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  霊装(2)ー食品も工芸品も添加物は少ない方が高級だ。

「再三注意はした。その場では聞くんだ。不承不承な。唯一の女子だから上からはちやほやされたりすることもあり……俺はそういうところで差別をするのはどうかと」

「女子として扱ってほしかったタイプですか」

「違う。待遇が不満だったんだろ。さっき言われてた通り、腕はいいんだ。が、独断専行が多すぎて、重要任務ほど組み込むとリスクが上がるから、外さざるを得ない。それに加えて、年齢の話」


……単に自己顕示欲やら自信が過剰なお嬢様ってことか。

お嬢様というほど、品がいい感じじゃなかったけど。ふつーといえばふつうな。


「年が大きい人は、女子に甘いからねぇ」

「お前この間、一緒に出張に行ったオレの部署の知らないおっさんに、新幹線の中で土産もらってただろ。あれ、甘やかされてんだぞ」

「そうなの? そっちの部署だとそれが普通なのかと思ってた」


こいつに「自分が若い女子」という意識はない。

甘えがないというと聞こえがいいが、ある意味鈍感だ。

口が裂けても言えないただの私見で、ただの感想だが。


とりあえず、そのおっさんはオレの隣の係の人で「かわいい子がいてさぁ、ついお土産買ってあげちゃった」などと言っていたのは今の今まで聞かなかったことにしていたことだ。


そんなオレの胸中をよそに、話は続いている。


「確かに生死のかかる職業で、独断専行はないね。命令は絶対とは言わないけど、仲間を危険にさらすような人間がなんで特殊部隊にいられるの」

「彼女は特別なんだ」

「……偉い人の親戚とかそういうのですか」

「それもあるんだが、霊装が他の隊員より格上で」


それって自分の力と霊装の力を勘違いしてるだけなんじゃ。


ものすごくいろんな意味で、厄介な要素しか見えなくなってきた。


「そもそも霊装に格とかあるんですか? 前に支給品だって……って、忍は知ってそうだな」

「うん、まぁ……基本的なところなら」


ごめんな、基本的なところも知らないんだわ。

司さんからすると外交部の基礎を知らないわけで、その辺は理解してくれたようだ。


忍の興味の範囲が広すぎるのはすでに共通認識の範囲内。


「通常の霊装武器や強化は術式と科学技術の応用だな。秋葉のイメージしている通りだと思う」


司さんが説明してくれる。

文字通り霊的な力は術者の分野で、科学はそれを継続固定させる部分にかかわっているらしい。

あとは純粋に服の素材が、最新技術の軽くて柔軟、かつ耐久性に優れるとか、そういうことだろう。


「その他にも、一部の隊員は本物の『霊装』を持っている」

「本物の霊装?」

「主に武器の方なんだが……つまり……あまり言いたくないんが、神剣だとか妖刀と言われる類のもの」


うわぁ、一木とかいたら飛びつきそうな単語出てきた。

司さんが言いたくないのは、そういう一般的でない単語をぽんぽん口にしたくないんだろう。

そこまで言って、忍に続きの説明を代わらせている。


「要するに、本物の霊性のもの。何かが宿ってるもの。大体、意思の疎通はできないみたいだけど、人間の手で加工されてない純粋な霊的な装備、ということ。……こんな感じかな、司くん」

「あぁ。そして、純粋な霊装は人工物より遥かに霊的な存在に対して強力だ」


……人工物より、天然物の方が希少価値が高くて高品質、みたいな感じでイメージしてしまう。

間違ってはいないだろう。


「……あの本須賀、って人はそれを持っている?」

「相性があるんだ。持てない人間もいれば、なじむ人間もいる。それは人間側でなく『あちら側』が選ぶことだからな」


食品とは明らかに違う話になってきた。

脳内を切り替えなおした方がいいっぽい。


ともかく、今は本来、次元の違う世界にいるという神魔が現出している時代。

オレたちが普通に暮らしていた二年前とは、違う次元があって、そもそもそこに存在していたものには、普通の物質ではまず適わない。


これは誰もが知ってる今の常識なのでまぁいい。


しかし、「あちら側」が選ぶとは?

