インターミッション 10.5
ドラコ参謀部
ドラコ大公領星系軍参謀部の一室。
「作戦は成功した。マリーエンブルクの新兵器も確保した。しかし不慮の事故が帰還途中に発生し、第3アヴァタール・レギオンの全員を、確保した新兵器ごと失った。・・・と、こう言う報告でいいかね?」
ハルコネン少将がウルク少将に尋ねる。
「・・・」
ウルクは無言だ。
「送信された映像と、作戦完了を告げる至急報は確認した。映っていた少年は確かに新兵器本人であると情報局でも判定した」
「・・・」
ハルコネンは、ウルクの沈黙を気にかけず話を続ける。
「しかしだ。星系中立地帯でマリーエンブルクの非武装探査艇を戦闘鑑で脅し、研究保護区に武力で堂々と侵攻したのはまずかったな。帝国科学アカデミーは保護区の自然環境を大規模破壊したとカンカンだし、マリーエンブルクからは帝国星系間調停機関に対し、証拠映像を添えて同様の強硬な抗議を行うとの予告がなされている。彼の皇帝陛下も黙って見過ごす訳にも行くまい。この機に乗じて他星系領も尻馬に乗って、さぞかし我が領を責め立てる事だろうよ。外務局の連中が頭を抱えていたな」
「・・・」
「あの新兵器を手中に出来てたら、他星系領の奴らを力で黙らせるとの方法も採れたんだろうが、何も得られなかった上にリー大佐のレギオンまで失ったとあっては、ウラジーミル大公殿下も到底心安らかではいらっしゃるまい。何らかの御処断が下されるのは必定だろう」
「・・・」
「長く参謀部にいた君なら良く理解しているだろうが、政治的にも外交的にも誰かが責任を取ることが必要になる。ここはやはり作戦計画立案者が勝手に暴走して、他星系領に迷惑をかけたと頭を下げて回る以外の落とし所はあるまい。帝国科学アカデミーとマリーエンブルクに多額の賠償も必要だろう。誠意とは結局のところ金だからな」
「・・・」
ハルコネンはウルクに構わず話を締めくくる。
「まあ、色々状況説明をしたが、これ以上は必要ないだろう?君とは長い付き合いだった。こう言う別れは私としても辛いが、まあなんだ・・・骨は拾ってやるよ。君と私の仲だからな」
「・・・」
ウルクは最後まで無言だった。
ハルコネンは、最後の言葉を告げるとそのまま部屋を出ていった。
ハルコネンは無言を貫いたウルクを潔いと思う。
ドラコにおいては言葉などは何の意味も持たない。結果が全てだ。
信賞必罰はドラコの習い。
ここはドラコ大公領なのだから。
・・・
情報局への廊下を歩きながら、ハルコネンはまた別の事を考えていた。
今回の結末はどうにも気にくわない・・・。
手際よく証拠が並べられ、新兵器の喪失は全くの疑いがないように説明されていた。
これでもかと、あまりにも整然と準備されていた。映像までも・・・。
それがハルコネンには気に入らない。
長年情報局にいるハルコネンの勘に何かが引っかかる。
(もう少し探って見るかな?)
そんな事をハルコネンは考えていた。




