巡る世界と我が家の食料事情。
この光景は和む。
見もしないテレビを付けてソファーに寝そべっている俺が眺めているのは、姉妹の如く二人並んで料理の試行錯誤を繰り広げている真っ最中の幽璃と晶だ。
謎の物体(宇宙から降ってきた謎の物質とでも言って博物館に売りさばくくらいの用途しかない)を商業ペースで量産しているところと言い換えてもいい。
「あれさえ無ければなぁ」
買い溜めしていたはずの卵の量と反比例して謎の物体が量産されていく様は地獄絵図だ。何故か使った卵の量と謎の物体の量がイコールで繋がらない。黒魔術でも使うとああなるのだろうか。
あれは家庭ごみとして処理できるのだろうかと一抹の不安を抱きながら横目で地面に突っ伏している竜二を見やる。まだ後遺症が残っているのか口から魂を吐き出しそうな勢いで大口を開けて燃え尽きている。立つんだジョー! などと叫ぶ気も起きず、やはりぼんやりと眺めるだけに止めた。
しかし、この犠牲者達はこの家に泊まっていく勢いで馴染んでいるが(どちらかというと一方だけ)本当に泊まっていく気なんだろうか。
「きょー、口開けて」
言われた通りに開けてみる。瞬間、口の中に異物が進入を試みる。無血開城で完全降伏。というか晶はあの距離から放り投げたんだろうか。しかも菜箸で……。その特技を何か他のことに生かせれば少しは幸せになるんじゃないだろうか。例えば、そうだな……菜箸遠投選手権とか。本当にあるかは定かではない。
そして遅ればせながら咀嚼してみる。あ、普通にうまい。あくまで普通に。
「……で、原因は?」
「知識不足、かな。醤油とかソースとかを片っ端から混ぜて謎の調味料を製造してた」
「どうしてそうなった」
我が妹はどうしてこうなったんだ。せめて知識を集めさせる為に本でも買い与えればよかったのだろうか。でもまあ、普通にうまいからいいや。
こうして、我が家の食料事情(笑)は何とか落ち着きを見せたのだった。
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