4.すべては偶然か、必然か
専門職と話をすると、素人が語るより納得してしまうものだ。
速攻、我に返る。
「そうすると、局長の和さんは鬼平と同じ理由で和なんですか」
そして、すごく真面目に思いついた。
「あはは、今度会ったら話しておくね」
「やめてください! 殺されます!」
弁解は三秒くらい待ってくれると言いそうだが、はーいいち、と同時に発砲される危険性しか思い浮かばない。
「あの人はあれで真面目にこの国のことを考えてくれているよ。……タバコは体の為にもそろそろやめてほしいけどね」
結局、アレとか言われている局長だった。
言霊。
言葉の持つ力。
それは結局、他のどんな力とも同じなのだろう。
使いようによっては、良くも悪くもなる。
小さくも大きくもなる。
そして、暗喩。
膨大な言葉の奥にある、本当の意味。
それをみつけるには、あまりにも世界には言葉が多くあふれている。
もっとも、オレたちは、それをもって意思を交わしているのだから、当然のことかもしれないが……
「ところで」
オレは聞いた。
「清明さんて、偽名ですよね」
「そうだね」
これはもう、初めて会った時に本人の口から聞いていること。
「安倍晴明から取ってるんですよね、やっぱり」
「まぁそうなんだけど」
「晴明じゃなくて、清明なんですか?」
「……」
なぜかちょっと黙る清明さん。
うん、どっちでもいい。
みたいな空気が一瞬漂ってきた。
「それね、登録する時に和さんが間違えて」
まさかのヒューマンエラー。
まさかのイージーミス。
「呼ばれる音は同じだから、別にいいんだけど……うっかり僕の方が書き間違えることもあり」
「間違えるって言うか、そっちが正しかったんですよね?」
「どっちも偽名だから、何が正しいかはわからないよね」
そういって苦笑する。
名前の意味。
その漢字自体の意味を素直に取るのなら。
この人は「清」「明」でもいいんじゃないかと、なんとなくオレは思った。
20200513に、ベースを書きました。
ので時差があり、連載に合わせて何か所かは修正。
清明さん、漢字間違ってるよ事件は実話であり、連載しばらくしてから気づいた作者のイージーミスです。
すみません、清明さん(晴明って調べて書いてたつもりだった)。
でも後から考えると、晴れより「清」が合う生い立ちなので、それでよかったと思います。