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ミニマルライフストーリーvol.1 ~囲碁をこよなく愛する人生

作者:


 主人公:純一

 33歳の独身男性

 好きなことは囲碁

 囲碁をこよなく愛している

 目標は、プレーヤーとして今よりも成長し、囲碁業界を盛り上げること

 


挿絵(By みてみん)





 自分の生活は、ただただ毎日囲碁を打つこと。



 そんな人生を残りの人生に捧げたいと思うほど、囲碁が大好きだ。



 きっかけは、小学生のころに「ヒカルの碁」をテレビアニメで観たこと。



 しかし、当時は純粋にアニメを楽しんでいただけで、囲碁のやり方は全くわからなかった。



 中学・高校の時は、水泳部に所属。



 囲碁を始めたのは、大学の頃である。



 ちょうど大学に入るタイミングで、ヒカルの碁を再びアニメで観たことがきっかけだ。



 大学では囲碁・将棋のサークルに所属し、先輩方にやり方を教わった。



 それからは囲碁に没頭するようになり、来る日も来る日も囲碁をする生活を送っていた。



 当時の先輩方は強かった。



 対局して一度も勝てた経験がない。



 自分はとても弱かったが、それでも碁を打ってる時は非常に楽しかった。



 ルールを覚えて間もないのだから仕方がないと割り切り、悔しい気持ちを抱えつつも日々碁に勤しんでいた。



 オンライン碁に打ち込んでいて、近辺にある碁会所に通って大人の方々と打ったりもしていた。



 それから月日が経ち、今では碁を打ち、囲碁サロンを運営する生活を送っている。







 なぜこのような生活を送るようになったのか。



 囲碁が大好きだからという理由は、確かに理にかなっている。



 しかし、もともと意図して、このような生活を送っていたわけではない。



 かつてはほかの人たちと同じように、就活をして、就職もした経験がある。




 結論としては、自分が社会不適合者だからだ。




 自分は大学2年間、コンビニでアルバイトをしていたが、全く使い物にならなかった。



 仕事を覚えるのが人一倍遅く、店長からも周りの従業員からもよく叱られていた。



 バイトがある日が嫌すぎて、逃げるように碁を打っていたのだ。



 それから就活の時期が近づいた。



 本音としては就活や就職もしたくないと思っていた。



 そんなことをするくらいなら囲碁を打ちたいとばかりに。



 しかし、当時属していたゼミの教授に、進路先を伝えなければならなかったのだ。



 なのでやむを得ず、就活だけは頑張っていた。



 就活の際にもほぼ上手くいかなかったが、一社だけ自分をとってくれた会社があった。



 インテリアの会社で、販売メインのお仕事だ。



 なのでそこでの就職が決まり、卒業してその地へ引っ越した。



 しかし、いざ働き始めると、さらに仕事の辛さを味わった。



 始まって1か月後には大きなうつ病になっていたのだ。



 ほかの人は、言われたことをすぐに理解して行動できるのに対し、自分は理解するのが遅い。



 理解力のなさに苦しみ、周囲の人からも孤立するようになった。



 また自分が担当していた部門では、なかなか商品を売ることができなかった。



 最低限のノルマさえ達成できずに叱咤激励され続けてきた。



 〇にたいという気持ちが日々強く、大好きだった囲碁も打てなくなるほどのうつ病を患っていた。



 明日が来るのが怖い。



 夜も眠れないほど、明日におびえながら過ごしていた。



 親に電話し、自分の気持ちをすべて正直に話して不安を解消しようとしていた。




 自分にとって、まさに人生のどん底を味わったのだ。




 しかし、初めの頃は新卒ですぐに仕事を辞めることに抵抗感があった。



 それでもあまりのしんどさのあまり、親にも事情を説明し、4か月後には仕事を辞めることができた。



