リスタート
ライトが見えたと思った瞬間、俺はその人に手を伸ばした。
驚いた顔をしたその人の表情は今でも忘れることは出来ない。
それを最期に、俺の記憶は途切れてしまった。
はずだったのだ。
それが何故中学の入学式に俺は参加しているんだ。
目の前にはステージに入学式を伝える垂れ幕があると同時に、懐かしい人物が司会をしている。
確かあの人物は数年後、退職をしていた気がする。
俺の身に付けている学ランも中学を卒業してからは一度も手を通していないものだ。
社会人になってから、それがどこに仕舞われているのか把握できていない。
おそらく捨てずに取っていたはずだが。
周りを見渡すと見覚えのありすぎる顔ぶれで、昔と何一つ変わっていないことが分かる。
隣にいる人物や前に座っている人物。
先程まで同窓会に参加していたメンバーである。
直接話していないが、各々目指したい道へと進めたと言っていたのが遠くにいた俺にも聞こえていた。
そして、俺の気に食わない奴も変わらずにいる。
あいつのせいで俺は同窓会に参加しなくてはいけなくなったし、本来20歳で行う同窓会を25歳でやる羽目になったのだ。
そんなあいつも緊張をしているのか、表情が少し硬い。
まだ身長も低く、顔も幼いように見える。
あいつでもこんな頃があったのかと思えてしまう。
それよりだ。
どうしてこんなことになってしまったのか分からないが、これはチャンスかもしれない。
もしこのままあの時を迎えるのだとしたら、回避できるように動くことができる。
でも、どうやって回避をするのかだが簡単だ。
俺とあいつが変な約束をし、25歳に同窓会を行わなければいい。