まったくイメージができず首をひねっていると、説明を続けたのは司さんだ。


「神魔が刀に宿っていると考えるとわかりやすい。その場合、人間の都合で一方的に神魔を利用できるか?」

「逆にお願いして協力してもらうのが筋ですかね」

「そんな感じで、むこうからこちらを選んでくる。それぞれ気に入られたり、相性がよかったりすると使えるようになるんだ」


そうか、神魔の方が人間より高次の存在だもんな。

オレは自分で、理解の仕方をややこしくしていたらしい。


協力的な神魔のヒトには敬意と礼節をもって接しろ。これは護所局の基本方針。

人間でも同じだろうが、外交部ではとくにわかりやすい話だ。


「でも刀なんですよね?」

「まぁ……そうだな」

「意思の疎通はできないって、忍言った?」

「普通はねー 浅井さんと橘さんが持ってるよ。一度もそんな素振りみたことないでしょ」

「そういえば……!」


橘さんはよくわからないが、浅井さんは会う機会が多いので……というか、めちゃくちゃガチ戦闘を繰り広げていたことがあるので、それで気づかなかったということは、オレにはそれが普通の刀にしか見えていなかったということだ。


「え、じゃあ司さんは」

「……」


あ、聞いちゃいけないことだったろうか。

しかしオレは思い出した。

時々、司さんが刀を二本携行していること、それからそのうち一本を一木に触らせなかったこと。


……聞くまでもなかった。


「なんかわかったからいいです、すみません」

「いや、謝られることじゃないんだが」

「私もそこらへんどうやって合わせるのか聞いたことないな。よかったら教えてくれない? 一番実地に出てる人」

「普通に名前で呼んでくれないか」


なんでこういう時に言葉遊びが始まるのか、謎だがそういえばと手近なレストランに入って話を続きをすることにする。


オーダーを先にして、待ち時間に続ける。


「どうやって合わせるのかなんて俺にもわからないんだが……俺たちの場合はすぐすぐに引き合わされたわけでなく」

「引き合わされたって……やっぱり重要保管みたいな感じの場所?」

「術師が管理をしている。場所も皇居内だった」


古来から存在していた術師たちは、護所局に所属しながら、皇族方面ともつながっている。

むかしから皇居は東京最大のパワースポットとも言われていたし、警備の方面からもいろいろと都合がいいんだろう。


そういえば、オレも初めてダンタリオンと接触した後、連れていかれたのは皇居だった。


「神聖なものとかなら、まぁ妥当だよね。人が頻繁に出入りできる場所にそういうものがあるのはちょっと……」

「そうだな、神社に刀とかよく聞くけど、数があるならちゃんとしたところじゃないとな」


納得しながら、水を飲む。

なんだかんだで、しゃべりっぱなしになっていたので、喉が乾いていたことに気が付いた。


「おいそれとは立ち入れない場所だと思う。全員目隠しされてついた先が、すでにその保管庫の前で」

「目隠し!? それだけ重要地点!?」

「今は別の方法で個々に適性検査に応じてだから、そんなことはしないんだが」

「そうか。最初だもんね。まとめて18人、その霊装があるところに連れてかれたのか……」


何か、怖いんですけど。

自衛隊車両とかふつうに周り見えない車に乗せればよかったのでは。

と、思うがもしかしなくてもその上で目隠しっぽい気がするので口にするのはやめた。


「制度が確立していないとどうしてもクラシカルな方法になるんだね」

「そうだな。そこで清明さんの案内の元、何人かが『本物の霊装』を手にした」


……やっぱり清明さんか。

オレが初めて皇居に連行された時も、隣にいたの、清明さんだったよ。

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