 解放感がとてつもなく大きい。



 出勤最後の日を終えた後は、今まで生きてきて一番清々しい気持ちだった。




 そして22歳という若さで自分は決心したのだ。



 今後2度と正社員はやらないということを。




 それからだんだんと気持ちが楽になり、囲碁をまた一人で始めるようになった。



 今の自分の環境では友達がいないどころか、囲碁ができる人が周りにいない。



 大学卒業後に、自分が職場のある県外の地域へ引っ越したからだ。



 しかし、しばらく月日が経つと、生活が苦しくなっていき、金銭的な不安を抱えるようになった。



 当然である。



 仕事を辞めてから、何もしていないので貯蓄はすぐに破綻し、何より家賃が高かったからだ。



 もう限界だというタイミングで、わりと都会的な立地で、家賃の安いアパートへと引っ越した。



 駅近で、周りにスーパーやコンビニ、飲食などもたくさんあって、何一つ不便はない。



 これまでは家賃が7万円だったのに対し、今では家賃2万円。



 とてもコスパのいい物件である。



 それからは生活費に対する不安は大きく減り、囲碁一筋のミニマルライフへと傾いていった。






 そう、これが今の生活にいたる基盤になっている。




 引っ越しの際には、何もかもを手放してきた。



 物件に備え付けの小型冷蔵庫がたまたまあったので、冷蔵庫は必要はない。



 自分には入居と退去費用を払うのが精いっぱいで、引っ越し業者に頼むお金はなかった。



 なので、大型家電以外は持っていくものはすべて段ボールに収まるサイズと決めていた。



 結局、極限までモノの数を減らし、洗濯機と段ボールを3つを配達し、あとはリュックサックとスーツケースだけで引っ越したのだ。



 引っ越し先も非常に狭い物件だったため、それだけの量で十分である。



 部屋の間取りは12㎡。



 ユニットバスで洗濯機置き場は室内にある。



 そしてロフト付きの物件である。



 クローゼットと靴箱はついていない。



 しかし、衣類に関しては断捨離してきているので、ほとんどない。



 その季節に着る服だけ洗濯機の上に突っ張り棒を掛けて、そこに吊るしている。



 その他の衣類は圧縮袋に入れて、ロフトの奥にある押し入れに閉まってある。



 布団は処分してきたため、ネットで寝袋を購入した。



 ロフトが、絨毯のようになっているため、そこで寝袋を敷いて寝ている。



 家電は、洗濯機、電子レンジ、そして備え付け冷蔵庫。



 家具は、碁盤を置いたり、食事をするための折りたたみ机のみである。



 テレビ、デスク・チェア、パソコン、本棚、Wi-Fiルーターといったモノもいっさいない。



 電子機器はスマホのみ。



 なので部屋は狭くとも、部屋の中はスッキリしていて、非常に簡素である。




 引っ越してから、生活費を稼がないといけないため、すぐにコンビニでのバイトを探した。



 周りにコンビニはたくさんあるため、早朝の時間帯で働ける店に応募した。



 なぜなら、もう二度と正社員を経験したくないと強く思ったのと、シフト調整や時間の融通が利きやすいからだ。



 大学の時にコンビニで働いた経験があったため、すぐに採用され、1週間後には働けることになった。




 大学の頃に経験があったため、作業内容はほとんど同じで安心した。



 大きく異なる点としては、人間関係だ。



 大学時代は非常につらい思いをしていたが、今回の職場はみんないい人である。



 店長も気さくな人で、周りの従業員も年が近い人が多くて、話しやすい人ばかりだ。



 もう一つ嬉しい点として、廃棄がもらえることだ。



 ただでさえ、お金がない生活をしているので、廃棄があることで食費が非常に浮いている。



 飲み物代くらいしかかからなくなった。



 食費でいうと毎月5000円程度で済んでいる。



