13.旧世界の建物
熱い。
いや、暑い?
どっちにせよ、衰退した世界において太陽の光は強敵だった。かつてのクーラーなるものはなく、センプウキなるものもない。ジリジリと肌を焦がすように容赦なく光る太陽は悪魔に見える。
エルサルを出て三時間。そろそろ次の場所に着きそうなものなのだが、あとどのくらいだろうか。
「腹減った」
レオンが呻く。
「あの辺に建物が見える。そこの日陰で昼食としようか」
「ああ、もう死にそうだからな」
それから十五分。建物の正体は小さな町だった。地面はすっかり砂漠化しているが、所々草木が生えていた。珍しい。緑があるなら、動物もいるかもしれない。狩りができればいいのだが。
「もう無理限界」
レオンがそういうものだから、とりあえず一番近くの建物へ入って食事をすることにした。
「フドウサン、と書かれているな」
地面に落ちた看板には、そう書かれていた。
「なんでもいいって、早く行こうぜ」
「はいはい」
レオンが私の前を走る。
「あんまり走るな、危ないぞ」
「へーきへーきってうぉっ!」
「言わんこっちゃない。はぁ、大丈夫か?」
「大丈夫だ。なんか、フドーサンの旗? みたいなの踏んだ」
レオンに踏まれた旗はぽっきりと折れていた。ちょうど半分半分の長さになっている。
折れた棒を横目に進む。幸い建物の中は埃が少ないので、床に座って食事としよう。
「少しでも太陽光がないと涼しいな」
「お前って、難しい言葉よく知ってるよな」
レオンが感心したように言った。いや、太陽光は難しくないと思うが。
「……まあ、昔お世話になった人が物知りでな」
「へー、いい人だったんだなぁ、もぐもぐ。あ、これ美味い」
そう言ってレオンは味付きのカンパンを食べる。フルーツ味のカンパンは貴重である。
「水取ってくれ」
「分かった」
近くにあった水筒をレオンに渡す。一面砂漠の世界で、水はフルーツ味のカンパン以上に貴重である。そろそろ何処かで補給しなければ。
「はひはほ」
レオンが笑顔で何か言ってきたが、よく分からない。ありがとう、だろうか。
質素な食事を終え、建物の中を詮索する。フドウサンなだけあって書類が多い。
「悲しいな」
なんとなく、そう思った。
「なんか言ったか?」
レオンが首をかしげて聞くが、何でもないと言ってごまかした。なんでそんなことを言ったか自分でも分からないのだ。フドウサンなんて行ったことないのに。
どれだけの人が最後までここで働いたのだろうか。きっと、どうせ滅ぶなら働く意味はないと思った人は多かったはずだ。
どれだけ頑張っても、お金はただの紙切れになって。
どれだけ努力しても、昇進も何もありはしない。
──私だったら、最後まで働くのだろうか。
多分、働かないな。私はきっと、旅に出るから。
どんな世界線でも私はきっとそういう奴だ。
奥に社長室らしき部屋があった。
かつては何かを植えていたのであろう器や、床に乱雑に散らばった資料の数々。破れかけのカーテンと、すっかり埃にまみれて色褪せたグレーのカーペット。ブラウンの机に、日記帳が一つ。
そこに書かれた日付の多くは、黒く塗りつぶされていた。
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悪役令嬢ものなども書いております。そちらは長編です。是非どうぞ。




