第十五話 ココアどこ?和菓子はダレ? まだ家の前編
「ただいま。」
「伊玖っっ!?」
「伊玖ちゃん!!」
「伊玖姉殿!!?」
何食わぬ顔して伊玖が帰ってきた。
「もうこんな一大事に駄目じゃない伊玖ちゃんっドコ行ってたの心配したんだから!!」
「 ?? その辺の野良 見つけに行ってた。」
まぁ二姉は『この非現実的な状況に何かあったらど~すんだ』と心配して言ってる訳だが、当の本人は現状に困惑する事なく何か問題でも?と言った感じで首を傾げる。
それどころか満面の笑みで狩りの成果を見せつけようと脇に抱えていた動物を前に突き出す。
「なんだコリャ...猫か?」
皆が伊玖の両手にブラ下がった子供の猫?を見る
ーーーすると、
『離してれす~~』
「「「「ぎゃあぁーーーーっっっ!?!?」」」」
伊玖の両手にブラ下がり俯いていた猫?が顔を上げると急に喋りかけて来た。
「ど、ど~なってるんだ?喋ったぞ!?」
「どこで拾って来たの??何か服着てるし!」
「伊玖姉殿!!それは一体っっ」
「みんなっ落ち着けっっ猫が喋る訳がないだろ?!」
そうだっこれは腹話術だ! 伊玖が腹話術スキルを覚えて皆を驚かせてるに違いない!!
『助けてケレれす~』
「今日から家族よ。名前は《サン》」
うん、声が...同時に....聴こえるよ?
「いやっていうか、喋るのは一旦 置いといて『助けてくれ』って言ってるがホントにどうしたんだ伊玖!!?」
動物が喋るのを一旦 置いて相手のヘルプをまず気にかけるとかサスガ豪兄っ俺が女ならマジで惚れるぜ!と言いたいが、確かに今のこの訳の分からん状況に情報収集は必須だ。
「という訳でオイ そこの妖怪。とりあえず その猫?を解き放て、その子は泣いてるぞ?」
「黙れ小僧っっお前にこの子の不幸が癒せるか? お前にサンを救えるか!?」
いや、癒すつもりもねぇし、救うつもりもねぇ。ついでテメェのイタイ頭も救えねぇ...が、とりあえず年上へのナメた態度に今すぐ ひっぱたこう。
「ちょちょっ落ち着いてしずお!?ホラ伊玖ちゃんもしずおの言う通りよ? その子 泣いてるし離してあげたら?」
「やっ!」
二姉が猫?を解放させようとするが伊玖が猫?を振り回し必死の抵抗をみせる。
『ナ~~~~~~~~~ッッ!!!?』
ディ~フェンス! ディ~フェンス! 断固死守っ断固桜木!!
「ーーーっておいっヤメたれ!? ソイツ目ぇ回してんじゃね~か!!」
「や~~~~~~~~ッッ!!!」
「コラ伊玖ヤメなさいっ」
んな感じで俺と二姉と豪兄が伊玖とワチャワチャしている所に『お婆ちゃん』と化した三咲が降臨する。
「これこれ伊玖姉殿よ、家族と言うならば お姉ちゃんが年下の子を泣かすもんじゃないどすえ? それにその子を待っている本当の家族も悲しませたらいけんえ。」
「うっ...」
三咲お婆ちゃんに叱られ伊玖が一瞬 黙るが、すぐに喚きながら聞き捨てならない爆弾発言を口にした。
「だって【村の人が言ってた】もん!!この子に家族はいないし家も無くてーーーどっかの小屋の軒先で寝てるのをほっとけって言うのっ??」
「.........。」
「.........。」
うん、俺だけじゃなく豪兄と二姉も固まっているね。
一見 人道的な素晴らしい事をしてる的な感じに聞こえるけど、それは勝手にその村から連れて来たって事だよね?
そしてそれがタダの猫?なら問題ないが何か喋るし服着てるし...誠に受け入れがたい衝撃的な事実ではあるがもし、もしもだよ? その猫?がファンタジ~のような人の生活をしていたとしたら これは【誘拐】だよ?