 誰かとご飯に行くこともほとんどなく、バイト終わりは家に引きこもり、ずっとネット碁をしている。



 近くに、碁会所があるため、週に1回通っている。



 そこでも、オープンから閉店まで相手を見つけては、ずっと対局を続けている。



 23歳という若さで、碁会所に来る人はあまりいない。



 周りは高齢者が多く、年齢層が高めである。



 しかし、そんなことはどうでもいいのだ。



 本来は毎日でも通いたいくらいだが、なにせ低収入なのでこれくらいが限界だ。



 今の自分の収入は7.5万円。



 生活保護水準をも下回る収入である。



 普通であれば、金銭面で不安を感じる人は多いと思うが、自分は感じない。



 なぜなら、低収入でも生活が成り立っているからだ



 家賃、光熱費、食費など生活に必要なコストは、5万円程度。



 なので少しの貯金もできている。



 自分の場合、それでいい。



 自分にとって一番大切なものを確信しているからだ。



 それは、囲碁が大好きだということだ。



 囲碁さえあればそれでいい。



 囲碁さえ打てる喜びがあれば、それでいいのだ。



 他は何もいらない。



 自分には物欲やぜいたくな暮らしには全く興味がない。



 囲碁以外の娯楽にお金を使うことはない。



 いざ、金欠になった時は、シフトを増やすことも簡単にできる。



 その筋はずっと一貫している。



 お金よりも、彼女とデートよりも、3度の飯よりも囲碁なのだ。



 アニメ「三月のライオン」に出てくる主人公の桐山零とある種似ている。




 一日の時間の使い方もとてもシンプルだ。



 バイトがあるときは、3時間働いた後、家でご飯を食べ、そのあとはひたすらオンライン碁を打ったり、碁盤を机に置いて、ユーチューブや本を参考に碁を並べている。



 バイトがないときも、朝から晩まで碁をやってるか、近くに図書館があるため、そこで本を読んだり、碁の本を借りて参考にしたりしている。



 週末だけは、毎回碁会所に通っている。



 そういった生活が5年以上も続いた。



 頑張っているという感覚もあまりなく、自然体でやっているのだ。



 これだけ打ってると、プロレベルにはほど遠いが、かなりのレベルにまで実力が達し、碁会所でも負けることがほとんどなくなった。



 碁で成長している様子を自分でも実感できて、自分にとってはその日々が豊かなものだった。



 引っ越して2年後には少し足を延ばして、別の碁会所にも顔を出すようになった。



 お金はずいぶんと貯まっている。



 自転車を購入し、2駅先まで通っている。



 そこには普段通っている碁会所よりも、もっと規模が大きい囲碁サロンがあるのだ。



 室内は非常にきれいで、環境も整っている。



 運営もしっかりされていて、オーナーも気さくな方だ。



 いろんな地域から囲碁を打つために来ている人がたくさんいる。



 また週に2回、有名な先生が碁の指導も行っている。



 ここで囲碁を打つ楽しみをさらに見出し、よく通うようになった。



 ここでも、周りは年配の方が多い。



 しかし、自分よりも年上だが、30歳前後の若い人もちらほらいる。



 いろんな方と一日中対局し、ここでも勝ち越すことが多かった。



 だが、自分よりも強い人はまだまだたくさんいる。



 対局のやりがいを非常に感じていた。



 気がつけば、今まで通っていた近くの碁会所からは遠ざかり、ほぼ毎日サロンまで足を運ぶようになった。



 悔しかった対局は、何度も棋譜を並べたりと、ますます熱中するようになった。



 サロンのオーナーの方とも長い付き合いとなり、常連のお客さんとも普通に話す仲になっていった。






 それから3年近く経過したある日、オーナーがサロンを開いてみないかと、自分に声を掛けてくれた。



 それほど、自分が囲碁に熱心な様子をずっと見てきたからだ。




 しかし現在の貯金は、100万円程度。



