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伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
星屑の日
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04.銃と弾丸

 

次に向かったのはミリタリーショップとかサバゲーショップとか言われる場所だ。

 

昔は子供も来るようなショッピングモールにもこんな物騒な店があったのか。

そういう私にアイは「モデルガンですので、実弾はありません」と言った。

 

成程。まあ、本物だったところで私もレオンもとっくに成人しているはずの年齢だから問題はないのだが。レオンは確か今年で二十一歳。私は、分からない。

 

「おおーかっけぇ」

 

男の血が騒ぐのだろうか。レオンはいつになくゴキゲンである。

  

そうして私たちは銃を探した。


たとえモデルガンだとしても、それだけで盗賊などはしっぽを巻いて逃げてくれる。この時代、警察なんてものはいない。自分の身は、自分で守る。そのためには女である私も自分を強く見せるための武器が必要だった。昔は女が喧嘩だの銃だのらしくないといわれたと本で読んだことがある。が、今では老若男女問わず武器が使えなければ邪魔な人間とされる。

 

故に、ここで武器を確保せねば。

 

「どれがいいだろうか」

 

商品棚を探しまくる。いろいろと手に取るが、どれがいいのか良くわからない。

 

「隣に、射撃スペースがございます。そちらでお試しをどうぞ」

 

射撃スペース。これまた物騒な。

 

しかし使わない手はないだろう。

 

「行くぞ、レオン」

 

私は近くにあったなんか強そうな銃を選び、向かった。

 

「その銃は、かつて最強と謳われた銃です。【mad000】。通称【Ⅿゼロ】。光を反射させて黒く光るその様はまるで死神の鎌のようだと言われ、戦場で大いに活躍しました。この銃の最大の特徴は、使用できる銃弾が二種類あるということです。

一つは一般的なマシンガン用の銃弾。そして、もう一つは【Ⅿゼロ】専用の銃弾である【Ⅿ666弾】です。普通、銃弾とは口径十二・七ミリ以下のものを言います。しかし、この銃弾は十三・八ミリ。そのうえ、発射とともに薬莢に込められた多数の細かい鉛の弾が幾つもに細かく分かれるため一発で相手の多くの部位を攻撃できるというものです。かつてアメリア合衆国にて開発をされました。しかし、あまりの殺傷力の高さゆえにアメリア合衆国軍以外は所持を禁じられました。また、生産数が少なかったため、幻の銃としても噂されたものです」

 

アイが説明してくれた。てか、詳しいな。

 

そういうと、

「プログラムされていますので」

と言われてしまった。

 

ともかく、撃ってみようかな。

 

「一応聞くが、ちゃんとモデルガンだよな」

 

「はい。この店舗は本物は取り扱っておりません」

 

よし。

 

「ふぅ」

 

深呼吸をして、指に力を籠める。そうして、トリガーにかけた指を目いっぱい引いて。


 

───バババババババッ!


 

「ってほんものやないかい!」

 

おっと思わず別言語が。

 

「ははっはっは! おもろ! 死ぬ! おなか痛い」

 

「いや驚くじゃんか! 普通!」

 

そう言って顔が引きつる私と、腹を抱えて笑うレオンの会話にアイが入ってくる。

 

「お客様、どうかされましたか」


「いやどうもこうもこれ本物じゃん」

 

はて、といった顔で。いや顔と言っていいのかわからないけども、そんな感じでアイは首をかしげて見せる。


「申し訳ございません。何らかの手違いでしょうか」

 

アイが心底申し訳なさそうに言うものだから、こちらとしても申し訳なさが勝る。


「いやまあ、無敵の銃が本物だから嬉しいけどさ」


「昔、誰かが隠したのでしょうか。銃を隠すなら銃の中、と。恐らく持ち主は亡くなり、隠し場所に放置されたままだったのでしょう。ウイルスに感染したか、あるいはこのような銃を所有しているのですから裏社会の方に追われていたのかと」

 

なるほど。合点がいった。

文明が崩壊したころの世界は、あらゆる場所で武装した人々が世界を牛耳っていたとか言うしな。

 

「なあ、銃があるなら銃弾もあるんじゃね?」

 

後ろからレオンが言った。その一言で銃弾探しを始める。これからの旅路、武器はどれだけあっても困らない。せっかく手に入れたこの銃を手放すことはない。

 

私たちは射撃スペースを出ると、売り場に戻った。

 

【Ⅿゼロ】の隠されていた場所へ行く。すると、その場所の横の棚の最奥に銃弾が隠されていた。しかも、【Ⅿ666弾】まで。

 

一か所にすべてを置くのは不用心すぎる。別の場所にもあるのではないか。

 

そう思ってもう少し探すと、レオンが「あったぞぉ」と声を上げた。

 

マシンガン用の銃弾が三百発。【Ⅿ666弾】が二百五十発ほど。

 

荷物は増えるが、嬉しい重さだ。

 

「意外と本物と偽物ってわかんねぇんだな」

 

「分かるわけあるか。見たこともなかったんだぞ」

 

「そういうもんかね」

 

「そういうもんだ」

 

ガンショップを出ると、再び通路を歩き続ける。左右には多くの店が並んでいる。服屋、靴屋、アクセサリー屋、映画館にCDショップ。なんでもござれだ。

 

「何処か見たい店はないか?」

 

「んーそうだなぁ」

 

顎に手を当てたレオンは、少しうなった。そしてとある店に視線を向けて、口を開いた。CDショップだ。私の予想ではアクセサリー屋辺りだったのだが。

 

「昔、好きだった曲がある」


──なんで過去形なのかは、俺にも分からない。


「曲名は分からない。村の奴らが、よく歌っていた」


──村の奴らは、今でも夢に出てくる。


「歌詞はよく分からねえけど、メロディーはちゃんと覚えてる」


寄って行くか。そう言った相棒に、俺は小さくうなずいた。


「私」と「レオン」の視点を少し行き来しますね。

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