武装警察24時(4)-試験結果
「あいつ、人の悪口は言わないけど仕事にはシビアだから、本気で褒められるって結構すごいと思いますよ」
「オンラインは大体いざこざがあるから嫌だと言っていたくらいだしな。まとめるのが上手いのは確かだし、そういう点では忍も見る目があるということか……」
「そこまで言われると、やっぱり嬉しいですね」
……やはり、いい人だ。
「彼女は渡り鳥状態だけど必ず情報持って帰ってきてくれたりして、有能な人でした」
……それって仕事の話じゃなくてゲームの話だよな?
いずれにしても現実と大差はない。
ちなみに司さんには詳しく話しても仕方ないが、忍は本来無言で集まって、無言でさっさとギガント討伐して、無言で解散するタイプのやり方が好きだ。
そんなにゲームをしている風でもないけれど。あくまでプレイスタイルの問題。
「居てくれるとあいつもちょっとおとなしいんですけどねぇ……」
「ちょっと待て、エアって忍のことか?」
「あっ」
言い慣れているのか口を滑らせたっぽい。いずれそのアプリは永久休会状態らしいので関係ないだろうが。
……だからこそ、「余計なこと」な訳か。
「忍がいるとあいつがおとなしくなるのか?」
司さんの素朴な疑問。
「彼女はまともにギルドが動いてない時に入ってくれて、次に戻ったときに一木が低レベルで入ってきたので」
ゲーム内にヒエラルキーでもあるのだろうか。
「高レベルで入って、助けてくれてたってこと?」
「いえ、最初は一番弱い初心者で。出るときは俺は抜かれてて……戻った時はレベル120くらいまで上がってましたよ」
どんだけやりこんでるんだよ。
「で、一木は課金廃人だけど、当時弱々だったから敬意でも払ってる?」
「というか、下ネタとか言っちゃいけない雰囲気があるのか、いる間はそういう話題率が低下します」
……一木にしては正しい選択だ。
元々シャンティスさんというギルマスの品行方正っぽいギルドに居心地の良さを覚えていたなら、汚染されたような感じだろう。
それ以前に主張もなくそんな雰囲気を画面越しに醸せるあいつがすげーよ。
「……と、言うことはお前もいない時はそういう話に興じると?」
「…………」
言い訳、考え中。
べつに司さんは悪いとは言わないと思うぞ。
多分、さっきみたいに巻き込まない限り。
人は、みんな住む世界がそれなりに違う。
……しかし一木、お前はなんで忍の空気は読めて、司さんは読み間違えた。
やっぱり異性か同性かの差なのか?
その程度だろう(納得)。
「良識の範囲内で」
浅井さんが選んだ答えは、すこぶる無難だった。
「あ、でもエアさんは参謀みたいな感じですごく慕ってる子もいましたよ」
しかし、話は逸らした。しかもこの話題になるとユーザーネームで呼ぶのな。
……普段、仕事でもあまり接点がないからだろうけど。
「オレたちは女性だと思ってたけど、ある時、男性だと思ってることが発覚して…」
ネカマの逆とかないだろう。多分、素だ。
「あの人、よく風呂入りながら共闘参戦してましたからね」
「…………」
「それって」
それで性別がわかるということは。
「ちっ、違いますよ!? 一木とそれで盛り上がってたとかそういうことは……」
盛り上がってたんですね。
そんなオレと同意の空気を醸した司さんに更にシャンティスさんは弁解している。
「とにかく、微妙なパワーバランスでした」
想像できるような、できないような。
シャンティスさんは、話題を終わりにしたがっているのでオレも司さんも追求はしない。
司さんはやはり、礼には礼を尽くすタイプだ。
「とりあえず、一木が問題児になり得ることはわかった」
「司さん、そこ!?」
「副長には、一木だけでなく、今回の試験対象者をすべて預けてある。優秀な代行者だから、あまり私物化されても……」
「私物化はされてません!」
フォローにしても、公私混同のラインはすごく曖昧だけどな。
「今日の件はともかくとして、明日の動きを査定させよう」
司さんのアレは、最低というか底辺な礼儀に対する返礼であり、仮にも仕事場で立場をわきまえないことへの戒めだ。
予め顔を合わせていたのが悪かったのだろうが、それもオレがいた時か。
……。
オレが引き合わせてしまったような気がして重責になりそうなので、あまり考えないことにする。
* * *
そして、数日後。
一木は見廻組に戻った。
あいつは、忘れていたんだ。
特殊部隊がそんなに甘い適性云々で入れる場所ではないという事を。
そして何より。
自分がまだ試験中の仮入隊の段階であったことを。
…………それを忘れてあれだけ騒ぐとか、まぁ普通はない。
舞い上がっていたのかも知れないがそれでも、ない。
後から聞いたところ正式採用されなかった理由は、テスト作戦遂行時の連携不足にあるらしいが……
司さん以上に。
シャンティスさんの日常が守られたのは確かだった。
浅井さんは一人称が本来は「俺」っぽいです。仕事や他人相手で「僕」と「私」を使い分けている感じ。
紳士な上に、気も効く人だ……
しゃんてぃすさん、この小説見つけることないと思いますが、ピンときたら110b……
なお、一木は先に一木自体のキャラが出来ていたため、フェザーさんはエピソードのみ拝借という形。ていうか、この扱い、怒られるだろ私(笑)