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2.神のしもべはかく語り(1)

今回は、人間の失踪事件です。

新キャラが出てきますが思いつきにつき、今後の登場は先行き不透明。

この国には、多種多様に海外の宗教を信奉する人々がいた。

礼拝用の独立したモスク、はさすがに数少ないが類似の礼拝施設や、神社、寺はもちろん、次いでよく見るのが教会だった。

しかし、教会は、今や地方にあるかなしかの存在だ。


天使の冠する神を崇める場所。


十字を掲げたそれは、2年前の終末の始まりを経験した人間には、嫌悪の象徴でしかなかった。


それらを信仰する人々もほとんどが被害者であったにもかかわらず、迫害も起こった。


その神に祈る者の姿は今はない。



「敬虔な信者は、それはこっそりお祈りとかしてるとは思うけどね」


忍が背伸びをしながら言う。

今まで、ずっと端末を前にして、情報を洗い出してくれていた。


「敬虔な信者は、信仰に自信があるなら日本を出たほうがいいっぽくないか」

「そこら辺は日本人の私たちにはよくわからない、価値観だよね」


そこまでして唯一のカミサマを崇めたいなら、ふさわしい場所に行こうとは思わないのだろうか。

日本にはもう、その人たちの居場所はなかった。


ないはずだった。


「そしてお人好しな日本は、居残った教会関係者が迫害されないように保護します、か」

「この国にいる以上、ルールに則って過ごしてもらうけど、ちゃんと守ればいいですよっていうのは確かにあるよね」


スパイとかいたらどうするんだろう。

宗教に詳しくないオレはふと、思ってしまう。


もっとも宗教は人の心の支えになるもののはずだから、それを折られてしまった人たちは、鞍替えをするわけなのだが。


「過激派な教会関係者は、もはや思想犯状態だし、逆にふつーに人のためになりたいっていう神父さんや牧師さんもいる。そんなの宗教に限らず、何だって同じことだ」


ふと、以前忍が言っていた『2対6対2』の法則を思い出した。


「それで、その教会って……行っても大丈夫なのか?」


何度目か、同じことを聞く。

今回の仕事は『元教会施設を管理している神父に会うこと』だった。


なぜ、外交官の自分にそれが言い渡されたかというと、一言で言えばアレだ。



橋渡し役。



って、それ神魔だよね。

確かに教会は神といえば神がらみだけど、どっちかっていうと現在「神魔」として在住してるヒトたちとは、まったく関係ない方向性だよね。


……「神魔」の「神」の中にはそっちの世界滅ぼしそうな勢いで天使よこしてきたカミサマは入っていないはずだ。


ちょっと腑に落ちない。


「あくまで元、だよ。今は十字架も取り外されて、単なる集会所と化してるわけだけど、別の場所にいた神父2人とシスターはそこに残っている、というのが、経緯」


彼らが聖職者であることは秘密裏になっているそうだ。

民間人を装って、管理人として過ごしている。


そして、その内の一人が失踪したというのが今回の、はじまりだった。


「失踪とか普通に事件だよな。それ警察の管轄じゃない?」

「教会関係者だから、そこはあんまり公に出来ないみたいだよ。しかも、何やら力持ちな感じの人らしく」

「……力持ち?」


オレの脳裏には、巨大な岩を持ち上げているゴツムキな神父の姿しかよぎらない。


「力士とかそっち系じゃないから」

「うん、惜しいけどそういうイメージしかなかった」


ゴツムキな話をすると、それはそれで見たいと忍は笑う。


イスごと回して振り返った。


「特殊な力、退魔って言えばいいの? エクソシスト? ……というと、怖いイメージしかない」

「映画のアレな」


随分古い映画で見てないけど、階段をブリッジ状態で駆け下りてくる少女のシーンは割と有名だったはず。

普通に怖い。


「データでは法術、ってあるけどイメージがつきづらいね」

「中二病満開な感じで、イメージしていいのかそもそも謎だよな」


現実の話であるからして。

ファンタジーの回復役とかそういう次元の話ではない。