 こんな働き方でも、かなり貯まっている方ではあるが、お店を開業するレベルの貯金では全くない。



 囲碁サロンを開業するにはだいたい1000万円くらい必要だと言われている。



 それに興味はあったが、お店の開き方が全くわからない。



 しかし、オーナーは優しくて、自分と同様囲碁を愛している方であった。



 なのでオーナーのいるサロンで、アルバイトをしてみてはどうかと提案をされた。



 そこで、オーナーの仕事は具体的にどういうことをするのか、自分で働きながら学んでいけばいいと。



 それに加え、いつでも無料で使用してもかまわないとまで言われた。



 とてもありがたいお話だと思った。



 こんな提案をしてくれることには本当に感謝しかない。




 ただ、一つ懸念点がある。



 それは、そこできちんと働けるかどうかだ。



 毎回、職場ではいろいろと苦労している。



 なので叱咤されたり、ここのサロンを嫌いになったりしないだろうか、といった不安はある。



 さんざん悩んだが、もう二度と訪れないような機会だと思ったので、ぜひ働かせてほしいと引き受けた。



 肩書はアルバイトだ。



 いざ働いてみると、やることはそれほど難しくない。



 コンビニと掛け持ちしながら、週3〜4で働いている。



 キッチン業務、雑務、会計、対局案内が主な仕事だ。



 オーナーや他のスタッフもみんな優しく教えてくれて、仕事環境も整っている。



 手が空いた時は、お話したりもするが、みんなの対局を見て回るのが特に楽しい。



 ここで働けて本当によかった。



 今では、Wワークなので、少し負担な部分もあるが、それほど大きなストレスはない。



 掛け持ちの仕事を始めてから、金銭的なゆとりも大きくなった。



 それでも自分の生活の中心は囲碁にあることに変わりはないので、無駄な出費はほとんどない。



 働いて2年が経つと、貯金は300万以上は貯まっていた。



 囲碁サロンを運営する上での、仕事内容はだいたい理解できた。




 しかし、臆病な性格というのもあり、自分でサロンを開こうとは思わない。



 今自分がやりたいことは、囲碁を打つこともそうだが、サロンで何か新しい試みを取り入れることだ。



 働いていく中で、こんなシステムがあれば、もっと面白くなりそうと思うことがたくさん出てきたからだ。



 なのでオーナーにこんなことを取り入れてみてはどうだろうかといろんな提案をしてみた。



 そうすると、自分がやりたいと思ったことを試してみてもいいと許可をもらえたのだ。



 まず自分が取り入れたことは、3か月に一度、決まった時間にトーナメント戦とリーグ戦をそれぞれ開催すること。



 サロン内でチャンピオンシップを開催することだ。



 優勝者は、写真や戦績、棋譜がホームページやSNSに載せてもらえる。



 ささやかだが、優勝賞品ももらえる。



 そして半年に一度、もう一段階大きな大会を用意し、自分たちのサロンだけでなく、囲碁業界そのものをさらに盛り上げること。 



 当時のヒカルの碁のように、囲碁ブームの風を吹かせ、みんなが熱くなるような舞台を用意したい。



 そのために普段からSNSを使って、囲碁をもっとたくさんの人に普及させ、大々的にアピールすることだ。



 このような自分の提案を、オーナーは快く受け入れてもらい、自分の情熱で囲碁業界を盛り上げて見せてくれと後押ししてくれたのだ。



 この日から、自分の妄想がたくさん働くようになり人生はより豊かになっていった。



 ホームページのブログを自分が書いたり、SNSとリンクさせて囲碁の大会や、囲碁サロンの様子を積極的に投稿した。



 しかし、自分は情弱なので、SNSの使い方など全くわからない。



 それでも、成功させたい目的のために、YouTubeやネットでいろいろと調べながら準備を進めた。



 ”挑戦者たちよ、全員この場に集え。ナンバーワンをつかみ取れ”



