第十六話
暗闇から何やら、声が聞こえるような気がした。
頭の中のそれも中心に響くような声がした気がした。
遠くから、近くへ。遠くから、近くから。
心の奥底に語り掛けるような、刺さるような気もする声だった。
…我を…願い…希望を…
…希望を…我に…示せ…
…汝の…願い…希望を…
…強く…それを…示せ…
はっ!?
ここは…そうだ。ここはチカサの宿で、今は旅の途中で、ドライハルと一緒だ。
ドライハルは静かに寝息を立てている。そうか、僕はまた同じような、夢を見ていたんだ。何かはわからないけど、その何かに引っ張られるような気がする、変な夢。夢では姿の見えない何者かの声が頭の中に響くだけだった。声は怖くはなかったけど、何か恐れ多いに近いような、圧のある声だぅた。何なんだろう、一体?
目を覚ました、ドライハルに「おはよう」っと、声を掛ける。
「ん…アッシュ…おは…ふわぁぁ…おはよう」
ドライハルの寝起きは、そんなに良くなさそうだ。まだ目をこすっている。
「お前は朝が早いんだな、アッシュ」
「そう…かな。でも、また変な夢を見たみたいで、ちょっとね。同じような夢を何回も見るんだ」
夢について話したのは、ドライハルが初めてだった。
「何だ?言ってみろ。夢は何かのお告げみたいなものもあると聞くぞ。まあ、俺は聞くだけで、どうするかはわからないけどな」
そうなんだよね。夢を見た僕自身がわかってないから、正直どうしていいのかわからない。
「何かね。夢の中で言われてる気がするんだ。何かを見せろ…とか?良く覚えていないんだけど、何かの力のようなものに引っ張られる気がするんだ。ごめんね、詳しく覚えていなくって」
「おう、そうか。じゃあ、俺にもわからんな」
いつもの自慢げな、ドライハルだった。話した事で、少し気は紛れたような気はするけど…
「じゃあ、朝食を作るから。夢の話しはもう少し待ってて。僕が覚えていられたらなんだけど」
「そうだな」
ドライハルが言った時、そのお腹がグゥーと鳴った。
「待ってて。直ぐに用意するから。テルザおばさん直伝の朝ご飯だから。ちょっと期待してね」
早速、朝食の準備に取り掛かった。
テルザおばさんの得意料理は、たくさんあるけど、僕はその中から出来るだけ手間を掛けずに、美味しく食べられる料理を習っていた。料理自体好きなので、作るのも楽しみだ。
今日はトーカを使った、うさぎの尻尾亭スペシャルにしよう。
トーカはトカの乳の発酵食品で、丸パンと一緒に食べたり焼いたり、野菜とも一緒にラカハナでは一緒に食べる。
旅立ちの朝の記念すべき初めての朝食だ。腕を振るおうと思った。作った料理を楽しみにして貰えるのが嬉しくもあった。
「もう少し待ててね」そう言った時、ドライハルのお腹がまた、今度はさっきより大きく、グゥーと鳴った。
「アッシュ、待ちきれんぞ」少し照れ臭そうな顔のドライハルだった。
「はい、はい。わかってます」
何だか楽しいな。気合入れて作ろう。




