男の実家へ
男の実家に向かうには電車とバスを何本か乗り継がなければいけないらしい。
久しぶりの電車だと少しワクワクするが、その先の事を考えると気が重くなるので今は何も考えないようにしている。
「オレの家族と零が会うのは久しぶりだな」
え、会ったことあんの?
俺には会った記憶がないので、あるとしたら俺が俺
になる前だろう。
「オレもあれ以来直接会ってないから何言われるか不安」
俺の場合、初めて会うから不安しかない。
何を言われるかも分からないし、何をどう思われているかも分からないのだ。
「零は何も心配しなくて大丈夫だからな」
がしがしと俺の頭を撫でている男の表情はいつもより硬いな、と見上げていればホームに電車がやってきた。
それに乗り込んでから男は一切話さず、乗り換え時も俺の手を掴んで歩き出すだけでほぼ無口であった。
この男、まさか緊張すると話さなくなるタイプか。
そんなこんなで男の家から実家までは2時間半かかり、漸く辿り着いたのは何の変哲もない一軒家だった。
玄関は門の真逆方面にあるようで道路側からは扉が見えない。
男が静かに門を開き、中へ入っていくのについて行けば、奥からドアの開く音が聞こえた。




