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  京悟さんとメガネ(後編)

「自分は絶対かけないくせに」

「こっちの青い方がいいなー京悟さんいいのありました?」

「うーん、どうしても無難なの選んじゃうよな」


髪はカラーリングしているのにですか。

それとも色素薄いだけで天然なのだろうか。

性格を考えると、よくわからなくなってくる。


「橘さん、フレームなしの方が似合いそうじゃないですか」

「メタルフレームだとイメージ変わりそうだよね」

「とりあえずのつもりだったけど、結構種類があるしここで選んでいこうかな。忍ちゃんちょっとこれかけて」

「……私がかけて何の意味が?」


と言いつつ、断るほどではないのか忍はそれをかけた。


「……ちょ、怖い」

「どういう意味?」

「メガネは顔の一部っていうけど、ホントに印象変わるんだな」

「どういう意味ですか?」


そういう意味だよ。

いつも飄々とした感じから、めちゃくちゃ近寄りがたいインテリキャラになった。


「すごい似合うんだけど、似合いすぎて怖い」

「だからフレームとかによって違うでしょ。秋葉はこれかけろ」

「それ、ディスプレイ用のネタメガネだろ!」


牛乳瓶の底の厚さのごときレンズの丸メガネだ。


「面白いものが置いてなるなぁ」

「忍はこういうのよくみつけてくるよな」

「橘さん、これかけます?」


勧めるな。


「いや、マジメに選んでくれる?」

「私が選んでいいんですか」

「手伝ってもらえると……結構迷うんだよな」


やめておいた方がいいですよ。


「鼻メガネってさぁ……」

「なんだって?」

「あのよく、マンガとかである」

「それ、眼鏡屋に置いてないやつだろ。100均とか行け」

「用がないからいらないよ」


じゃあなんで話題降ったんだよ。


「やっぱりフレームなしの。フレームありでも、橘さんは細い方が合いそう」

「そうだなーなんか丸いフレームよりスクエアがシャープな感じ?」

「そういうイメージ? ……かっこいい系なのかな」


ちょっと照れたように一緒にフレームを選ぶ。

京悟さん凄いいい人だよな。

さすが隼人さんをいさめる良識係だ。

かつ、冷静な印象もそこはかとなく漂っている。


「色は?何が好きですか」

「無難にシルバーとか」


好きな色って言うか、無難さで選んでいる。


「あ、でもメガネっていつでもつけるものだから、その時来てる服だけに合わせて選ぶものじゃないって聞いたことあるよ」

「そうだなースーツじゃないけど、仕事とオフの日もあるし、アパレル関係でもない限り派手っていうのはやっぱり……」

「結果、無難な色っていうのは正解なんだと思う」


つまり汎用性が高いってことだな。


「ビジネスマンは心理的にブラック、ブラウンがいいとかもいう」

「なんで?」

「信頼感を持たれるんだって」


恐るべしカラーによる心理効果だ。みんな、騙されている。


「メタル素材のシルバーはクールでシャープな仕事のできる男、だって」

「いつの間に調べてるんだよ。でも、橘さん、無難な上にそれだけ印象もいいなら、シルバーでもいいんじゃ?」

「個性やトレンドは強くないけど、逆に誠実さや清潔感にもつながるみたいだよ。更にスクエアがベストだって」

「それってさっき忍ちゃんが言ってたやつだよな」

「個人的な印象から言っただけだけど、私は似合うと思うからそれに一票」


流れまくる情報……つまり、トレンドにはあまり興味を示さない忍だが意外とセンスがよかったりする。観察眼のたまものだろう。

本人の立場で考えてくれるのも、ポイントだ。


「じゃあこれにするか」

「推してはみたけど、自分で納得するの選んでくださいね」


あんまりこだわりないみたいだしいいんじゃないか。


そして、橘さんは新しいメガネをゲットした。


「やっと視界がクリアになった……これで人様の犬のしっぽ踏まなくて済む……」

「踏んだんですか」

「なぜか野良猫のしっぽも踏んでしまい」


見えないって大変ですね。


「眼鏡屋って用がないから、ちょっと楽しかった」

「オレ初めてだから珍しかった」

「そっか。楽しんでくれたならよかったよ。俺も助かった」


あーなんていうか、平和だな。


近年(?)稀に見るなんでもない事件っぷりだ。

……橘さんにとっては大事件だったろうけども。


「食事くらい奢ってやりたいとこだけど、時間までに戻らないと」

「全然、かまわないんで行ってください」

「じゃあ」


……。


「あのさ」

「?」


オレはついその後ろ姿を見送りながら、しみじみ言ってしまう。


「なんか、こういうのが普通なんだよな」

「まぁ、普通っていうか、普通だよね」


いつも周りで何かしらが起こっているので、拍子抜けなくらい平和に思えた。

もちろん、この平和さがつまらないなんて思うほど、ゴタゴタなど望んでいないので、

不満はない。


むしろ。


「平和だなぁ」


橘さんのメガネ選び。

なんというか、何事もなさ過ぎて、幸せすら感じてしまった昼下がりだった。

ほんとうに、なにもないのが日常。

隼人乱入の予定もありましたが、×2編ではあちこちに顔出してるので自重してもらいました。

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