第十四話 みんなおまたへ 異世界へイクよ~くるよ~来たよ~。
~~ 元旦 ~~
俺は朝の五時にセットした目覚まし時計の音が鳴る前に目を覚ます、普段は寝坊助の俺も今日だけは早起きなのさ。
えっ?それは初日の出を観る為? ん~惜しい! じゃあ初詣に行く為? あっ段々近づいて来たよ!! 初売りセールで欲しい物を買う為? おっこれはもう正解でもいいかな!?
正解は...全員を起こしてお年玉を貰う為だーーーーっ!!
チャチャチャッ チャチャチャッ チャ~チャ~~
《火曜サスペンスの音》
っと、その前に一応 枕元に置いた靴下の中を確認しようかな? ーーーうん、お年玉は入って無し!! 敬虔なお正月信者は居ないもんかねホントに....
ちなみに一週間前のホワイトクリスマスの時にも枕元に靴下を置いていたのだが、朝起きたら三咲に漂白剤入りの洗剤で洗われていた。
まさかのサンタクロースから俺へのプレゼントが靴下をホワイトクリーンしマスに涙したもんだが、まぁサンタは狩れねどお年玉は狩れる!!
さぁ誰から起こしに行こうかなぁ ケケケ...
俺は自分の部屋を出るとすぐに自分の胃を擽られるようないい香りが漂ってきた。毎年の事ではあるが朝早くだというのにもう三咲と二姉が皆の朝食でも作っているのだろう。
狩りに出る前に先ずは腹ごしらえだよな? そう思って台所を覗きに行くと、やはり三咲と二姉が阿吽の呼吸で皆の食事を次々と支度していく様が観られた。
その連係やまるで格ゲーで99コンボ かました位の芸術さが垣間見える程である。
ーーってか妹達がこんな朝早くから仕事してんのにウチの長女ときたらトホホ... まぁ料理の出来ない一姉が調理場に来たところで『阿吽の呼吸』も、『阿吽呼の杞憂』になっちゃうよ。正にクソの役にも立たないし料理を駄目にしそうだしね?
「おや? しず兄 あけおめじゃのう、こんなに早く起きるとは珍しい。」
「明けましておめでとう しずお。どうしたの?」
「オウッ、そんなことより 二姉ぇお年玉。」
手始めに二姉から 御年玉ーーー略して
POcKEt MONey ゲットだぜ!!
...うん、三咲がゴミ虫を見る眼で見てる。早く謝らないとカミナリが落ちるなこりゃ、ピカピ~~!
「二姉様よ、ちょっと一姉を起こしてくるえ。」
「やめろっ!? 一姉を呼ばれたらそれこそ お前の命を『おとしたまえ』になるわっ! 冗談だよ冗談っ初笑いを取ろうと思っただけだ。ほらっ笑う角には福来るって言うだろ?」
ーーーっと危ねぇ、福どころか鬼が来るとこだったぜ。来年の事を言えば鬼が笑うらしいがウチの鬼は金の事を言うと普通に怒る...
「もう仕方ないなぁ しずおは...はい お年玉。」
「おぉっさすが二姉っっあざす!!」
二姉がエプロンのポケットからお年玉を出した。既に準備してるとはもうアンタが長女でいいよ!! で三咲が次女で一姉は鬼は外。
「二姉様は甘いのぉ~...」
三咲が肩を落とし呟くが俺の一年は今日の為に生きてると言っても過言ではないのだ。
「んで、他はまだ寝てんのか?」
「そんな事ないよ。豪兄はランニング行ったし、伊久ちゃんは野良狩りで望ちゃんは虫狩りしてくるって。」
何だ野良狩りって? 良い年した小娘が正月の朝早くに何してんの? お年玉狩りしてる俺のが全然まともじゃね~か...
まぁいいや、俺もちょっと外の空気吸ってこようかな。朝刊はもう届いてるかしら? なんて事を考えながら外に出てポストを覗くが新聞はまだ届いてなかった。
ぐぬっ、無ぇじゃねぇか...確かに元旦の新聞は分厚いし配達するのは大変だろうけどね、毎日お疲れさん!!
俺はそう思いながらちょこっと道路の方まで出て辺りを見回すが配達人らしき人は見当たらない...いやってゆ~かアレ?? 何も見当たらんぞ!? つ~かなんも無ぇ!!?
ウチがあって庭があって塀があって、でもその先の道路もご近所さんの家も何にもない!! ど~ゆ~事だ? 辺り一帯が更地というか草原というか.....
何で俺んちが『ポツンと一軒家?』
俺は思わず『目がテン!』になる。
こんな訳のワカラン状況にもう笑うしかないが『笑ってコラえて!』
ーーーってそれドコロじゃねぇっ
.....いや全部 それ『トコロ』さんではあるんだが。
こうなったら仕方ないっ奥の手を使うか!! 俺は家ん中に入り再び三咲と二姉のいる台所に向かった。
「三咲っ二姉っ、俺を打ってくれ!!」
「えっ!?」 「はっ!!?」
うん、二人がドン引きしてる。
「しず兄よ...そういうプレイは好き同士の者とな~~」
「そういう意味じゃねぇよ! 俺は夢見てんだよっ 家がポツンと一軒家なんだよ!! だから打ってくれ、夢から覚めるなら『今でしょ?』。」
だが二姉と三咲は互いに顔を見合わせ頷くと携帯で救急車を呼ぼうとしやがった。
いやっオカシくなってんのは俺じゃなくて状況だーーーと口で言うよりも論より証拠と、俺は三咲と二姉の手を掴んで玄関先へと連れていった。
「な、なんじゃこれは...」
「えっ?どうなってんの?」
二人も俺と同じくこの非日常な空間に茫然自失と立ち尽くす...
