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  悪魔たちの遊戯(3)ー教会からの見送り

「魔界の大使とはいえ、あまり堅苦しいのは好きじゃないヒトだったから……皆さん笑顔で見送ってあげてください。あ、当然仏式じゃないので深く考えなくても大丈夫ですよ」

「……アスタロトさん……喪主って聞きましたけど、もしかして次の大使って……」

「どうだろうね。そうしたら歓迎してくれるかい?」

「……それ、今言わないとですか」


と、いうことはまぁ、歓迎ということだ。

一応、秋葉もまたそれなりに常識的なので、明言、避ける。

しかし、ダンタリオンにとっては肯定であることは明白であり。


結果的に、こうなる。


(秋葉ーーー! お前もか!!)



「アスタロトさん、不謹慎ですよ。……公爵がホントに死んでたらですけど」

「!?」

「それはどういう意味かな?」


忍の一言に、秋葉が大きく反応する。


 そうだ、シノブ。オレの血色の良さをよく見ろ!


 何か気づいたならつっこめ!


全力で応援するダンタリオン。

秋葉がダンタリオンを改めて見た。


「つーか、こんなに安らかな顔してるのおかしいよな」


(お前はそこで違和感かよ! もうなんでもいいから、すべての違和感に気づけ! そしてつっこめ! お前の得意技だろう! ……効果のほどはともかく)


自分で言っておいてなんだが、秋葉も応援しようとしたが、なぜか期待度が落ちると同時に、テンションも落ちた。


「まさか、演出とか質の悪い冗談とか……」

「公爵がこの手の演出をかけるとは思えない。自分が死ぬ役で誰得なんだ?」


(ツカサーその調子だ。そっち方面からでもいいから攻めろ。主犯はそっちだ)


さすが警察というべきか、それとも自前の回転力か。

捜査が専門でなくても、司が鋭いところをついている。


「そうだよ。……何せこのまま火葬場に直行なんだから、演出にしてはおかしいんじゃないのかい?」


(お前の演出だ)


アスタロトが続くが、ダンタリオンにとっては無意味だ。

演出も何も、棺桶に突っ込まれて、別れの挨拶をされているだけなのだが。


三人はそれぞれに疑問を持ち始めた模様。


(まぁいい、誰でもいいから一石投じろ。ほころびはすぐ出るぞ!)


「あぁ、予想以上に時間がかかってしまった。懇意にしていた君たちとはゆっくりお別れさせてあげたかったけれど、他にも人が来ているから」

「……」


さすが一筋縄ではいかない。

アスタロトは強制的に式を進行するつもりらしい。


「音楽隊もベレト閣下から借りてきたんだ。さぁダンタリオン、魔界のオーケストラで葬送をしてあげるからね」


待て待て待て!

ベレト閣下とか、これが茶番だって知ったらどうすんだ。


絶対怒り狂いまくるぞ!


そんな割と本気の焦りでも、表情はピクリともしない。

覗きこんでうっすらと微笑むアスタロトの顔を見るに……


この危機を脱しても、二段構えの危機が待っている気がしてならないダンタリオン。


「すまないけれど、男性はベルトコンベアまで棺を運ぶのに手を貸してくれないかな」


(なんだベルトコンベアってーーーー!)


「参列する人が多いから、直送できるように資金に物を言わせて敷いたんだ。火葬場直行で、君をあの世まで運んでくれる」

「……あの世ってこの場合、魔界では」

「オレ、悪魔が死ぬとどうなるか知らないから何とも言えない」


若干遠巻きになったいつもの三人。


(ツカサ、お前はふつうに強化受けてるだろ。運んでほしいとは思わないが)


複雑だ。

明らかに運び役を避けてるのか、服が白で目立つのが嫌なのか謎である。


「男性と言わず、わたくしが運びますわ」

「おや、君は?」

「わたくし、マリア・バードックと申します。公爵が危篤と聞いて、馳せ参じました」


誰も危篤とは言ってない。


「その前に、ご挨拶をしてもよろしくて?」

「こんなに美人で礼儀正しい女性にまで慕われるとは、ダンタリオンも冥利に尽きるね」

「まぁ、美人だなんて……」


(お前、そいつ悪魔だぞ。お前の嫌いな悪魔だぞ。なんでナチュラルにやりとりしてんだ)


シスターバードックは、失礼、と声をかけるとアスタロトの横を抜けて棺に横たわるダンタリオンを見る。


「ダンタリオン公爵閣下……」


覗き込むと長い髪が、こぼれ落ち、その表情を消した。


(意外だな。こいつがオレの……仮にも葬儀に来るなんて)


ケンカするほど、とは言いたくないがその肩が小さく震えていることに気づいて、ダンタリオンは、なんとなく神妙な気持ちになる。


口元に手をあてがい、嗚咽を抑えるかのようにシスター・バードックは……


「まさか急逝なん……て、ぷっ……魔界でも実力者のお方がこんなあっさり逝ってしまうなんて……ぶふっ……なんて不幸な……出来事が……くっ」


(とりあえず、こいつ一生敵だな)


彼女が打ち震えていたのは、堪えていたのは、説明するまでもなく笑いだった。

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