表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
ベルビアの日記
18/35

17.ある男の日記・ウイルスの正体

 

 あれはずっとずっと前で、それでいて近い日のこと。

 

 2089年9月19日

 世界で初めて《インフィニ》が発見された。その後、世界同盟が作られ人々はウイルスを恐れた。

 

 しかし、《インフィニ》が発生してから六年が経った時、研究は成果を現した。やがて《ラファエル》が誕生し、《インフィニ》は無くなった。が、《ラファエル》は人に牙を剝いた。そして二回目の世界同盟が作られることとなった。

 

 リーダーはモニカ・レファレンス様。

 彼女は若くて聡明で有名な方。私の憧れの人。冷静で、優しくて、賢いお方。

 

 私は、彼女の熱心な研究姿に憧れて、この同盟に参加した。終わりなき研究をする同盟に参加しようとする私を、人々は変人を見る目で見ていたがそれでいい。誰にも、理解されなくていい。共感など、そんなものは求めてはいない。

 

 彼女の背中を、追いたくて。

 彼女の力に、なりたくて。

 彼女の隣で、研究をしたくて。

 

 恐れ多いけれど、そう言った思いで溢れていた。

 

 愛でも恋でもない。

 嫉妬でも憎しみでもない。

 嫌悪でも何でもない。

 良くも、悪くも、ない。

 曖昧で我儘な思い。


 本人に伝えれば、引かれてしまうかもしれない。そんな、感情。

 

 ……はぁ。私の話はこれくらいにしなければ。

 

 片道切符の同盟に参加した私は、日々終わりの見えない研究に没頭した。

 

 月日が経ち、レファレンス様が言った。

 

『このままでは、人類は滅びる。けれど、一部の抗体が強い人間は生き残るかもしれない。いつか、未来で。《ラファエル》が消滅したら。その時、人類には賢くて、強くて、リーダーとなる人間が必要だ。そのような人物を未来に残す必要がある。つまりは』


 その時、彼女の表情が陰って見えたのは気のせいだろうか。続けて彼女はこう言った。


『つまりは、コールドスリープするのだ』


 皆、賛成だった。というよりも、ほかに選択肢なんてなかった。そうして第一コールドスリープ組が選出された。各国の大統領や有名な学者、さらには未来で人々の心の支えとなる娯楽も必要であるとされ歌手も選ばれた。また、人類が長年積み上げてきた文化も残さねばならないとされ、世界トップレベルの芸術家たちも選ばれた。


 第一の人々はそういった人が多かったが、第二、第三には一般人も入れることとなっていた。商業、農業、軍隊、運輸。人それぞれに強みがある。民なき国に王はいらない。だから、一般人も必要なのだ。


 けれども、第一コールドスリープの一週間前。事件は発生した。


 《第一研究施設アリア》がラディンという男が率いる犯罪組織アルカトラによって襲撃されたのだ。

 彼らは自らを革命軍と呼び、正しい行いをして人類を救済するのだと言っているが、今回は死者がでた。ラディン本人もレファレンス様によって討たれ、その場にいた一体のAI以外は全滅した。


 施設は使えなくなり、ここ【ヴァルハラ塔】が最重要の研究施設となった。レファレンス様がコールドスリープされたので、研究は私が引き継ぐこととなった。

 

 私は《ラファエル》を滅亡させて、彼女に褒められたかった。認められたかった。よくやったと。お前は、立派なリーダーだと。そう、言われたかった。


 そう思って、彼女がコールドスリープした後も研究に没頭した。ここの施設では、ワクチンを作ることや、ウイルスの解明をメインに研究を行った。


 ウイルスの構造はよくわからなかったが、昔、古代アリアで発生した《ヴィー》と呼ばれる病気に似ていることが分かった。その病気は、古代アリア人が開発した薬によって徐々に力を弱めって言ったことも分かった。


 私はその薬を再現しようと思った。完全には効かなくても、何かわかるかもしれないと、何か効果があるかもしれないと。


 1年後。再現することができた。しかし、あまり《ラファエル》には効かなかった。


 《インフィニ》には、少し効いた。もうすでに《インフィニ》は消滅しているからちゃんとは確認できなかったけれど、《ラファエル》の中にある《インフィニ》に似た構造部分に効いた。まあ、もともと《ラファエル》は《インフィニ》を喰らったものだから、ほぼ間違いないだろう。


 《インフィニ》に効くならば、もっと開発すれば、きっと。そうして、改良を繰り返した。

 

 それが、どんな結末を呼ぶのかも。

 それが、どんな破壊を齎すのかも。

 それが、世界を滅ぼすことも。

 

 何も…………知らずに。

 

 二年が過ぎて、研究は滅亡を呼んだ。気が付いた時にはもう遅くて、手遅れだった。バケモノを、生み出してしまった。世界に放ってしまった。

 

 作ってしまった造ってしまった創ってしまったつくってしまったツクッテしまった、


 どうすれば、いいだろう。


 きっかけは、薬を再現するために治験が必要となったことだ。私はそれを、もう余命わずかの人間で自ら名乗り出たものや死刑宣告を受けた犯罪者たちに受けさせていた。最初は、変化なしという結果が多かった。その後、体調が悪くなることや咳だけがでるなどがあった。


 けれども。


 一人の被験者が突如バケモノのような姿に変わった。目が充血し、力はヒトならざるものとなり、背が高くなり、言葉を理解しなくなって。喚き散らし、短かった爪は長く鋭くなり、髪が長くなって(たてがみ)のようになり、鉄格子の部屋を暴れまわった。結果、取り押さえようとした三人の警備員が死んだ。最期は警備員が銃で射殺した。

 

 これでひと段落ついたと思った。


 なのに。


 一週間もたたないうちに今度は二人がバケモノになった。銃殺で終わった。


 少しずつ、研究に違和感を覚えるものが増えた。


 それでも、今度こそ成功例が生まれると信じて続けた。


 今度は四人がバケモノになった。二人はここで死に、もう二人は門まで逃げたのちに死んだ。すでに六人の警備員が死んでいる。


 それから一か月。ここの地域は立ち入り禁止区域とされた。いつバケモノが出るかも分からないし。よって近隣の店には退いてもらうこととなった。


 私は研究について見直した。


 そして、分かったことがあった。


 それは後で書くとする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