第三章 満月の夜
「あなたは誰なの?」
憂は自分の心を見透かされているコトに腹を立てていた。
「さっきも言ったけど、僕はツクヨミだよ。太陽神アマテラスの弟。僕は月神のツクヨミ。君も日本神話くらい聞いたことがあるだろう?」
憂はもう何も言わなかった。
そんな憂いを見てツクヨミはまたふっと不気味な微笑みを漏らす。
「昔の稀吹を取り戻したいと思うかい?」
憂は少し思いとどまったが、やがて頷いた。
「満月の夜、月氏神社の月鏡の池に飛び込むといい。そこが月の都への入り口だよ。人間とは実に脆い生き物だね。優しさも言葉がなければ不安になる。でも言葉すらあれば安心する。たとえばそれが偽りだったとしても。」
それだけをいうとツクヨミは一瞬ふわりと中に舞い、その姿を消した。
「満月…明日か。」
憂は決心していた。
例え稀吹が元に戻ることを望まなかったとしても、きっと昔の稀吹を取り戻してみせる。
次の日、憂は月鏡の池に飛び込んだ。
すると、急に視界がぼやけ、憂は意識を失った。
「憂?」
誰かに呼ばれて目を開くとそこには懐かしい人物がいた。
「ん…稀、吹?なんでこんな所に…。」
「憂が事故にあったって聞いて急いできたんだ。よかったよ。なんともなくて」
なんで?だって事故にあったのは私じゃない。事故にあったのは稀吹のほうなのに…。
ニコニコと笑う稀吹をじっと見て憂は違和感を覚えた。ここはドコなの?私はここを知っている。稀吹が事故った所を目撃して、救急車に一緒に乗って来た、病院。
だけど、ココは何かがおかしい。
私と稀吹の関係。
事故ったはずの稀吹が元気で私がベッドによこたわっているこの状況。
ここは私達の世界じゃない。
ツクヨミが言っていた異世界、稀吹が私の為に創った作り物の世界。
『月の都』
私はこの作り物の世界を元の世界の戻さなきゃいけない気がする。