その事が頭をよぎった豪兄と二姉は顔をギギギッと逸らして三咲お婆ちゃんに助けを求めるが、そんな三咲も顔をまっ青にしながら俺を見る。
まぁ犯罪の隠蔽をお婆ちゃんの知恵袋で何とかするのも何か間違っている気もするし、ここは一つ一休さん的な俺の『とんち』で解決してやろうじゃないか。
「おぉっ流石 しず兄! 屁理屈や悪知恵を働かせたら右に出る者はおらぬえ!!」
ウフフ、何を『トンチ』ンカンな事を言ってるのかな三咲お婆ちゃん?姥捨山に連れてって一休どころか永遠に休ませて上げてもいいんだぞ?
「とにかく伊玖も未成年であろうが、自分より幼い子を例え本人の承諾を得ようと保護者の承諾なく連れ去ればこれは未成年者略取・誘拐の罪に問われる可能性が高い。ましてや本人の承諾も得て無ェし嫌がるのを無理矢理に連れ去る行為は暴力を用いた『拉致』、つまりは誘拐ではなく略取にあたる。」
この言葉に三咲、豪兄、二姉だけじゃなく伊玖も顔面蒼白にして口をパクパクさせる。
「ーーーがだ。伊玖が未成年でも罪には問われるが、未成年だからこそ許される事もある! この猫?と伊玖が友達で家に遊びに来た体にすればいいのだ!! もし伊玖が成人ならば、友達だろうが本人の承諾を得ようが未成年を家に入れた時点でアウトだし、《未成年とはいえ男の子》が《幼い女の子》をも完全アウトだが、【未成年の女の子】が【友達の年下の女の子】と【家で遊ぶ】、これを犯罪視する風潮はないし世間の目もそんなに厳しくはない。更には伊玖ではなく年下の三咲と友達にして対象との年齢幅を縮め、尚且つ 三咲と伊玖は名字が違うので親戚ってのは聞かれなかったから言わなかった事にして【違う家の女の子達】【三人が集まって遊んでた】と人数を増やす事で【二人きり】なんて猟奇的な空気もマイルドにする。何なら望を投入し空気をもっとアホマイルドにしよう。」
「うぐっ 流石 しずおだな...年が違くとも女の子 四人が遊んでいる姿を見て通報する人はいないよな...いたらそっちの方がおかしいと思われる。」
一応 俺の策に納得はしてくれたが問題はこの猫?をどうやって取り入れるかだが...まぁ対象の見た目てきにも まずはコレだな?
「おい三咲っっ お菓子!!」
「合点 承知の助っっっ!!!」
三咲は結ってる後ろ髪の中から飴とクッキーを出す。...いや お前は黒柳徹子か。
そして餌付けとばかりに飴ちゃんとクッキーを渡された猫?は、それが何なのかわからない様な感じで首を傾げていたので、俺はクッキーを袋から出し二つに割って片方を食べた。
するとそれが食べ物だと認識した猫?はもう片方のクッキーを口にするーーー
『んミャイ~~!?! 甘いれすっおいちぃれす~~~!!!』
んで、続けて俺は飴ちゃんの包み紙を取って猫?の口に放り込んだ。
『甘っっあまあまれす!?口の中がコロコロするれす~~?!?』
あれっ? この子 カワイくね? ーーーってヤバイ ヤバイ!! やってる事は誘拐犯が子供を拐かすのと同じ事をしてるのに、変な感情を抱いたら それこそタダの犯罪者だ。
俺は首を降ると続いて二姉にーーー
「二姉っっ 食いもん!!!」
「オッ、オッケ~牧場!!?」
二姉が白エプロンの前ポケットからどら焼を出した。...ドラえもんか!