 というキャッチフレーズを謳い、大会を大々的にアピールした。



 だんだんと、いろんな地域に伝わるようになり、常連のお客だけでなく、遠方から来店される方も増えてきた。



 サロンの席が埋まりやすくなり、土日においては特に案内が難しくなった。



 なので、スペースを少し狭めて、碁盤を増やすようになった。



 本来であれば、大会は自分も参加したいが、主催というのもあり、今回は断念した。



 参加よりも、今回ばかりはなんとしても大会を成功させたい。



 オーナーのサロンはもちろん、囲碁業界をもっと盛り上げて、たくさんの人に囲碁を認知してもらいたい。



 そういった気持ちのほうが強かったのだ。



 大会の準備は着々と進み、いざ募集をかけると30組の枠は一週間足らずで埋まった。



 こればかりはとても嬉しかった。



 しかし、安心もまだ早い。



 当日のドタキャンや欠席の場合にも備えて、補欠の枠もたくさん準備した。



 できるだけの準備はすべてやり遂げた。



 あとは、開催日を待つだけだ。






 そして当日、大会が開かれた。



 実際に来られた数は28組だった。



 まずまずの数だ。



 自分としては満足の結果である。



 集まった参加者の方は、高齢者はもちろん多いが、大学生などの若い人たちが何人もいた。



 事情を尋ねたところ、大学で囲碁将棋サークルに所属している人たちだ。



 今回の大会を知って、遠方から電車で来ている。



 学生含め、女性も数人いた。



 また、初級から上級レベルまでさまざまな層がいた。



 もちろん負けた人も、他の方の対局を見てもよい。



 優勝したのは、某大学生の男の子だった。



 今回インタビューしてみたが、とても笑顔で満足した様子だった。



 また次に機会があればぜひ参加したいとのことだ。



 主催者側としても嬉しい。



 オーナーもよくやったと、非常に喜んでくれた。



 自分は、オーナーのその様子を見れたことが一番嬉しかった。



 普段からお世話になっているオーナーの役に立てている。



 こういった形で、囲碁で恩返しができているのは自分にとっては非常に幸せなことだ。




 ただ、これで終わりではない。



 今回の参加者の感想を聞き、意見を取り入れながら今後も改善していった。



 今度は、やはり自分もプレーヤーとして参加したい。



 プレーヤーとしての囲碁はもちろん大好きだが、このように自分で企画してコミュニティを運営することも好きなのだとわかった。



 それからも新しい試みとして、初心者のための囲碁の会も積極的に開催し、ネットやお店の前でも宣伝するようになった。



 自分含め、スタッフの手が空いているときは、無料で指導碁をするといったサービスだ。



 サービスといっても、自分にとっては天然な生き方なのだ。



 お金ではなく、純粋に囲碁を楽しんでくれるプレーヤーを増やしていきたいという力強い想いからである。



 他にも、初心者コーナーを別途で作り、自分が影響を受けた、ヒカルの碁の漫画を全巻置き、アニメも流すといったことも取り入れた。



 それでもプレーヤーを増やすことは簡単ではない。



 非常に時間がかかる。



 それでも焦ることは全くない。



 自分が今できることだけをやっているだけだ。



 そしてみんながマナーを守って気持ちよく対局できる場所を心がけ、みんなが利用しやすい清潔感のあるお店へと仕立てていった。



 それから数年が経ち、サロンは地域においては非常に有名な碁会所となった。



 初心者の方から、上級者まで定期的に集う場所となった。




 しかしここ最近、オーナーの体調がすぐれない。



 普段から煙草をよく吸っていたのも原因かもしれないが、肺炎になって何度も入院を繰り返している。



 なにせ年齢は72歳だ。



 当時は60代半ばだったので元気だったが、今では運営をするのにも非常に苦労している。



 体調がすぐれないため、ここ最近は自分がオーナーに代わってお店を運営している。



 ある時、オーナーからもしオーナーが亡くなったら、お店を引き継いでもらえないかという提案をいただいた。



 自分は、迷うことなく頷いた。



 オーナーが大事にしてきたサロンを自分はできる限り、守っていきたい。



 それから長らく続けていたコンビニのバイトを辞めて、サロンのみの仕事にシフトした。



 オーナーの代わりというのもあり、当然労働時間も増える。



 プレーヤーとしても楽しみたいので、これだけでも手一杯だ。



 囲碁の楽しさを多くの人に広めながら、自分もいろんな人たちと打ってプレーヤーとしても成長したい。



 今度は、プレーヤーとして自分の大会で優勝を目指すのが目標だ。



 しかし、まだまだ道のりはほど遠い。



 大会としての自己記録はベスト8だ。



 大会を開催してから3年経つが、ますます参加者のレベルが高くなっている。



 アマチュアの世界にも、強敵が遍く存在しているのだ。



 それでも、今後も囲碁業界に貢献しながら、プレーヤーとしてもっと成長していきたい。



 それが人生の目的であり、人生の楽しみでもある。


 

 今、自分は33歳。



 今住んでる町に引っ越して以来、自分の生活は囲碁中心であることには何ら変わりはない。



 アルバイト生活だけでも、今では貯金は600万以上ある。



 相変わらず、無駄な出費は今でもほとんどなく、毎月の生活費は7万程度。



 コンビニのバイトを辞めた今では、食費はかかっている。



 加えて、オーナーや他のスタッフ、常連で仲良くなったプレーヤーの方や、コンビニで仲良くなった同僚たちと、たまにご飯に行くことが増えたくらいだ。



 囲碁サロンを運営して、囲碁を打つだけといった非常にシンプルなライフスタイルだ。



 天然質だが、こんなシンプルな生活をより極めていく日々に小さな幸せを感じている。

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