「なっ?俺の言った通りーーーゲフッ!!!」
三咲のコークスクリューパンチが俺の腹に突き刺さる。
「駄目じゃえっ! 夢は覚めんえっっ!?」
「うぐっそういうのは自分にやるもんだ...っつか拳を内側に捩るんじゃねぇ。」
夢から覚めるどころか逆にオチるとこだわバカ妹が。ったく一姉が前に放ったコ~クスクリュ~ブロ~を一回見ただけでマスターしてやがったとは...
末っ子 恐ろしい!
もとい末恐ろしい!!
何としてでも未来の一姉二世への進化は断固阻止せねば...
なんて俺と二姉と三咲が玄関先でキョドっていると、朝モヤの霧がかって余り良くは見えない草原の向こうから人影が見えた。
「おいっ誰か来るぞっ気をつけろ!? いやもうこの際あいつが誰だか金でも賭けてみよう!!」
「「豪兄に1票。」」
チッ...以外と二姉と三咲は冷静だった。まぁ外に出たのは豪兄とイカれ三姉妹の内の望姉と伊玖だけだし あの身長からして豪兄で間違いない。
「おう しずお、二葉に三咲も御早う...っていうか どうなってんだコレ?」
そう言いながら豪兄がやって来た。
「いや どうもこうもねぇよ、俺達も今気づいてパニクってた所だ。豪兄は?」
「俺も同じだ。100メートルぐらい行ったトコでモヤがかって何も見えないし、草っぱらだけで目印になる物もないから迷いそうなんで戻って来たんだ。」
そうなのか...確かにこれじゃヘタすりゃ遭難しかねないし動かない方がいいかもな。
「.....うん、何か忘れてる気がする? 何だっけ?? まぁ思い出せない事はどうでもいい事だ。虫好きと動物好きの奴って事すら思い出せないし、ついでに言うと二姉からお年玉を貰った事すら思い出せない。」
「ちょっしずお何言ってんの渡したでしょ!? いやそうじゃなくて豪兄っっ望ちゃんと伊久ちゃんを見かけなかったっ?? 豪兄のすぐ後に外出てったんだけど!?」
「おいマジかっ見てないぞっ!!この霧で遠く行ったら戻って来れないし危ないぞ!!」
「あっ思い出した。豪兄からはお年玉貰ってないや。」
「しず兄...」
二姉と豪兄が大パニックになり、この超モヤの一寸先は闇の中を我を顧みず突っ走ろうとするのを仕方なく止めてやる。
君達は知らんかもしれないがアノ三姉妹の闇の方がよっぽど暗いのだよ?
特に田舎暮らしという事もあり、望と伊久は朝の4時とかには真っ暗の霧がかった森ん中を野生の動物探しや虫の採取でよく探索に出ているのだ。
そして俺が千代田家に遊びに行ったりなんかすれば、俺を強制連行して初めて入る森を一緒に探険させられ幾度となく死線をくぐり抜けて来たもんだ...主に俺だけだが。
ってゆ~か俺も大工の仕事をしてそれなりに身軽ではあるが木や崖登りスキルは圧倒的に望と伊久の方が高く、更にはサバイバル知識・経験・技術なんてものを通り越して もはや『森に住まうモノ』レベルまである。
それこそ何処ぞの部族が木や崖を登り、虫や草を食し、薬草で傷や体調を治すのをサバイバルではなく唯の日常と言うように、馬鹿二人も手ぶらで森に入っては現地調達のネイキッドぶりにお前らの師匠はBIG BOSSかと思った程だ。
そして嵐の吹き荒ぶ薄暗い森の中で、JKが傘もレインコートもなくズブ濡れで木の枝を使って甲虫の幼虫を笑顔で掘り起こす姿や、地面を這って虫を追跡したり、
20メートルの絶壁をよじ登り鳥の巣から卵を一つ持ち去ったり、川の中から顔上半分だけ出して鹿の交尾を観ていたり、木の上から真下を通り過ぎる熊を観察していたりとコイツらの『もののけ』っぷりな姿に俺はいつも『ヒメ~』を上げていた。
もう俺を誘うのはマジでヤメテッ!!
《 この俺を解き放てっこの俺は人間だぞっっ》
なんて訳で俺がアイツらを心配した事なんぞ一度たりとも無いんだからね!!
「まぁ大丈夫だろ、アイツらが迷うトコなんて見た事がない。その内 フラッと帰って来るだろ?」
「で、でも迷わないにしても誘拐とかっっーーー」
「安心しろ二姉、誘拐が妖怪に敵うわけがねぇ...」
んなこと言ってたら霧の中からヒタヒタと足音が聞こえて来た。
ぽっくんは、しずっちゃま ぶぁい。
新しい世界で出会った女の子に
ともだチ○コをしようとしたら妹に「犯罪」 だと
怒られてしまったぶぁい。
最近はコンプライアンスが厳しすギルティ!
さて次回の超職人大家族。は
新たな出会いにびっクリクリ の一本でしゅ。
.....伊玖、覚えチェロ。