勇者なのに不合格言われたやつ
「うっわ、弱すぎ。不合格だわ。」
つばの大きな帽子に黒いローブを纏った女は心底残念そうにそう呟いた。
そして手で顔を覆い隠してぶつぶつとつぶやく。
試練の内容ぬるすぎたかなー。
ダンジョンのレベル上げないと意味ないかなー。
でも、クリアできないと目的果たせないしなー。
そんなこと。
俺はすでにぼろぼろの体に鞭打って剣を構え直す。
「不合格ってなんだよ!俺は世界を救わないといけないんだ!ふざけてるのか!終焉の魔女!」
終焉の魔女。人によっては魔王と呼ぶ女は呆れたようにつぶやく。
「いやだってさー、私が触るだけで…」
そう言って彼女はいつの間にか俺の前にたち、人差し指で俺の頭に触った。
瞬間、世界がゆがむ。
背中に激痛が入る。いつの間にか壁にたたきつけられていたようだ。
「なんで、こんなに弱いのよ…。」
彼女の声が震えている。泣いているのだろうか。
「あなたたち、人間を育てるためにどれだけ時間と労力投資したと思ってるのよ。」
「何を言って…」
「あなたたちがレベルアップしていくごとにちょうどいいレベルの魔物がわくようにして、ダンジョンたくさん置いてクリア出来たらいい装備が手に入るようにして向上心を失わないように配慮して、ボスという強敵に映るレベルの子配置して強くなってる実感を与えて育つようにほかにも配慮したのに…」
めっちゃ介護されてた。
え?俺自分で強くなってここまで来たつもりだったけど実はレベリングがうまくいくように誘導されてってこと?
「たまに人に化けれる部下に攻略詰まってたらさりげなくヒント与えて人の短い人生でも可能な限り早く攻略できるようにしてたのに…」
いや、確かにいるけど。なんでこの人ピンポイントなヒントくれるなーって人いるけど。魔王が人づてに教えてるとは思わないじゃん。
「ここに来る前に私が知る限り最高の職人と神に作らせた武器を置いた隠しダンジョンおいてたのにスルーするし」
いや、それは確定で通るように誘導しろよ。てか!神様従えてるじゃん!この世界もう終わってるじゃん。
「ヒントの子が話しかけたのにもう装備強いから。このまま魔王城行くって無視したらしいし」
それはごめん。
いやでも、俺にだって反論はある。
「いやでも、ここまで来れるまでに合格ラインまで育てることのできない教育レベルも悪いと思います!」
いや、どんなセリフだ。教育レベルってなんだ。ただ、こっちも引き下がれない。
魔女は哀れそうな目でこちらを見てくる。
「なので!ここまで来れた賞ください!」
もう何言ってるか不明だがテンションで乗り切れ!俺!
俺の言葉に魔女は少し思案する。
通るか?
「そうね…。人間の脆弱さをもっとかんがみて育成方針見直さないといけないし…。しばらく次元のはざまに引きこもろうかしら。」
なんかうまくいったぽい!
「格好してはあなたに封印されたでいいか。じゃあ1000年くらい引きこもるから。起こしに来て??」
「生きてねーよ。」
思わずつぶやいた。