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6.【感想】とても、ために、なりました。

「っ! すみません自分、無理です!!」


脱兎!


「うん、まぁ……非日常空間だよな」

「ここを仕事以外で日常にしてたらその人怖いよ」

「とりあえず、当日のメンバーチェンジしといてくれ」


橘さんが、一般警察の責任者に指示を出している。

大人の方が、恐怖を知っている分こういうところには弱そうだ。


「以前は、SPR工法といって機械に自動修復させていたんですが……」


何事もないように説明を再開する職員。


「先ほどのアメダッシュ同様、神魔の方々が確実に直してくださいます」

「!!!」


よく見ると、動いていない機械の向こうに、小さいおっさんがたくさんいる。

何あれ怖い。


「あ、ああああれは何かな~?」


勇気ある誰かが聞いた。


「あれはアパーム様と同じ系統のインドの土の神様の……ご眷属、というのですかね。西洋ではお手伝い妖精とかいるらしいんですが、そんな感じです」


どんな!


職員にもよくわかってないらしい。

多分、元締めの土の神様が仕切ってくれるのでそこだけ押さえておけばいいんだろう。


「小さいおっさんだと思うから怖い。北海道にもコロボックルとかいるでしょ」

「いや、見たことないからわかんねーよ」

「私もない」


ではなぜ「いる」と言ったのか。

ともあれ、小人と言えば聞こえがいい。


「靴屋のおじさんが夜のうちに、くつが仕上がってたっていう……」

「そんな感じ?」


どんな(二度目)。



「昔から世界中にお手伝い妖精の話はあるよね?」

「うん、ブラウニーとかシルキーとか……ゴブリンも元々そうだったらしいけど」


忍と森さんと雑学コーナーが始まっている。


「ゴブリンてよく聞くぞ。雑魚キャラっぽく出てくる……」

「元はお手伝い妖精だったらしいよ。日本だと山男とか」


聞けば聞くほど、訳が分からなくなりそうなので、またの機会にすることにする。


「妖精か~俺は日本人だから眷属、とかの方がなんとなくわかる感じするけどな」

「属する者、ってだけだもんな。難しい言葉使うな、日本人は」


と、これは日本語ペラペラのルース・クリーバーズ氏。


「ちょっと暗いなぁ。あいつら、明るいのダメな奴なの?」

「上に上がって休んだりもするからそんなことないと思いますよ」

「じゃ、灯りつけるわ」


いうと、上に向けた手のひらの上に、なんの前触れもなく光の球が現れた。


「魔法だ。ふつうにファンタジーだ」

「ふっふっふっ どうだ、驚いたか」

「ファンタジーって要するに中世の西洋風だもんな。ルースの国ってどこなんだ?」

「……………………西洋」


言いたくないらしい。

橘さんも神魔を相手にしている仕事柄か、割と適応が早い。

というか、外国人だからそういうものだと思っているだけかもしれないけど。



だとしたら大いなる間違いではないかとは思う。


「便利ですね。その魔法って覚えたら誰にでも出来るんですか」


この空間に降りる機会が多いからだろう。

職員の人が聞いてきた。


「素質がまず必要だな。魔術っていうのは構成も云々」


無理だということはとりあえず、分かった。

説明をする気がないのも、すごく分かった。


「そんなわけで、ごく身近なところで神魔の方々はコツコツと手伝ってくださっています」

「無理やり締めに入ったよ」

「今日は、とりあえずのプレ視察だから、どういう場所かわかればいいんだ」


意外と職員さんはドライだ。

さっさと元の仕事モードに戻って説明している。


「あとは実際見学路として、汚水から浄水までの過程が見られます」

「実地見たいです」


即答した忍のおかげで、全員で再び移動。

一度外に出て、別の入り口から地下に入る。


高さは2.8mに制限された車が通れるくらいの道で、駐車場パーキングの入り口をほうふつさせた。


その先は、見学者を意識してか明るく、駅の通路のように白いコンクリの地下道の壁にはパネルが張られている。