そして俺はどら焼を猫?に渡しーーー
「いや~ゴメンね、ウチの伊玖が君とどうしても友達になりたかったみたいで。許してあげてね? はいコレお詫び、じゃあ気をつけて帰ってね。」
この俺の行動に皆が『えっ?帰すの??』と言う目で見るが、犯行が成人男子なら声を掛けた時点でアウトでも、伊玖ならば通報される前に解放して後は知らぬ存ぜぬの証拠はあるのかと突っぱねれば多分 無罪は取れると思う。
ーーーでもそれでは千・神田家のイメージが悪いし、それに懸念として伊玖の『村の人が言ってた~~』の件から、拉致の目撃者・もしくは防犯カメラに写っている可能性も否定できない以上 やはり帰す訳にもいかないのだがーーー
「じゃあね、バイバイ。 ...さてと俺達も家に帰って皆で《美味しいご飯》でも食べるか?《ほっかほか》の《ウマウマ》料理でも。」
俺はあえて突き放す事を言うと、猫?は、悲しそうな顔をしながら尻尾をペタリと地面につけ、その場にしょんぼりと佇んだ。
それを見て よしイケる。ーーと思った瞬間、
「テメェの血は何色だ~~~っっ!!?」
ゴンッッ!!
「あいたっ?!?」
俺の振るまいに伊玖がキレて襲いかかって来やがったが頭に鉄拳を落としてやった。
うるせぇ。そしてこれはお前の飼ってるタヌキが寝ている俺の顔面でクソした幼き日の分、いやお前が捕まえた蛇に咬まれた二年前の俺の分、いや...あと数十発は覚悟しておけ。
勿論 己の非道さは分かっている。
伊玖が言っていた【親がいない】【服を来てはいるがボロボロの小汚い布切れである】【軒先で寝ている】【腹を鳴らしていた】という事から、恐らくこの猫?が厳しい生活環境に置かれているという事は十分に理解してるつもりだ。
だからこそ《全て円満》で皆が《万々歳》の為に俺一人だけが嫌われ者となろう!! .....何で?
まぁいい。この貸しは宇海叔母さんと衛叔父さんにツケとくぜ?
と言う訳で、解放したのに帰らないなら私の掌の上で御座います ハイ。
さぁ貴女の心の隙間をお埋め致しましょう...
「何じゃろう...しず兄の満面の笑顔が目黒 福造のように不気味に見えるのは自分だけかえ?」
ハイ そこ、三咲君 黙りなさい。
俺は三咲をジロ目しながら猫?に近づいて頭を撫でてやる。
「あれ? そ~いや君は昔、ウチの近所に住んでいた子に似てるな~...あっそれでか、君をウチに連れて来た理由は! 確かにその子と伊玖と三咲は仲良かったからな~。」
そんな俺の言葉にピンときた豪兄が話を会わせて来た。
「そ、そうだな凄くそっくりだ! これは驚いて皆に見せに来る気持ちも分かるなぁ。」
なんて、とりあえず伊玖が猫?を拐って来た理由のすり替えをまず初めにする。
「えっ? いたっけ? しずおんちの近くにーー」
ゴンッッ!!
「あいたっっっ!?!?」
「邪魔すんじゃねぇ誰の為だと思ってんだこの野郎。」
俺は再び伊玖の脳天に拳骨を落とす。
そしてこれは昔、お前が取ってきた泥水入りのカエルの卵をタピオカミルクティ~と間違えて飲んでしまった分だ。透明なコップに入れんじゃねぇそんなもの!!