「あー、おれそういうのも嫌なんだよな~悪霊とか怨霊とか邪悪系なヤツ」

「悪魔もその人たちからすると、邪悪系に分類されていたわけですが」

「そこは身近過ぎて、感覚狂ってきた」


日本は平和だ。


「私は悪霊って言うと、日本だと陰陽師のイメージが強すぎるな」

「確かに。悪霊退散って気合っぽいし……というか、この仕事、断りたいんだけど清明さん直なんだよな」


清明せいめいさんは、宮中に出入りする陰陽師。……らしい。

らしいというのは、名前がとか格好だとか第一印象だとかがそうだったからで、実際のところはよくわからない。


ただ、2年前にオレを介してダンタリオンとやりとりをした人なので、おそらくダーク系に強い術者なんだと思う。


「清明さんは気合で悪霊退散しているイメージがない」

「……ぱっと見、穏やか系な人だしわかるけど、その話はもういいから」


そういえば、電話越しだが直に話が来たときに、そんなことを言っていた気がする。


失踪した人は、特にずば抜けた力を持つらしく……言ってしまえば、この国における神職や陰陽道に属する者に近いんだと。


あ、それが退魔師とかそっち系ってことなのか。


いきなりの話でついていけなかったが、忍と話していると整理されてきた。


「国で『保護』したがる理由はその辺にあるんだろうけど、それじゃあ神魔がらみの何かはある可能性があるよね」

「そうなるとやっぱり警察の仕事じゃないの?」

「神魔……特に駐在する悪魔のヒトたちは何か知っている可能性があるから秋葉に、ってことでしょ」


そうか。

確かに、天使と反対勢力の神魔は『人間の神のしもべ』など快く思っていないだろう。

特に、悪魔は宗教でくくってしまえば同郷だ。

そんなことは口が裂けても言えないが、失踪が事件だとすればどこかしらで情報が流れている可能性はある。


……情報が、どこかしらで。


「なぁ、結局、情報を集めろってそういうこと?」

「どういうこと?」

「オレ、情報通の在日神魔とか、真っ先に思い浮かぶの一人しかいないんですけど」


あぁ、と忍はすぐに察してくれる。


「そうだねー公爵に聞くのが一番早いね」


結局、あいつかよ。


「で、お連れは今回、誰にする?」

「……選べんの?」

「人間がらみの事件なら、ふつうの武装警察推奨だし、安全度を優先するなら……」


悪いが、他に指名したい人間が思い浮かばない。


今日も、仕事を増やします。


「司さんで」

「いいと思うよ。公爵に牽制かけられるの司くんくらいだし」


うん。

地下賭場以来、すっかり線引きされてるもんな。


最近、忍と組んでもらうと護衛というか交渉面で割と有利に進められる気がするし(対ダンタリオン限定)。

越権行為は基本しないけど、普通にフォロー力半端ないから安定だわ。



むしろ、越権行為を推奨したい。



「結局いつものメンバーか」

「えっ」

「えっ?」


……。


「お前、行かない気だったの?」

「だって教会関係あんまり興味ないし。人間あんまり興味ないし」

「問題発言しないの! 興味で仕事しないの!」

「秋葉、興味とモチベーションはすさまじく比例してるんだよ。私の場合」


オレもだよ。

むしろ興味も何もない仕事毎日してんだよ。


しかし、忍と違って比例具合は仕事の速さとは関係ないので黙っておくことにする。


「司さん指名しておいて、お前指名しないとか、オレ、司さんに申し訳ないんだよ」

「どういう意味?」



巻き込み優先度で言ったら、お前が先だからだ。



敢えてこれも黙ってお願いを続ける。


「とりあえず、初回お試しで面白そうじゃなかったら降りてもいいから、来てくんない?」

「……それならいいかな」


まったく興味がなかったというわけでもなさそうだ。

とりあえず、お試しして面白かったらそれが良しという、忍の脳内ポリシーが目に見えるようだ。


そして、結局いつものメンバーで教会の方へ先に行くことになった。

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