第六話 2つの世界
憂は稀吹をそっと抱きしめた。
「ごめん。私が悪いの。でも、もう救ってあげる。この理不尽な世界から開放してあげるから。必ず、幸せになろう。」
これが私の正直な気持ちだ。
なにが彼にとっての幸せかは、解らない。でも、これだけは言える。
『この状況は彼を、両方の稀吹を傷つけているだけだってコト。』
今日、私は帰る。
本当の稀吹が待つあの世界。
私の本当の家族へ。
憂は池に飛び込んだ。すると世界が一瞬揺らぎ、意識を失った。
冷たい。
ここはどこ?
だれか、だれか来て。
…誰?
とっても暖かい。
「…ん。ここは。」
大量の光で目がかすむ。
「憂ちゃん!」
久しぶりに見るお母さんはなんだか震えている。
「お母さ…。」
よかった。私戻ってこれたんだ。
「稀吹君が必死に探してくれたのよ。なんだってあんな所にいたのかしら。」
「あんな、所?」
「池の中に半分だけ漬かって意識を失ってたのよ?」
(あぁ、それで冷たかったのか。じゃぁ、あのぬくもりは誰の?)
「稀吹君が運んでくれたのよ。」
(稀吹が…)
「私…もう少し寝ていい?」
お母さんは「そうね」とそれだけを言うと部屋を後にした。
憂は目を閉じて、深呼吸をした。
そして再び目を開けると男の名を呼んだ。
「ツクヨミ。いるなら出てきて。」
「なぜ解った?」
ツクヨミは憂の目の前の床を歪めて現れた。
「なんとなく。ツクヨミ…私はあの世界を、稀吹を助けたい。私はどうすればいい?」
憂はツクヨミがふっと笑みを漏らしたのを不思議そうに見ていた。
「皆、姉さんの予言したとおりだな。稀吹も、姫君も。」
ツクヨミは自分の姉、アマテラスの言葉を思い返した。




