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2.ダンタリオン公爵の 沖縄語 講座

その日は荷物を置いて、少し休んでから割と定番らしい観光ルートをたどって終了した。

夜は居酒屋。


ここは、ダンタリオンのチョイスだ。

庶民過ぎて笑える。


「……青い魚は沖縄らしいけど、色彩的には危険な香りがする」


丸々一匹焼かれて大皿に出てきたそれに、忍の感想。

青はちょっと食欲を失くす色だ。

他にも見たこともないようなものが、卓上には当たり前のように上がっていた。


「せっかく旅行に来たら、その土地のものを見たいし食べたいよな」

「それ、貴族の言うことなのか?」


ベリト様連れてきたら、怒られる格式だぞ。

オレ的にはこれくらいの方がいいけど。


「しかし、泡盛は無理かもしれない」

「向き不向きがありそうだし……」


忍と森さんはビールもダメらしいので、適当にほかのものを頼んでいる。


「沖縄は元王朝だから、本土とも全然違って、気軽に別の国に来た感覚になれるよね」

「方言なんて究極にわからないもんな」


空港には「めんそーれ」と書かれていた。

有名な言葉なので意味は分かっても、語源が全く不明だ。


「うちなーし、ってなんだっけ」

「し、は知らんけどうちなーは沖縄のことだな」


民俗学でもやってんのかというくらい、ダンタリオンの知識の書が発動している。

……いや、実際持ってるわけでなく、こいつを召喚するとそういう感じで出て来るらしいことを最近、覚えたので。


「ツカサ、きーさちゆでぃくぃみそーれー、ってわかるか?」

「わかるわけないでしょう」


自分の肴に箸をつけながらあっさりいなす司さん。


「司くんに聞いたってことは、警察がらみかな」

「おっ、そういうところから、ひも解くか」


ふつうはわからないものはわからない。

紐づけて考えるまで行かないのがふつう。


ふつうという言葉がわからなくなる面子ではある。

森さんも考え出した。


「規則性はあるよね。海人うみんちゅ山人やまんちゅを考えると人は『ちゅ』、になるとか」

「じゃ、あれだ。警察呼んでください」

「「……………」」


どうしてそんな簡単に、推測ができるのか。

オレと司さんは忍のものすごい直感的な発言に思わず閉口。


「なんでわかるんだ?」

「って当たりなの!?」

「お前が当てたらつまらないけど、この二人が当てると小気味いい感じがするな」


そうだ、とは言わないがそれは肯定だ。

ていうか、オレが当てたらつまらないってどういう意味だよ。


ダンタリオンは機嫌よく、黄色い三ツ星のついたジョッキを傾けた。


「真ん中のはよくわからなかったけど、さいごに『そーれ』がついてた」

「めんそーれってようこそとか言う意味だよな。英語で言うとウェルカム的な」

「言い方を変えると、よく来てくれました。……来てくれたってお願いに対してしてくれた、みたいな感じしない?」


それが正しいのかどうかオレには判別不能だし、どうしてめんそーれの「そーれ」からそこに引っ張ってこられるのかも理解できない。

そんなオレを見てか司さん。


「あぁ、来てくださいました、と言い換えると『ください』に当たるということか」


この人、森さんのお兄さんだ……!


変なところで変なふうに、実感してしまった。


「「公爵、もう一回」」


アルコールが入っているのかいないのかわからないテンションで口をそろえる二人。


「きーさちゆでぃくぃみそーれ~」


酔っ払いみたいなテンションでダラダラ応えているダンタリオン。


「ほら、聞きなおすと」

「確かにきーさちは警察に聞こえる。……真ん中だけ言われると全くわからないけど」


そのまったくわからない真ん中を、推測で埋める作業は多分、クロスワードに似ている。


「というか、どこで切ったらいいのかわからない」

「きーさちゆになると確かに、けーさちゅ、みたいな」

「だからアホなんだお前は」

「なんでオレだけアホ扱いだよ!」


たぶん、切るところを間違えたんだろう。

余計なことを言ってしまった。


「や~ふらーやっし」

「すっげぇムカつく! 今の絶対バカにしただろ」

「すみません、全然わかりません」

「私も~」


こいつ、多言語対応だ。

もう相手にするのやめよう。


オレは出来立てのチャンプルに手を付ける。

ゴーヤチャンプルなんて有名だけど、要するに、呼び方が違うだけでこれは無難に炒め物だ。


そして、そんなふうに。

結局、最後に言われた言葉が、何を意味するのか明らかになることもなく……



南国のバカンス一日目は、つつがなく(?)終了した。

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