キスを
だって楽しいんだもん。
グスタフ・クリムトのDer Kussのように、夢子と誠也は熱烈に愛し合っている。
――――ランチタイム。
「夢子せんぱ~い、それ、どこまで編むんですか?」
お弁当をすでに食べ終えた夢子に向かって笑顔で話しかける、オフィスの後輩である京子。彼女もすでに買ってきた総菜パンを食べ終わり、来たる花の季節を思わせる本日の陽気の中、会社の敷地内にあるベンチに腰かけている。
しかし2月の水色した空が気まぐれに吹かせる風はまだ冷たい。二人とも着込んでいる。社内は暖房で暑いぐらいだが。
夢子は春色マフラーを編み続けている。それは、夢子が今いる東京から故郷の広島まで届くぐらいの長さになりそう。そんな勢いでコツコツと編み進める夢子。
「ンフフ、京子ちゃん、お月様に届くまでだよ?」
「え……? もー! 先輩って、言う事がいっつも可愛い! アハ」
夢子は、棒針を入れた編み目から目を離さないまま微笑んだ。指も器用に動かし続けている。2本のミニチュアステッキを操る魔術師のようだ。
京子は、夢子の繰り広げる演舞とも呼びたくなるような情熱にくぎ付けになり見入っている。
――――昼休憩の終わりを告げるチャイムが鳴った。
*
「夢子? あのマフラー、どこまで編むんだい? 凄く長い」
愛を交換し合ったあとのベッドの上で、夢子に尋ねる誠也。
「ンー……宇宙の果てまでよ。カップルマフラー。誠也とあたし、一緒に巻くの」
「そうなんだ」
誠也は夢子が宇宙の縁から落っこちないように強く抱きしめた。
「誠也とあたしが離れている時も温もりで繋がっていられる……」
夢子は誠也の胸に頬をペタンとくっつけ離さない。
「夢子? オレ達が離れてマフラーが伸びている時……交通事故が起きそうだけど? マフラーに車や自転車・人が引っかからないのかい? 大丈夫なの」
まるで娘をあやす父親のように誠也が言う。
「うん、素敵な魔法がかかっているから大丈夫なの。踏んづけられる時も、強い魔法がかかっている。平気よ」
「そうなんだね。うん、わかった。二人でおしゃれする日が楽しみだよ!」
程よくふんわりとした編み目、ピンクの毛糸の手触り。
愛を込めて……。愛を込めて。
Der Kussの絵画が妬くぐらいHotだから、夢子と誠也が見上げれば、真冬に桜が咲き乱れる。
陽だまりにいる二人、マフラーをすれば熱すぎるかも知れないね!
冬は旅支度の季節。お花が咲くのはもうすぐだよ。
みなさま、お風邪など召されませんように。そして、やって来るフワフワの季節を楽しみに待っていましょう!




