整合性
「はぁ……」
「ただいま」
「……おかえり」
「元気がないな。あ、また酒を……」
「当然でしょ……? なに急に。普段はガレージに籠りきりのくせに
急に妻の事が心配になったの? やめてよね、はぁ……」
「いや、悪い。ちょっと浮かれているのかもしれない。ついに、ついに完成したんだよ」
「はぁ……なにが?」
「……タイムマシンさ。これであの子は帰ってくる。
あの日、あの日、死ななかったことにできるんだ!」
「やめて……もうやめて! そんな話聞きたくない!」
「大丈夫、上手く行くさ……。君は信じていないようだけど
まあ、当然かな。でもね、創作物のタイムマシンと違って
そう無茶な乗り物なんかじゃない、意識だけを過去に送るんだ。
まあ説明すると長くなるから省くけど、ちゃ、ちゃんと理屈は通っているんだよ!
……もう聞く気もないか……じゃあ、行ってくるよ。過去を変えにね……」
「はぁ……」
「ただいまー! あれ? お母さん、元気……ないね。それにまたお酒……」
「ああ、おかえり……」
「また、お父さんのこと……?」
「ええ、あの人。あの日、あああ、うう、私が止めておけば」
「……仕方ないよ。事故だもの。誰も、お母さんはわるくない。
でもね……大丈夫。信じられないかもしれないけど私ね、タイムマシンを作ったんだよ?
ふふふ、お父さんのあのガレージで。嘘じゃないよ?
私、お父さんの娘だもの。大丈夫、上手く行くから、ちょっと待っててね。
お父さんを死ななかったことにできるから……」
「はぁ……」
「ただいま」
「……おかえり」
「元気がないな。あ、また酒を……」