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伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
絶望の日
16/35

15.謎の施設

 

「一体何が!」


レオンは命の別状こそなさそうだが、重症に見える。血が滲んだ服が重そうだ。


「はは、そう焦んな。大丈夫。左手を怪我しただけだ」

 

「でも」


「大丈夫だって。それより、いつもみたいに止血してくれ」

 

私はすぐにリュックの中から比較的きれいな布を取り出してそれを包帯代わりにレオンの腕に巻いた。腕は鋭い何かで切られたようで、見るだけでも痛々しかった。ひと通り手当てをして、もう一度、今度はさっきよりも落ち着いた声で聞く。

 

「何が、あったんだ」

 

「あの後、お前と二手に分かれた後」

 

レオンはどう説明すべきか悩んだあと、なんでもなさそうに語りだす。

 

「走って、この場所を目指した。けど、門の近くにバケモノがいてな。お前を追ったはいいが逃げられたのか。あるいは、ありえねえけど、お前が、倒されたのか。そう思った。でも違った。バケモノは」

 

そこで一度言葉を区切る。

 

「バケモノは、一体じゃなかった」

 

は?

 

「今、何と言った?」

 

「バケモノは、二体いたんだ。どうするべきか思ってとりあえず眺めてたら、仲間割れかはわかんねえけど片方がもう片方を殺したんだ。そして、俺に気がつきやがった。そこからはもう鬼ごっこだ。銃弾は効かなかった。

そういや、ほかのバケモノよりも服みたいなのを着てる感じがした。おかしいよな、バケモノが服ってよ。それで、町のほうに行って、建物とか利用して逃げ回った。そん時に、バケモノの鋭い爪が俺の左腕を切った。死ぬって思ったけど、運よくすげえ細い道があってよ。そこには体格のいいバケモノは入れねえ。んで、そこにいたら奴は諦めたんだ。命拾いしたぜ、まったく」

 

やれやれ、とレオンは天を仰ぐが、そんな軽く語っていい話ではない。結果としてこうして生きているが、99パーセント死ぬような出来事だ。

 

「よかった」

 

「ん?」

 

「お前が、レオンが、生きていてよかった」

 

無意識に私の口から出た言葉に、レオンは目を丸くして、そして表情を和らげた。

 

「おう!」

 

にかりと、いつも通りの自信溢れるニヒルな笑み。白い歯がよく見える。


「ちなみに、俺が帰らなかったらお前はどうしていたんだ?」

なんて聞いてくるから、

「そりゃ、帰ってくるまでずっと待つさ。あまりにも遅かったら、手紙を置いて、迎えに行くよ。そうすればすれ違わない」

と答えてやった。

 

「そりゃあ、男前なお姫サマだな」

 

 

それから三十分経って、レオンの出血が落ち着いた頃、ようやく本題に入る。

 

「そういや、お前を追っていたバケモノはどうなったんだ」

 

「ああ、普通の銃弾は効かなくてな。【Ⅿ666弾】で撃ったら効いた。死んだのを確認したよ。でも、それでも何十発かは撃ったな」

 

「うわ、あの銃弾何十発ってそりゃすげえ」

 

人間ならば一発でも三回は死ねる威力だ。

 

「さて、歩けるか?」

 

「誰に言ってやがるお前。怪我は十秒で治すのがレオン様だ」

 

にやりと笑って得意げに言ってくるもんだから、「じゃあ手当てはいらないな」というと「調子乗りましたすんません」とテンポよく返って来る。私たち、いつもこんなだな。

 

「じゃあ、この建物を回ろうぜ」

 

「もういいのか? 別に急いでないし、もう少しこうしていても」


「いいって、もう痛くねえし。それに、動いている方が気がまぎれる」


「……そうか。でも、キツかったらすぐに言えよ」


「へーへー」


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