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EP4 .二年前、あの日(2)-現在へ続く道

宮中の術士にどんな人間がいるのかはわからない。

だが、「近々、魔の者と接触した人間が真実を携えてやって来る」みたいな予言じみた託宣が下っていたらしい。

すぐに拘束されたのは、速やかに内部へ通すため、そして和さん……のちの護所局局長が言った、人か人でない者か、を判別するための結界を通すためであったらしい。


日本は宗教国家ではないが、皇室は神式だ。

魔の者と絡むかというとちょっと違う。そこで清明さんのような陰陽系の術者が対応をすることになっていたのだという。


違いがよくわからないが、教わったイメージで言うと神道は魔を祓うことはできるが、使役はしない。陰陽師は妖も魔も使役をする。

どちらかというと白と黒、神と魑魅魍魎の世界という関係にある感じだ。


……コアすぎて説明すらよくまとまらない。


「大体、わかった」


オレの方の話は理解した模様。

凄いな、この人。


「もしかしたらと準備はできているんだ。ただ、橋渡しになる人間がいなかっただけで」

「橋渡しって……」

「どこかに属している人間じゃ駄目なんだ。その悪魔もそれがわかっていて君を間に通したんだろう。……君は巻き込まれた形になるけれど、もう一度間を持ってくれないか」


間を持つ。


……


意味が分からず黙す。

正しく言うと、分かってしまった気がするからこそ黙した。


「その悪魔に、話を通してくれるかい?」


にこやか~


その後ろにいる、和さんは黙っていたが、清明さんの肩越しにふっと笑うとサングラスを外して、


ぎらりーん。


笑いを浮かべながらものすごい勢いでガンつけをしてきた。


怖い……!!!


「わ、わかりました! でもどこに行ったらいいのか……」

「たぶん、外に出ればその辺にいると思うよ」


あの悪魔はどこかで様子を伺っているのだろうか。それがわかるのか、清明さんはあっさり返してくる。


「良かったなぁ、清ちゃん。これで少しは話が進みそうだ」

「えぇ、和さんの助力のおかげです」


ホントにな!!


こうしてオレは事実上、悪魔と人間の両サイドに脅されながら、間に入ってその仲を継ぐことになった。

準備があると言ったのも相当なものだったのだろう。


ほどなくして、人間と神と魔の協定は締結され、日本国は霊的な護りを固め、天使の侵入を阻むことに成功した。

一方で復興は急ピッチで進み、たった2年で街には何事もなかったかのように人々の姿が行きかい、そして大きく社会構造が変容する。


名目上は人間のための執行機関の中にひとつ、部署が増えただけだ。


護所局。


しかし、その実、すべての神魔と人をつなぐすべての機関がそこに集約される。

新しく必要なすべての構造がそこに収められ、日本という国はその大きな変容にあろうことか、あっさりと適応し、あるいは適応できない者はその場から去り、日常が再び始まることになる。



清明さんとはその後、ほとんど会っていない。

中枢丸ごと変えたようなものだから、相当立場のある人だったんだろう。

今でも皇宮内は謎のままだ。

しかし。


「よぉう、秋葉ちゃん、元気ィ~?」


……護所局長となった和さん、もとい和めないので局長と当然呼んでいる、は今日もオレの顔を見て気さくに声をかけてくれる。

周りの人がいろんな意味で引くんですけど……


「元気です……局長も相変わらずですね……」

「もーう世の中禁煙禁煙うるさくなっちゃっておぢさん居場所なくてさぁ。……吸ってもいいかな」

「ダメです」


それくらいは言えるようになった。

悪い人ではない。悪い人では……


「おぢさん新しい銃を手に入れたんだけど、試し撃ちしてみてもいいかなぁ」

「ダメです! オレここの管理者じゃないんで! アレルギーの人もいるみたいなんで! この間、大使で会った神様が言ってました!!!」


ちっ、と舌打ちして出しかけた銃を戻す。

悪魔より怖いよ、この人。

それはともかく、と顎を撫でる。


「秋葉ちゃんは外交官が板についてきたみたいだねぇ。採用したおぢさんは嬉しいし、清ちゃんも喜んでたよぉ」


半ば、強制収監でしたが。


「……元気ですか、清明さん」

「魑魅魍魎じゃなくて、神魔のヒトたちと交流できて、嬉しいみたいだねぇ、おぢさんはどっちでもいいんだけど」


あの人も、ボーダレスというか元々そっちの人だから境界があいまいなのか、割と早い段階で橋渡しはいらなくなった。

そして早い段階で構想が固まった外交制度にオレは放り込まれて、遅れること数か月……


「対神魔の警備組織も出来てきたし、時代はおぢさんの時代になったようなものだねぇ」


あ、喫煙所作ろ。すごく広いとこ。

私物化計画が発動しそうなつぶやきが聞こえる。

完全分煙なら、文句は言うまい。


「おぢさん元々事務よりそっちの方が得意でねぇ、外交やらなにやらは別の人に任せるから当分会えないだろうけど……頑張れ」


何で最後だけ活舌がいいんだよ。

そう言って、にやりと笑った局長の姿を見たのが、1年半以上前のこと。




   「局長! 神魔の第35事件犯がこの街の……」


      パァン!


割と近くの喫茶店で、銃声が聞こえた。


   「おぢさん、今日オフなんだよねぇ、オフの日くらいゆっくりしたいし報告に来る暇があるなら解決しようとする部下が欲しいなぁ……」

   「失礼しましたーーー!!!」


オレはその日、オフだった。


今日は帰ろう。


その喫茶店の前を通らないように道を引き返して、本屋によって気晴らししてから家でゆっくりすることにした。


街は、すっかり平和ボケした日常の風体だ。

行きかう人は、外国人から神魔にとってかわったが、ごくわかりやすい銃声くらいで済んでいるうちは平和だ。


この日常が、今度こそ壊れないといい。

「2年前」に起こったことを、みんなが忘れてしまうくらいこの光景が日常になってしまえば、それが「変わらない日常」になるんだろう。


空が青くて、こんな日は暢気に過ごすのにはうってつけだった。


時系列的には天使襲来前。清明さんがあんまり絡んでこない頃。


地盤を作っておこうと書いたのもそこでしたが、あんまり説明的な話が続くと固いし、この人たち出てくるのもっと後だから、過去エピソードに回そう。というわけで、書いたのが2020.5.12

現在、主要キャラがほとんどそろったところで、UPしてみました。

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