表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/445

  大使館(3)ー再訪問

「同意すんな。それくらいわかってんだよ」

「わかった上でおちょくるのは、更にマイナスポイントにしかならないですよ公爵」

「……わるかった」


視線を横に逃がし、薄い笑みながらも素直に謝っている。

そう、司さんは下手におちょくってはいけない人間に分類されたはずだった。

それをうっかりやってしまったのは、単にダンタリオンの性分だろう。


これを機に、自己改革に取り組め。


「で、フランス人の占い師? が何か事件でも起こしたの?」

「いや、今どき霊感商法のような占いで突然人気を博すのが、おかしいという話になっていて」

「あぁ、確かに神魔が絡んでるならありだよね」

「でも神魔は基本的に就労禁止だろ」


例えば、過去・現在・未来を見ることができる悪魔がいる。

安易にそんな悪魔が、占い屋を始めたら、百発百中なのだから大ヒット間違いなしだ。


そして本来、未来を知ることができない人間が「確実な未来」を知ってしまったら。

あるいは他人の過去を覗いてしまったら。

そこから、今の生活を歪まされる人間が多数出てくる。


そんなことはすぐに想定できるので、就労禁止というわけだ。

これは「日常にゆがみをもたらす力は使わない」という意味で、一定の条件下における誓約内容でもある。


「まぁ、上位神魔のヒトたちは、働かなくても人間にとって莫大な価値のある資産を持ってることが多いからね。そもそもお金のために働く必要はない」


それもいわゆる「就労ビザ」がなくなった理由でもある。

長く滞在する神魔ほど、働かなくても困らない。

短期のヒトたちは、そんなに人間通貨は必要ないので、宝石の一つを換金するとか、ちょっと国の力仕事を手伝うとかで十分ペイされる仕組みだ。


「しかし、規模が小さい話だな」


とこれは、ダンタリオン。


「大きくなると厄介な分野だから、捜査が入ってるんですよ」


理由は、前述のとおり。

確実に当たる占い、というのは確かに使い方によっては人をどうにかできてしまう代物になりかねないからだろう。


「だが、現在は小さいので、確かにとても追いにくい」

「おとり捜査でもする?」

「……それは最終手段にしてくれ」


今回は特に、協力要請をする気はなさそうだ。

イフリートの件があったから、結局関わらせると大事に巻き込んでしまうという教訓ができたのかもしれない。


忍は全く気にしていないし、オレも割とのど元過ぎればなんだけど。


「じゃあそのフランス大使とやらに聞いてみたらどうだ?」

「エシェルです」

「オレにとってはどうでもいいの」


用が全くないからだろう。

実際、2年以上いて、一度も会わなかったのだから必要性がないのだろうが。


……エシェルに会わせたいヤツでもないから、別にそれでいい。


「司さん、次の約束取り付けられるんですけど、それまでに進展がなかったら一緒に行ってみます?」

「秋葉が珍しく、協力的になっている」

「……オレは非協力的なわけじゃないだろう」


そうだな。多分、危険なこととか特にないからだと思う。

オレは忍のように、危険の判断ハードルをものすごく低くしたりはしない。

むしろ、低くても残念ながら、飛べないであろう。


その点、今回はそんなハードルはないわけで。


「いいのか?」

「いいんじゃないかな。秋葉が提案しなかったら私がしてた」

「へぇ~じゃ、オレも行くかな」

「ダメ」


ころりと態度を変えたが、そこは断固拒否る。

友達レベルが下がるどころか、マイナスになってしまう可能性の方が高い。


乗り気になったところを潰されたダンタリオンはぶーぶー言っていたが、放っておく。

話題が変われば、流れるであろう。


「大使館が動いているわけじゃないから、期待はしない方がいいと思うけど、ちょうどいい訪問理由になる」

「それなら気兼ねなく、そうさせてもらう」


利が一致したところでフランス大使館へ。

おそらく近い日に、再び行くことになるだろう。


* * *


そして、都合をつけたのは割と早くだった。

今回の清明さんからの依頼は、無期限なので空き時間が合えば、いつでも理由にして来られるのがいいところ。


来る人間自体が珍しいせいか、それとも制服故か、守衛には覚えられていてすぐに通してもらえた。

訪問も内線を通じて、伝えてくれた。


どうやらエシェル本人が連絡を受けたあたり、本当にもう人がいないんだなとなんとも言い難い気持ちになる。


空のエントランスを抜けて、案内もなく以前の応接室に向かう。

その扉の前でエシェルは待っていてくれた。


「やぁ、前回から随分早い訪問だね」

「今日は先に伝えておいた通りだよ。……それを口実に来た、という方が私的には正しいんだけど」

「ふふ、嬉しいことを言ってくれるね」


忍とそんな風に言葉を交わしてから、エシェルは司さんの方を見た。

身長差から、少しだけ見上げる形になる。


「その制服に、武装。君は特殊部隊の人か」

「そういった情報は通って?」

「いや、自分で知ったことだ。どうやら、『口実』の方が厄介そうだね」


さすがに勘がいい。

洞察力というべきか。

部屋に通してもらって、ソファに腰かける。


以前の若干ぶしつけな内容の訪問と違って、顔見知りになったせいか茶菓も用意してあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*関連作品*
 アニメ動画まとめ→ https://youtu.be/DUFpxGlWz6c
 派生作品
  季節短編集:https://ncode.syosetu.com/n7535gr/ 
  せかぼくラジオ(日常小話):https://ncode.syosetu.com/n9500gu/ 
  スピンオフ魔界日常編「S-side」:https://ncode.syosetu.com/n5218hc/ 


*シャイな方はこちらで応援お願いします(*'ω'*)
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