第三話 神田家の長兄 ダメの~ダメダメお兄ちゃん。
☆
とし兄が帰る?
「いや、とし兄が帰って来るってかさ、年末年始は家族親戚一同で過ごすってのが通例だけど そういう意味じゃなくてか?」
「さっき引っ越し業者と玄関で会って、とし兄の大量の荷物をサインして庭に運ばせたわよ。」
「ワッチは何も聞いておらんぞえ...」
一姉の言葉に俺と三咲が首を傾げていると、襖から丁度よくそのマヌケ面が顔を出した。
「ハハ~久しぶり~皆元気にしてたかい?」
神田家の長兄 《としお》30歳 独身
子供の頃から機械イジリが大好きの天然野郎だ。
そんな とし兄が小学一年の頃には将来は機械系の仕事に就くのだと宣言し親父も不思議と許可を出しやがった為に、コノ俺が有無を言えず大工の跡継ぎにされ現在進行形でエライ目にあってるその元凶とも言える。
まぁそれで長兄の癖にブラブラしてようモンなら アノ拳王以上に楽勝で弟の俺が昇天させてやったのだがーーー
21歳で、とし兄の作ったバイクのエンジンが世界のバイクレースの最高峰と言われるーー
[ロードレース世界選手権:MotoGP]
ーーで優勝をぶちかまし、その後 転職。
24歳で、車の世界三大レースーー
[モナコGP:F1世界選手権]
ーーの優勝車のエンジン設計に携わり、また転職。
んで26歳でNASAに入り、とし兄が開発したロケットエンジンが去年 宇宙に飛んだ。
ーーんで今 無職...ってバカかっ!!?
「おいっとし兄ぃッッ!!まさかNASA辞めて来たんじゃねぇだろな~~!!!」
「ハハっよく分かったね~ヤメちゃったw
お兄ちゃんもね~〔スピードの向こう側〕を見たくて色々な世界で頑張って来たんだケドね~、結局それが何なのか分からないまま自分の作ったロケットエンジンが宇宙に飛んで行ったのを見て心にポッカリ穴が開いちゃってさぁ...」
ーーと、しみじみに呟く とし兄に三咲が一言。
「イヤ...そもそも〔作る側〕は向こう側を見れんじゃろう? 乗る側に回らんと...」
「ハハっ...はっっっ!!!?」
「今気づいたのかよっっ!」
まさかスピードの向こう側どころか天然の向こう側を見るハメになるとは...しかも家族側が。
一姉とは違った恐ろしさがあるわ、ちなみに天然の向こう側はもう[不思議さん]だね。
これからは Mr.Strangeと呼ばせて頂こう
もしお笑い芸人あたりからAhongersの招集がかかったら観に行こうぜっ!!
無論リーダーはアイーンアンマンの志村けんだ!
...なんて。ケンちゃん今まで沢山の笑いをありがとう!!
「しずお...また変な事考えてるわね?」
ギクッ!!ホンット鋭いですね一姉様、そんですっわたすが変な事を考えておりますた!あっ変なことぉ~...
「ん~でも とし兄が無職なら家の手伝いでもさせればいいじゃん、どうせ暇なんだから。」
「っ!!!? それだ~~~っ!!」
一姉の言葉に俺は一姉のカカト落としを喰らって気を失っていた親父を直ぐ様 叩き起こした。
「親父っ親父ぃっっ跡継ぎが帰ってきたぞ!とし兄が大工継ぐってよ!!俺は解放だろ?自由だろ?いいだろ?」
「あぁバカ野郎コノ野郎!今更としおに大工のイロハを一から叩き込めれるかっ面倒クセェ!!」
「だったら俺が教えるよっだからいいだろ?」
「それに としおとはガキん時に約束しちまったからな~、自分を自由にする代わりに〔もし弟ができたらソッチを大工にする〕ってな。だから母ちゃんと頑張ってお前を...」
「ヤメローーー聞きたくネェーーーーーッッッつかトシオーーーーまだ生まれてもネェ俺を人身御供にしたんかーーーーー!!!?」
「ハハッバレちゃった~。」
初めて聞いた...俺はとし兄の謀略でレールの上を走らされていたのだ。
このままじゃマジで俺の方がスピードの向こう側を見ちまうハメになる...このレールの上を突き進んだスピードの向こう側 ーーー
それは〔大工の棟梁〕...俺の人生 詰んでんじゃん!!
これがホントの〔投了〕ですってバカヤロウ!?
「ハハっまぁでも それがあったから父さん達が頑張って、しずおや《 二葉 》が生まれ...」
「だからヤメローーーッ親のそ~ゆ~話は聞きたくネェーーー!!」
ったく、俺がもう少し幼かったなら
『お兄ぃちゃんのバァカ~』ってメイちゃんバリに泣いてるよ?トウモコロシ片手にさ...
そして とし兄の企てに乗っかった 父モ殺ス...
そんな俺の殺気を一姉は今は見ないようにしていた。
こんな兄と姉がいると飯もロクに喉を通らないぜ!
だがこのリバウンドの天才しず道様の食欲がある限りすぐに元の体重に追いつくぜ。ゴリ姉 見てやがれ!!
次回 超職人大家族。
リバウンド王 しず道の苦悩と二女の姉。
後で挿絵を載せた「日本のヒーローは異世界に喧嘩を売る。」
も連載してるから良かったら見てくれよな!