第四話 神隠し
宿題でもしようかと机に向かったちょうどその時突然、憂の母親から電話があった。
久しぶりに聞いた憂の母親の声は微かに震えていて切羽詰ったように慌てていた。
「…?」
俺は用件を聞くまで睡魔に襲われ、欠伸までしている始末だった。
「稀吹君。憂が、憂が帰ってこないのよ。昨日の夜にちょっと散歩してくるっと出て行ったきり…。」
その言葉を聞いて稀吹は一気に目が覚めた。
そしていてもたってもいられなくなった。
憂の事が心配で仕方なかった。
「おばさん。俺、捜してきます。」
稀吹はそれだけを言って家を飛び出した。
憂。憂。憂。
どうか無事でいてくれ。
憂は昔からの優等生で、今まで無断で家を開けることなど一度も無かった。…なのに。
「憂…。」
アテもなく走り続ける稀吹の頭に不意に1人の男の顔が浮んだ。
不気味なまでに恐ろしいあの男の存在。
稀吹は男の名を呼んだ。
「ツクヨミ。居るんだろう。憂の居場所を教えてくれ。」
すると急に道路が揺らめき、ツクヨミが姿を現した。
「君の姫君は神隠しにあった。そう思えばいい。」
ツクヨミは表情1つ変えずにいった。
稀吹はツクヨミに掴みかかって言った。
「憂には手を出すな。」
稀吹は今のもめの前の男を殺してしまうのではないかというぐらいの形相でツクヨミを睨み付けた。
「僕はなにもしていない。あそこに行くことを望んだのは彼女自身だしあの世界を作ることを望んだのは稀吹。君自身だよ。」
「俺が望んだ、あの世界…。憂はそこに居るんだな…。」
稀吹はもうなにも言わなかった。
何も、言えなかった。




