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第二話

 その日は、朝から忙しかった。

 店には多くの客が料理を求め入り、厨房でフル回転する、おばさんを僕は給仕として立ち働いた。

 働くのは嫌いではない。店を訪れる客を観察するのも楽しいので、疲れ飽きることもない。まあ、僕がまだ若いからだけなのかもしれないけど。

 店の1階の食堂には、テーブル席5卓と小さなカウンターもあるが、本日は満席だ。喧噪と歓談が店の外にも漏れている。


「アッシュ、そっちの料理とお酒を頼むわ」

 おばさんの声が飛んで来る。料理を受け取り、注文を聞きに行く。

「了解。お客さん、お待たせしました。お飲み物は何にしましょうか?」

「そうだな、地酒を頼むよ。なるはやでな」

「承りました」


 急ぎ、ジョッキに特製の地酒を注ぎ、お客に出し、やり取りを終える。地酒はラカハナの名物だ。もう慣れたものだ。

 僕は未成年なので、お酒はまだ飲めないが、この店では朝からでも客は酒を飲み食べる。この店であり、地域の特性もあるかもなと、飲めない僕は心の中で思っている。


 そんな中で、ある客の言葉に僕は耳をそば立てることとなる。不吉で不穏な、その噂に。

「おい、聞いたか?今年はあれがあるそうだぞ」

「あれか。あれは負担が大きいからな。本人だけでなく、家族にも辛かろうよ」

 あれって何だ?もう少し耳を立てる。

「王様も決心したらしいよ。今年は必ずあれがあるらしいぞ」

 だから、あれって何だ?

「徴兵か、ついに隣国へ兵を進めるようだな。大きな戦があるぞ、これは」

 徴兵?戦?…戦争があるのか?僕に関係があるのか?そこに同じく耳をそば立てていた、テルザおばさんの声が届く。

「お客さん、本当かい?本当に徴兵があるのかい?戦争するって、本当なのかい?」

 おばさんの顔色がちょっと悪い。体調でも悪いのか、そんな僕の甘い考えは通用しなかった。

「ああ、本当だ。俺はディザワイスからこっち戻る前に聞いた。確かだ」

 おばさんの顔色がいよいよと悪くなる。大丈夫かな?

「そうか。じゃあ…アッシュにももしかしたら…かもしれないわね」

 おばさん、何を言ってるんだ?どうして僕に関係がありそうなんだ?僕は今の生活に満足してるので、今のままでいいのに。本当にどうしたんだよ?僕にわかるように説明して欲しい。

 そんな僕の気持ちをおばさんが察したのか、僕を見つめている。ちょっと怖いくらいの眼差しで。

「私から言っておくね、アッシュ。この国の徴兵は、満14歳からなのよ。だから、あなたにもしかしたらと思ったの。でも、あなたは、この国の出身じゃないかもしれないし、だから、私にもわからなくてね」


 …?僕が…徴兵されるかもしれないのか?嘘でも騙しても冗談でもなく?ここは、こんなに平和で穏やかなのに?僕の頭は、ただ混乱するばかりだった。今耳にした全てが信じられない。

 戦争も嫌だし、戦うなんてとんでもないよ。

 それが今夜の会合で全てが明らかになるのを僕はまだ知らなかった。

 それが僕の運命を変えるものなんて…

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