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伝染都市アジュール  作者: 六波羅朱雀
絶望の日
14/35

13.旧世界の建物

 

熱い。

 

いや、暑い?

 

どっちにせよ、衰退した世界において太陽の光は強敵だった。かつてのクーラーなるものはなく、センプウキなるものもない。ジリジリと肌を焦がすように容赦なく光る太陽は悪魔に見える。

 

エルサルを出て三時間。そろそろ次の場所に着きそうなものなのだが、あとどのくらいだろうか。

 

「腹減った」

 

レオンが呻く。

 

「あの辺に建物が見える。そこの日陰で昼食としようか」


「ああ、もう死にそうだからな」

 

それから十五分。建物の正体は小さな町だった。地面はすっかり砂漠化しているが、所々草木が生えていた。珍しい。緑があるなら、動物もいるかもしれない。狩りができればいいのだが。

 

「もう無理限界」

 

レオンがそういうものだから、とりあえず一番近くの建物へ入って食事をすることにした。

 

「フドウサン、と書かれているな」

 

地面に落ちた看板には、そう書かれていた。

 

「なんでもいいって、早く行こうぜ」

 

「はいはい」

 

レオンが私の前を走る。

 

「あんまり走るな、危ないぞ」

 

「へーきへーきってうぉっ!」

 

「言わんこっちゃない。はぁ、大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。なんか、フドーサンの旗? みたいなの踏んだ」

 

レオンに踏まれた旗はぽっきりと折れていた。ちょうど半分半分の長さになっている。

 

折れた棒を横目に進む。幸い建物の中は埃が少ないので、床に座って食事としよう。

 

「少しでも太陽光がないと涼しいな」

 

「お前って、難しい言葉よく知ってるよな」

 

レオンが感心したように言った。いや、太陽光は難しくないと思うが。

 

「……まあ、昔お世話になった人が物知りでな」


「へー、いい人だったんだなぁ、もぐもぐ。あ、これ美味い」


そう言ってレオンは味付きのカンパンを食べる。フルーツ味のカンパンは貴重である。

 

「水取ってくれ」

 

「分かった」

 

近くにあった水筒をレオンに渡す。一面砂漠の世界で、水はフルーツ味のカンパン以上に貴重である。そろそろ何処かで補給しなければ。

 

「はひはほ」

 

レオンが笑顔で何か言ってきたが、よく分からない。ありがとう、だろうか。

 

質素な食事を終え、建物の中を詮索する。フドウサンなだけあって書類が多い。

 

「悲しいな」

 

なんとなく、そう思った。

 

「なんか言ったか?」

 

レオンが首をかしげて聞くが、何でもないと言ってごまかした。なんでそんなことを言ったか自分でも分からないのだ。フドウサンなんて行ったことないのに。


どれだけの人が最後までここで働いたのだろうか。きっと、どうせ滅ぶなら働く意味はないと思った人は多かったはずだ。  

 

どれだけ頑張っても、お金はただの紙切れになって。

どれだけ努力しても、昇進も何もありはしない。

 

──私だったら、最後まで働くのだろうか。

 

多分、働かないな。私はきっと、旅に出るから。

どんな世界線でも私はきっとそういう奴だ。

 

奥に社長室らしき部屋があった。

 

かつては何かを植えていたのであろう器や、床に乱雑に散らばった資料の数々。破れかけのカーテンと、すっかり埃にまみれて色褪せたグレーのカーペット。ブラウンの机に、日記帳が一つ。

 

そこに書かれた日付の多くは、黒く塗りつぶされていた。


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悪役令嬢ものなども書いております。そちらは長編です。是非どうぞ。

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