それを過ぎると巨大なダクトの前に集合だ。


「工場見学という感じがする」

「これは消臭ダクトですよ」


匂いが漏れているのか、不知火がしきりに前足で鼻をこすっている。

相変わらずの巨体だが、ちょっと和む。


そんな不知火は外に出ていていいよと森さんに言われると姿を消した。



「沈殿池を通って反応槽。ここにある活性汚泥の中には多数の浄化バクテリアが存在しています」

「物理ろ過と、生物ろ過もするんだね」

「アクアリウムと一緒だ」


例えがどうなのかと思うが、説明からふと気を逸らすと、確かに普段では入れない場所だ。

すっかり、大小のパイプや柱が林立する広い地下施設の中にいる。


……来る前はあーだこうだ言ったけど、忍の言う通りだな、とちょっと思った。


「反応槽では微生物が活発に働けるように空気を絶えず送ります」

「……この石みたいなのから空気が出るんですか?」


誰かの質問に見ると、結構な勢いで、空気が水中から吹きあがっていた。

その中央にあるのはただの石……のように見える。


「それも神魔の方々からいただいたものですよ。なんでも風の神様が力を入れてくれているそうで。全く電力も何もかからない、究極のエコですね」


日本、地味に恩恵受けすぎだろう。

もっとも、輸入に頼る部分も多かったので、燃料の類は特に、こういうことになるのだろうが。



「忍ちゃん! 川がある!!」

「……なんか、魚がいるんですけど」

「それは再生された水で飼ってるんですよ。これくらいきれいになるんだということで」



へぇへぇへぇへぇ。


ほぼ人数分のへぇが返ってきた。

きれいな砂利が敷いてあって、水草も植えてあるし全くよどみのない小さな水路には、メダカのような魚が多数行き来していた。


隣は人の肩くらいまでの高さがある巨大なパイプ。

通路というより、パイプの通る道のわきを、人間が通らせてもらっているという感じだ。


「本当に映画みたいだな」

「しかし、これは子供は喜ぶ」

「お前が喜んでいる」


プレのみ参加の二人は満喫した模様。


「あー意外と面白かったな」

「未経験のことは体験してみれば、大概面白いものですよ」


地上に出て、大きく伸びをした橘さんに清明さんがそう笑いかけている。


「というか、オレは神魔の影響は地味に細部に及んでいて驚きました」


まさか天気予報までそっちが入っていたなんて。


「共存というのは素晴らしいものですね。足を引っ張りあってもいいことないですから、秋葉君は引き続き、仲介お願いしますね」

「…………………はい」


さりげなく仕事のノルマを与えられた気分。


「お土産にマンホールカードをどうぞ」

「あ、これ流行ってるんですよね。地域によって特徴があるとか」

「ふーん? 日本人てこういう細かいこと好きだよな。……ところでこれ、売れる?」


ルース・クリーバーズ。

神父ではなく、金で動く人間の予感がしつつ。



帰りは見学者限定のマンホールカードをもらって終わった。


他の様々な施設にも神魔のサポートが入っているらしいのだが、とりあえず今日はここだけでお腹いっぱいという感じだ。



今、この国にいる多くの神様は自然の化身が多いわけだけど……


つまり、その恩恵を受けるということは究極のエコなのではないかと思う。



共存共栄は、どこまで可能だろうか。



ここを見た小学生たちが、無機質な機械ではなく、実際そこに存在しているヒトたちが手を貸してくれているんだということを、理解してくれたらいいなと思う。



「秋葉、私のマンホールカードをあげよう」

「いや、オレ持ってるし」

「アパーム様の姿入りだ。きっと何かご利益がある」

「お前、捨てられないしどうしたらいいかわからないから、オレに渡そうとしてるだろう」

「……………………そうだね」



マンホールマニアには涎垂ものだろうから、いつかそいつと出会えることをオレも願う。



必要なものが必要な人に届くのが、一番だ。

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