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伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
星屑の日
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01.旅の途中


「おい、本当にこの道であってるのか?」

 

「失礼な。あっているとも」

 

「そう言ってこの前間違えただろ」


「この前のやつはお前が用意した地図自体が間違っていただろう。よって私のミスではない。ほら、そこにあるビルはこの地図に書いてあるのと同じだ」

 

「へーへー」と言いながら私の三歩後ろを歩く男の名はレオン。少し黒髪の混じった金髪は砂ぼこりですっかり汚れているが、本来は美しい色だ。深緑のジャケットに灰色のTシャツ、紺のジーンズで背中にはリュックを背負い、両手には銃を一丁ずつ持っている。

 

「あ、あれじゃねえの?」

 

急にレオンが立ち止まるから何かと思えばどうやら目的地に着いたようだ。

 

手元の地図と見比べる。右手に小さな公園があり、大通り沿いの建物であることを確認する。三階建ての大きなショッピングモールが隣にある。建物は白色で、てっぺんにはかつて鐘がついていた跡がある。

 

この建物だ。

 

「ああ。間違いない」

 

「よっしゃ! ようやく一息つけるぜ。腹減った。ねみぃ。風呂入りたいー。遊びたいー」

 

「お前は欲望が多すぎだ。それに眠いのに遊びたいってなんだよ」

 

「うるさいなーお前が欲なさすぎるんだよ!」

 

「な、私にだってあるさ。そしてそれは現時点では叶っている」

 

レオンがじっと私を見て、どんな願いかと聞く。

 

「私もお前も、二人ともが。《ラファエル》に感染することなくこの旅を終えることだ」

 

「……確かに、一番大事だな」

 

「ああ」

 

少しの沈黙が流れる。

 

「……すまない。暗い話をしたな。行こう」

 

私が歩き出すとレオンは大急ぎで付いてくる。

 

建物へ入り、そして二人して驚いた。

 

「わお」

 

なるほど確かにこれは「わお」である。

 

我々が入った場所の正体は教会。かつて宗教なるものを宣教し、神を崇めた場所。

今ではすっかり古さびているが、それでも天井に描かれた絵は美しく、ステンドグラスから漏れる光は神々しい。古代人の技術の高さを感じる。

 

だが、ここへ来たのは驚くためではない。

 

「レオン、早く部屋を探そう」

 

「お前は感傷に浸る時間をくれないのか」

 

「浸る干渉があるのか」

 

「お前は悪魔か」

 

「それは教会に入ったら怒られそうだな」

 

「あーもー分かりました探せばいいんだろ、探せば!」

 

ぶつくさと文句を言いながら廊下へ向かうレオンの背中を眺める。

 

「私も、探すとしようか」

 

部屋とは、かつて旅人たちに教会が提供した休憩所のようなものである。そこにはベッドもあって、泊まれるようになっているのだとか。

 

それを目当てに我々はここへ来た。

 

ちなみに部屋を見つけた後は隣のショッピングモールへ行く予定だ。

 

「おーい見つけたぞぉ」

 

廊下の向こうからレオンの声がした。


歩いてそちらへ向かうが、なかなかに広い廊下だ。かつてのものがそのまま残されていて、壁に貼られた絵画はすっかり色褪せている。湖か何かを描いたものだったのだろうという推測だけが時代を超えて伝わってくる。

 

一室へ入って、ベッドやら壁やらを見てみる。


「ん。埃を払えばフツーに使えそうだ」

 

「よかった」

 

「それからー」

 

そう言ってレオンは何かをごそごそと取り出して差し出してきた。

 

「机に置かれていた。日記帳だ。ボロボロだし、かなり古いな」

 

これはいい。日記帳は古代人の残した貴重な記録だ。この地域のことやウイルスのことが書いてあるかもしれない。

 

「読もうか」

 

私はレオンから日記帳を受け取ると、朗読を始めた。


全部で10万字ちょっとなので、1話あたり1000〜3000文字くらいで、読みやすい長さで投稿します。冬休み中にのんびりとお読みください。

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