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道化の世界探索記  作者: 黒石廉
プロローグ
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011 訓練の終了とパーティー

 訓練十日目の午前の座学が終わったあと、モヒカン教官が皆に話をはじめた。

 「本日を持ってお前らの訓練は終わりとなる。明日からはお前らは共和国所属の探索隊の一員として、各自臨機応変に作戦の立案、遂行をしてもらうことになる」


 座学で習っていたことだが、モヒカン教官がしきりにいう共和国つまり俺たちがいまる国は一種の都市国家らしい。

 中洲(なかす)穀倉(こくそう)地帯と城壁に囲まれた都市中心部と港湾地区がある。このあたりは川や海、城壁で囲まれた安全地帯である。

 中洲の外側には増えてきた住民たちの住む街区が存在する。俺たちが自由に行動できるのは基本的にこの城壁の外の街区だけである。

 

 人間の集まる都市は近隣に山間部にある鉄の王国、奥まった平野部にある大穴の王国というのがあるらしい。

 また、都市国家ではないが牧草地帯で遊牧に従事しているソという人々がいるのだそうだ。

 鉄の王国はその名の通り鉄を始めとした鉱物を、ソの民は家畜や畜産品を、大穴の王国は大穴と呼ばれる迷宮から出土する品物と穀物を主な交易品としている。そして、我ら?が共和国の主な取引材料は海産物と穀物である。

 この3つの都市国家と牧畜民は多少のいざこざや利害関係の不一致こそあっても基本的に友好関係にあるという。

 

 さて、これらの都市国家と遊牧民たちの居住地域は近隣と言ってもそれぞれ徒歩で1ヶ月以上はかかるあたりである。安全とは言えない街道を隊商たちが通って貿易をしている。

 この安全とは言えない街道の周囲には小さな集落ができたり、消えたりしている。

 消える理由は多くの場合、危険生物の襲撃だ。

 たとえば、野生の動物の中には凶暴なものもいる。これが集落や隊商にとって危険となることもある。

 また、亜人と呼ばれる知能と社会性をもつ者たちがいて、彼らもまた集落や隊商を襲ったりする。亜人は様々な種がいるが、多くの場合、人間を忌み嫌っているというか恨んでいるという。彼らの信仰する神を人間の信仰する神が騙したというのが、亜人種側の言い分で、人間側の神話によれば、亜人は自ら堕落した者たちの末裔なのだという。ここらへんの神話の話は面白そうだったので、もうちょっと詳しく聞きたかったが、探索隊任務に役立つものではないので、ほとんど聞かされなかった。


 で、俺たちがこれから所属する探索隊というは、隊商の護衛や居住地の拡大防衛任務、前人未到の地や迷宮の探索など諸々を請け負う職業の集合体だ。「隊」と名が付いているが、基本的には「遊撃任務」で、各人が最善を尽くし、共和国に奉仕するのだそうだ。

 わかりやすく言えば冒険者、ぶっちゃけて言うなら資格と簡単な訓練だけで放り出される使い捨ての便利屋ってことみたい。これがモヒカン教官に言わせると「各自臨機応変に作戦の立案、遂行」をすることらしいから、物は言いようだ。

 使い捨ての便利屋……まぁ、十日間だものなぁ。


 モヒカン教官の名誉のために付け加えると、彼はその髪型と最初の印象以外は厳しいながらも面倒見の良い人だった。

 静電気流したりしちゃったこと少しだけ後悔している。

 下手に謝ろうものならしこたま殴られそうだから、ずっとだまってるけど。


 探索隊は数人のチームを組むのが基本らしい。

 別に大所帯であっても問題はないのだが、それだと仕事が来なくて困るからというのが数人という理由だ。

 数人来てもらえば良いような仕事に何十人と来られても困るから。

 また、報酬は一人あたりではなく1つの仕事あたりで支払われることもよくあることなので、あまりにも人数が多いとそもそも食べていけるだけの分け前を得ることができないという理由もあるという。

 大人数が必要とされる場合は大々的な募集をかけて、そこにいくつかのパーティーが集合する形をとるらしい。


 で、基本的に訓練所で最初のパーティーを決めるらしい。

 もちろん、外でパーティーの仲間を募るのも可能らしいけれど、治療術や妖術といった希少な才能を持った者でなければ相手にしてもらえないのだそうだ。

 逆に言うと、そのような才能のある者は訓練所から出た日から引く手数多(あまた)なのだそうだ。

 となると、俺たちみたいなペーペーは基本的に術者抜きのパーティーで仕事をやり抜くのが基本となる。


 「お前らの訓練課程終了と輝かしい前途を祝して、本日は簡素ながら宴を用意する。楽しみながら、今後ともに戦い抜く仲間を見つけてほしい」

 ここでは昼食は出ないはずなのに肉を焼く良い匂いがしてくると思ったらこれか。

 ふっと目を向けると、いつもの食事面子の男二人と目が合った。

 食事は楽しみだけど、パーティー結成は……多分、俺たちあぶれるんだろうなぁ。

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