エピローグ
ノエルとギルとルチアの3人は、探査艇ディスカバリーの艦橋に到着した。
ドラコの強襲母艦が時空の裂け目の中で"文字通り"消えて、既に2時間が経過していた。
ヴァネッサがノエル達一行を、飛び切りのにこやかな笑顔で出迎える。
「少佐殿。任務完了、誠におめでとうございます。ご無事でのご帰還、心よりお祝い申し上げます」
「ノルトライン中尉、ありがとう。・・・何とか切り抜けて戻ったよ。先にそこの二人を紹介しよう」
とギルとルチアをヴァネッサに紹介しようとする。
「バイオロイドのギル君とローエンの"エルフ"ルチアちゃんだ。こちらはオレの副官を勤めるヴァネッサ・ノルトライン中尉」
「ああヴァネッサ。二人とも帝国公用語はわかるから心配いらない」
ヴァネッサはにこやかにギルとルチアを交互に見る。
そして少しだけ小首を傾げる。
(バイオロイド君は見たので分かるけど、もう一人の子は・・・"エルフ"っていったい何?全く聞いていないし、何となく・・・小生意気そうで、そこはかとなく小姑臭漂ってるし・・・)
ルチアも笑顔だが、内心ヴァネッサに本能的な警戒心を抱く。
(だれ?この女の人。上から目線で・・・偉そうだし、なんか面倒なお姑みたい・・・)
どうして・・・ちょっとした悪口だったり敵意だったりと、そうした感情は顔に出さずとも相手には伝わってしまうのだろうか?
「初めましてギル君、ルチア(小娘)ちゃん」と表情だけは取り繕うヴァネッサ。
「こちらこそ、どうぞよろしくヴァネッサ(オ・バ)さん」は同じくルチア。
余計な一言を内心に加えた挨拶は、お互い瞬時に相手へと正確に伝達された。
そしてほぼ同時に、お互いが笑顔のうちに青筋を立てる。
とまあ・・・二人の出会いは、最初はあまり友好的なものではなかった。
互いに気が強い者同士の邂逅ならば、こういう事はままあることだ。
そしてヴァネッサに笑顔で無邪気な挨拶を返したギルは、やはり無邪気にも何にも気づいていなかった。
そしてノエルはと言えば、分かっていながらも分からない振りをした。
大人の処世術である。
さておき、ノエルは探査艇の運行を艦長に任せ、4人で執務室に移動する。
そこでノエルはヴァネッサに、ローエンでの出来事と3人で戻った事情を詳細に説明した。
「・・・と言う訳で、オレたちがマリーエンに戻ってからの行動をよく考える必要がある。ギル君とルチアちゃん・・・面倒だから今後は互いに呼び捨てでいいか?それで先ずギルには、外部から余計な干渉を招かない安全な居場所をマリーエンに用意する。そしてルチアには、ギルと共に行動し今後自身の仲間を捜す手段を提供する。オレはと言うと、彼らの望みを実現させるために、周りからの干渉を撥ね除け、自分自身がもっと自由に行動できる地位と力を手に入れたいと思っている。そこで相談なんだが・・・ヴァネッサ、それには君の協力が是非とも必要なんだ。・・・どうか手伝ってくれないか?」
ヴァネッサは驚嘆すべき事態の急激な推移に、最初はもちろん驚くとともに戸惑ってもいたが、すべての事情と彼らの望みを理解する中で、自身の望みとも重ね合わせていった。
そしてやがて自身の気持ちが次第に高揚し、いつしか彼らと心が同調していくのを感じていた。
(うんうん。何か・・・だんだんと面白くなって来た。もちろん人生とはこうでなくてはね・・・)
「皆さんの望みは良く理解しました。そしてその為にも少佐殿が更なる高みと力を目指す事は、わたくし自身の望みでもあります。喜んで・・・わたくしの力が及ぶ限りのお力添えをし、この二人の力にもなりましょう」
ヴァネッサが笑顔で力強く約束する。
「ありがとう、ヴァネッサ。これでオレたち四人は"同志"ってやつだ。オレたちは生まれも育ちもバラバラで、目指す将来の形は違うかも知れないが、その道筋は互いに混ざり合ってる気がするんだ。オレたちはそれぞれの未来を切り開く四人組だ。ギル、ルチア、ヴァネッサ。これからもよろしくな」
ノエルが三人に笑いかける。
「ええ。ベリルもよろしくって言ってる。ノエル」とギル。
「もちろんよ、ノエル。このネンヤの輝きにかけて」ルチアも応じる。
「少佐殿・・・いえ、ノエル。共に未来を切り開いて見せましょう」
最後に少し頬を染めながらノエルを見つめるヴァネッサ。
・・・いいもんだよな、仲間がいるって・・・。
(心強いよね。力は4倍以上だ)
ギルの心の声にベリルが応じる。
ギルは今、生まれて初めて自分が独りぼっちではないとの安心感に浸り、その喜びを噛みしめていた。
「なあルチア。オレたちはこれから時空転移でマリーエンに戻るつもりだが、君はその体で時空の裂け目を越えられるのか?」
探査艇の艦橋でノエルが突然ルチアに尋ねてきた。
「あたしのネンヤも疑似人格を持ってて、さっきギルのベリルとその事を確認してた。ベリルも認めたんだけど、ネンヤはベリルとそれに関してはほぼ同じ事が出来て、カプセルで人工冬眠しなくても勝手にあたしの脳を眠らせて時空転移を可能にするんだって」
ちょっと自慢げに答えるルチア。
「君たちってホント便利な存在だな・・・じゃあ当直は君たちに任せるとするか」
少し羨ましげにノエルがこぼし、10分後の時空転移開始を航行要員に指示する。
探査艇ディスカバリーは、時空転移に向けての準備をてきぱきと進めている。
ギルとルチアを除いて、艦橋の要員が慌ただしくアンドロイドと交代していく。
起きている人はもう二人しかいない艦橋で、ルチアはギルに話しかけた。
「どんな所だろうね、マリーエンって。なにがあたし達を待っているんだろうね」
「さあね。不安はあるけど少し楽しみでもあるんだ。ボクが生まれた星だ。きっと新しい出会いと新たな冒険が待っているんだろうな」
「・・・どこであろうと、なにがあろうと、あたしはギルといるよ・・・」
「ボクも・・・。どこであろうと、何があろうと・・・君を守ると誓うよ」
ギルはそっとルチアの手を握る。
ルチアも自身のからだをそっとギルに寄せた。
程なく、マリーエンブルクの惑星探査艇ディスカバリーは、静かに時空の裂け目の中に消えて行った。
さて、これで第1章は終わりです。でもこれはどうやらまだ始まりっぽいですね。
それもまた良し。所詮この空想世界とはそんなもんです。
偶然にも目を通してくださった方がいらしゃれば、お目汚し、大変失礼を致しました。
これは、オタクの、オタクによる、オタクのための物語です。
判る人だけが判ればいいと言う、極めて自分勝手な話ですから。
そもそもの書いた動機が、お気に入りのラノベの続編がなかなか出てこないのに、業を煮やしての事でしたから。
お気に入りの面白い話がすぐ出れば、私はまたしばらくお休みです。
ですが、待ち時間にもう少し時間があるようですから、今はまだ続きを書いています。
また、お目にかけることもあるかも知れません。
その時、ひょっとして目にする機会があったならば、どうぞ笑ってくださいな。では失礼をば。




