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第七話

 室内に薄く、お香の匂いが漂っている。

 ドライハルは僕が思っているより、思慮深かった。

 それは旅立ちである徴兵への準備を整えていたからだ。一体、いつから考えていたんだろう?ここまでだと計画的とまで言えそうだ。

 室内の壁に接するようにある、質素で機能的な文机の上には、何枚かの紙が重ねて置かれていて、それらにはびっしりと何か文字やら図案、それに地図までがあった。全て今回の旅で使う物だと思われる。

「まあ、見てくれ、アッシュ。俺なりに色々と準備はしておいたんだ」

 ドライハルに勧められるままに、文机に置かれた物を見る。実際に見ると、事細かく書かれていて、地図には目印らしきものが記されていて、彼の性格がちょっとわかったような気にもなった。意外と几帳面なんだな。

「うわぁ、これは凄いね。うん、本当に凄い。凄いとしか言えなくてゴメンね…だって、僕達これから兵士に…」

 僕はドライハルのように喜べないし、はしゃぐ事も出来なかった。ドライハルはそんな僕の気持ちを察してくれた。

「わかってるよ、アッシュ。俺達は兵士になりに行く。だがな、俺が生まれてこの方、戦争をしたということは無い。隣国があるとはいえ、今は平和なもんだ。その隣国ザッハトに王様だな。ディザワイスの王様は自分の娘を嫁に出すと噂があるくらいだ。仲良くしましょうってことだよ、アッシュ」

 隣国ザッハトは、ここラカハナから南西遠くにある大国で、不思議な力を持つ者がいると噂で僕は聞いている。過去にディザワイスとエストライアの覇権をかけて戦った事があるとも聞くけど、それも遠い昔の話しらしい。

 でも、徴兵があるという事は、戦をするもりじゃんじゃないのかな?戦うなんて怖いし嫌だよ。顔が自然と強張った気がする。

「心配すんなって。大丈夫、お前はまだ子どもだからな。いくらなんでも兵士にってわけにもいくまい。せいぜい、お偉方の身の回りのお世話くらいじゃないかと思うぞ。ま、俺はちょっと微妙だが、俺はこれでも腕っぷしには自信があるからな」

 確かにそうだ。僕はまだ子ども。ドライハルは言うだけあって、スラっとした長身だけど体格に恵まれている。きっと戦いでも上手く立ち回れるだろう。そんなに気に病んでも仕方ないか。

「じゃあ、そろそろ始めるとするか。それが今日の目的だからな。お互い、綿密にやろうじゃないか」

 ドライハルは宣言するように言い放った。


 隣国ザッハト。

 ディザワイスとの間には、エト山擁するエスカライア山脈があり、それが自然の要塞となり、隣国といえどお互いに簡単には攻め込む事が出来ない。それに、王都ディザワイスは城砦都市でもある。不思議な力とか噂は色々とあったけど、今の僕には何が間違ってて、何が正しいのかはわからない。

 僕は僕で、ドライハルのように覚悟を決めないといけない。彼の真似は出来ないけど、後悔の無いようにするしかないと心の底で思った。

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