しかし俺と豪兄のそんな三文芝居にフゥっとタメ息をついた二姉が、伊玖と三咲の肩を抱いて猫?の前に歩み寄り声をかけた。
「ねぇ、もし良かったらこの子達と友達になってくれないかな? この子達も貴女と友達になりたいって!!」
二姉はド直球に猫?に仲良くなって欲しいと話し掛けると、三咲も又ーーー
「それはとても良い考えじゃえ、是非ともワッチと友達になって貰いたいもんどすえ?」
『えっえ? 友達...れすか?...ワタチと?』
くっ、これから俺の超天才的な なし崩し大作戦が開始されるトコだったのに.....は~~ったく、敵わねぇなぁ。そこには俺みたいな打算的な考えではなく本気でそうなりたいっていう二姉と三咲の優しい笑顔があった。
真に勝るモノはないってか。
「しょうがねぇなぁ。」
んで俺も頭をワシワシと掻きながら猫?に向かい素直に言葉を綴る。
「まぁ俺からも頼むよ、友達になってやってくれないか?約一名はホントに友達いねぇしよ...」
「なっなにを!!? 私には〔カラスの助〕や〔タヌ吉〕に〔ハクビシン太郎〕に〔アナグマ長七郎〕と〔イタチ侍〕と他にはーーー
『豪兄ぃ?』
『オウ!』
ーーームグッッ!?」
豪兄に後ろから口を押さえさせ伊玖を無力化する。
話が進まねぇしソレ人間じゃねぇ...ペットだし。
だがスグに反論して来た所を見る限り友達いない自覚はあるらしい。なんて可哀相な娘...俺みたいに友達なんて必要としない人間になれば人生楽しいのに ...クスン。
そして当の猫?は、それでも困った顔をしながらもコチラの申し出には今一歩 足を踏み出せずに縮こまっていた。
『で、でもアタチ、親もいないチ...働けないチ...村のミンナからダメなコらって.....みんなアタチと友らチになりたくないって...』
「ほうーーー?」 ペキポキッ
「豪兄、話進まねぇから。」
豪兄がシュンとして小っちゃくなった。
んで、俺は猫?に向き直るとーーー
【岩山両斬波っっっ!!!!】
猫?の頭にチョップを叩き落とした。
『ナーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?』
「ちょっ 何やってるのしずおっっ???」
「しず兄っ?!?!」
「しずおっっっテメェは長く生きすぎた!!!」
しかし俺は皆の事は無視し、猫?の頭をワシッと掴んだ。
「いいか クソガキ、友達ってのは使えるとか役に立つとかじゃねぇんだ。笑ってもいつも一緒に居たいかどうかだ!!お前の立場とか周りの奴とかマジクソどうでもいい!!! 友達になりたいって言ってくれる奴がいてアトはお前が【なりてぇか】【なりたくねぇか】だっっ」
『...でもアタチ』
「なりてぇかっなりたくねぇかだ!!!!!」
『うぅ...なりたいれす.....』
猫?は下を俯き涙をポロポロ溢しながら小さく呟く。
「....しずお。」
「しず兄....」
「やるな しずお!!」
「ふっ仕方ない、お前になら望姉か鏡姉との結婚を許してやっても...」
要らねぇよ、ブッ殺すぞ?
ーーーという訳で俺は猫?に再度向き直ると海よりも深い笑顔で話しかけてやった。
「ゲヘヘッじゃあ そ~ゆ~訳で、お前は友達のコイツらの元に自分の意思で遊びに来ぃーー遊びに来ぃーーー何?」
『...れ、れす?』
「お前はコイツらと友達なんだよなぁ? ならお前は友達の所に遊びに来ぃーーーー」
『 た? ...れす?』
「そう!! 誰かに何か聞かれたらぁ?」
『友達のウチに遊びに来たれす?』
「偉い!!! 君は友達なんだからウチでゴハン食べていきなさいっっ。」
『いいんれすかっ??』
「いいよっっっだって友達だもん!!!! ウチには何しに来たんだっけ??」
『友達のウチに遊びに来たれすっっ!!!』
「良く出来ました!!!!!」
「「「 .....しずお.....」」」
なんか皆が白い目で見てるが俺は情に流される事なく当初の目的である任務を遂行した。
「結局 しず兄はドコまでいってもしず兄じゃのう...」
まっそんなこんなで この猫?といい 見渡す草原といい 色々あったが、とりあえず今考えてもどうにもならん事は後回しにして先ずは飯にする事にした。
俺はしずお・フリークス、プロのハンターさ。
ハンター協会には賞金首ハンターやら美食ハンターとか色んな職種のハンターがいるけど、
俺は「はんなり」した女性がタイプだから
舞妓Haaaanターを目指そうかな?
次回 超職人大家族。
昆虫ハンターJK、またお前...またお前は.....
日本のヒーローは異世界に喧嘩を売る。も連載してるから見てね!