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伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
絶望の日
17/35

16.贖罪の日記

 

研究塔の中は、不気味な物で溢れていた。


大きな水槽があった。魚用には見えなかった。人間用だろうか。四角いものもあれば筒状のものもあった。形状は数種類どころではなかった。全部割れていた。なんのために使われていたかなど、考えたくもない。


 いくつものテーブルがあった。テーブルは何故だが赤い錆のようなものが付いていたし、お皿は全て割れていた。床に破片が散らばっていて、大変危険だった。


いくつもの部屋が並ぶ廊下があった。入ってみると、職員の部屋だった。無人なのに、かつてのまま残されている。床に散らばった書類には、赤色が付着していた。昼食のソースなんかじゃないだろうということは、嫌と言うほどわかった。

 

 大きなシャンデリアが落ちている広間があった。散らばった破片は地上に落とされた星屑のようだ。二度と明るく灯ることはない。


鉄格子によって仕切られていた小部屋があった。それが無数に並ぶ廊下は不気味な感じがした。トイレなんかも丸見えで、プライベートなどあったもんじゃない。


全ての場所に共通することは一つ。

 

──即ち、窓がない。


全てがコンクリートの壁で覆われていて、太陽光は見られない。明かりがない今、何処もかしこも真っ暗だ。ライトを持っていて良かった。


「でも、特に変わった感じはしないな」

 

レオンがそう呟いた。

 

確かに、水槽や鉄格子と言ったものはあっても、バケモノに結びつくようなものはなかった。無論怪しくはあるが、魚を飼っていたのかもしれないし、鉄格子だって刑務所のようといえばそれまでだろう。

 

そうしてついに最奥の部屋へ。

 

埃塗れの看板には、所長室と書いてある。ここの研究所で一番地位が高い者の部屋だろうか。


入ると、たくさんの本棚が並んでいた。埃を被ったそれらの多くは、難しくてよく読めない。

ブラウンを基調として揃えられたのであろう家具は今ではすっかり汚れて錆びてしまっていたが、かつては高価だったであろうことが伺える。

 

「なんだこりゃ」


レオンがライトを当てた机の上には何枚もの紙が置かれていた。床に散らばった紙もある。おそらくは仕事の書類だろう。

 

そして、机には一冊の日記帳もあった。開くと、最初のページにはこう書かれている。


『私の名前はレイク・ベルビア。

レファレンス様がコールドスリープされたことによって、その地位を引き継ぐこととなった。

 

これは、私の罪を綴る日記である。

 

いや、一日で書いているのだから日記というよりはただの懺悔帳か。

 


私は、世界を救いたかった。結果、バケモノを生み出してしまった。

その全てを、此処に綴る。

私の過ちを、此処に綴る。

 

誰かがこれを読むことを願っている。

 

レファレンス様が努力を重ねた研究を、このような形で終わらせてしまうことに、このような方向に導いてしまったことに、一人の人として、トップとして、謝罪を。

 

そして、これを読む貴方が無事にこの場所を旅立てますように。何せここはバケモノの聖地ですから。幸運をお祈りしています。』



 ──そうして、レイク・ベルビアの贖罪は始まった。


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