ちっちゃい……。薄い胸細い腰柔らかそうなお尻長い足ハァハァ……」


 密室に溢れ始める女子たちの煩悩。


 晶は身の危険を感じて、眠気から完全に覚めた。

 慌てて周囲を見回すと、そこは寝ていた自室ではなかった。

 薄暗い部屋を照らす明かりは、数本のロウソクのみ。晶の周りを囲うように、六人の少女が各々デザイン違いの見慣れぬ制服姿で立っている。


「あ、あの……ここどこですか? お姉さんたちは? ボク、家で寝てたはずなんですけど、ここボクの部屋じゃないですよね?」


 矢継ぎ早の質問を聞いているのかいないのか。六人の少女たちは晶の反応にきゃあきゃあと騒ぐ。


「ボクっ娘よ! ボクっ娘!」

「お姉さん、だってぇ! 可愛いぃっ!」

「短めの髪と相まって男の子のようだ。しかしこんな可愛い男の子などいないね」

「……可愛い。まるでお人形……。なんでも言いなりになりそう……。言いなりにさせたいハァハァ……」


 晶はより一層、身の危険をひしひしと感じて、両肩を抱いて後退りした。


「……怖がらないで。ここには、いえ……この中二階の空間にはあなたを汚すような男たちはいない」

 六人の少女の中で、もっとも小柄でもっとも不気味な少女が、無表情で話かけてきた。


「え? ちゅ、厨に……」


「……そっちの字じゃない!」

 無表情だが強い口調で発言を正される。


「なんでボクの言葉で字までわかったの?」


「……その質問は受け付けられない」

 疑問は跳ねつけられた。


「とにかく中二階の学園にようこそ! キミは勇者候補としてこの世界に召喚されたんだよ。我々の力でね」

 六人の中で一際、背の高い金髪の少女が、凛とした声で晶に告げた。


「い、異世界って何ですか?」

 晶は目が回りそうなほど、キョロキョロとしながら訪ねた。


「中二階の異世界さ。様々な異世界を繋ぎ、中継点となるここはまさに、中二階! そして様々な世界から勇者候補の女の子を集め、教育して立派なレディとして送り出す学園だけの学園のための学園の世界!」

 芝居掛かった仕草で、背の高い少女は簡潔にこの世界を説明した。

 彼女は六人の中では中心人物らしく、不気味な少女ですら背の高い少女に場を譲って後ろに下がる。


「さて、とびきり可愛いリトルレディ……。天使の様な君は、いったいどんな素敵なレディになるかな?」

 背の高い少女は、晶に左手を差し出した。手を取って立たせると、ぐっと腰に腕を回して晶を抱き寄せる。


「やっ! ……あの待ってください! ボク、男の子! 男です!」

 男です。

 男の子です。

 ボク、オトコノコ……


 必死な晶の呼び掛けが、薄暗い部屋に木霊した。



この作品は【中二階の魔王様 (裏)】(http://ncode.syosetu.com/n2408bg/)のライトサイドストーリーです。

裏の名の通り、そちらはダークストーリーとなってますので観覧には注意してください

こちらはハッピーハッピーなのでご安心を


次回より「中二階メザニーン」の世界システムの説明になります。

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