第一話 親父と俺とときどき妹。
大晦日...
東京都内のサザ○さん家の様な一階建ての一軒家にて、俺の第二の人生が始まろうとしていた事を当然 俺はまだ知らない...
「おいっ《 しずお 》!! 紅白歌合戦にチャンネル変えろっっウチは毎年紅白って決まってんだろ~がバカ野郎!!」
「ウッセ~な...いつ決まったんだよ、笑ってはイケないでいいだろが。」
「んだとコノ野郎!!いいからリモコン寄越せっ」
パチンコしない人には申し訳無いが、大工の原さんをガチムチにした様な感じの親父と一年最後の日をコタツで喧嘩するのは それこそ毎年恒例の事だった。
「あぁそうだ親父、お年玉くれよ」
「ああん?んだとバカ野郎っ!! いいか神田家は先祖代々【大工一家】として働かざる者喰うべからずでやって来たんだコノ野郎!! 小遣いが欲しけりゃ今建ててる吉川さん家の配水管工事をーーー」
「一昨日やったよ。」
「グヌッ生意気な...なら三丁目の田中さん家の配電盤工事をーーー」
「それは昨日やった。」
「ほう少しはやるじゃねぇか、だったら今駅前で建ててる八階建てのビルの窓をっっっーーー」
「それはサブさんにクレーン車だして貰って さっき終わったっつの」
「チクショ~~持ってけ泥棒ーーー!!!」
親父が腹巻きから取り出した五万を俺に投げつけやがった
「こんのクソ親父っっ大体こんだけの仕事してコノ程度の金額で済んでんだからボロ儲けだろがっっ!!」
「んだとバカ野郎コノ野郎!!学費は誰が出してると思ってんだ!! ホントならオメーは小学校卒業した時点で大工の跡継ぎとして俺の下で働く筈だったんだぞっベランメ~!!」
「ザケンナッ!?この令和の時代に小卒とかイカれてんのかクソ親父っっ」
「バカ野郎っ!腕に職つけて喰ってくには早い方がいいだろが!!だから俺も中学出てすぐに爺さんに弟子入りしてだなぁ...」
「中卒じゃねぇかっ!?何で俺の青春のがチョット短ぇんだよ!!」
「だから中学高校と入れてやったろがっ...
〔せめて高卒までは〕って死んだ母ちゃんの遺言でもあ...ヒンッ!!」
「ッッッ!? 泣くな親父気持ちワリィッつか母さんアリガトウ!!!」
親父は一升瓶を片手にベソかき始め、俺は天国の母さんに感謝した
まぁ明日の元旦が母さんの命日でもあるし親父も思う所はあるんだろうが、普段は冗談も言わないゴリゴリの超頑固一徹大工職人なので泣く姿を見ると流石にチョット引く...
母が亡くなって六年になるが
[ 鬼の目にも大晦日に涙 ]も毎年恒例なので、この日が近づくと正直俺の心もしずむ 俺しずお...
あっちょっとラップみたい。
なんて事言ってヘコむ気持ちを上げつつ、母さんの恩情で高校生にもなれた訳だが俺も来年は高校生三年生.....
だが特に夢も希望も無いし ついでに彼女もいないし友達も無ェ...といって吉幾三みたいに銀座で山を買おうともしないし絶望もしてないがやりたい事がまったく無ェのだ
それもこれも全ては俺の生い立ちのせいにある、いやそもそも先祖代々の大工職人ってのが元凶だろう
この俺《神田 しずお》満17歳は、将来は大工の跡取りと幼稚園児の頃から金槌を打たされ続けて、小学一年からはずっと土日祝日と春夏秋冬休みは親父の大工仕事を手伝っていた。
なので、中学3年生までは周りの同級生達も皆が休みの日は親の仕事の手伝いをしているとばかり思っていたものだ。
そう...俺は純粋なのだ!!勿論 今でも【身】も心も純粋だが...クスン
そんな幼少期を過ごしてきた俺は中学生になる頃には一人で一軒家、高校の時には一人で六階建てのビル位は作れる様になっていた。
勿論【作れる】と言うだけで実際は作ってないが、今までしてきた建築仕事の箇所を組み合わせれば実質一人で家やビルを建てた事にはなるのだ。
普通は家でもビルでも建てる際は元請けがいて、建築や電気ガス水道等はそれぞれの下請け工務店に任せる事が殆どに対し、
ウチの親父曰く『先祖代々大工一家の神田組は責任を持って全てを己達のみで完成させる』が信念らしく下請けの工務店は一切使わない。
当然『柱の一本も建てた事の無い大学出の社長に使われるのは御免だ』と建築企業からの下請けも一切やらない...
そうやってシゴかれてきた俺は建築に関する事は全部自分で出来てしまうまでになっていた。
[ビルを建てる時の鉄骨も一人で運べるの?]
はい 可能です。クレーン車で特殊な吊りかたで上げて、そのまま固定するだけなので【俺なら】できます。
[えっ?クレーン車 運転できるの?未成年でしょ?]
はい できます。温室育ちの方々には分からないかも知れませんが...おっと下から目線ですいません。
日本でも北は北海道、南は沖縄まで実家が農業・農場・牧場等の子は、早くて小学生位から親にトラクターやコンバインといった【機械車両】の乗り方を教わって仕事の手伝いをさせられます。
一般道・公道での運転は当然車両の免許は必要ですが、私有地・自分家の敷地内であれば無免許での運転も罰則はありません、
又 一般のご家庭でも〔農業高校〕や〔農業大学〕へ入学すれば、授業や放課後にでも教員の許可のもと機械車両を運転でき、やはり敷地内であれば無免で乗りまわす事が出来ます はい。
なるほど!それと同じで私も親に教わり、私有地でクレーン車やユンボ等の機械車両を乗って作業が出来るんですね!!
はい、私の場合は完全に違法です。ガッデ~ム!
ビルや一軒家を建てる際に、クレーン車を突っ込めるほど ドデカイ土地や庭を持つ方は余りいらっしゃいません。
だってここは日本だもの...なので普通に公道に止めて違法にやっております、はい。
まぁ皆さんも工事現場でクレーン車やショベルカーに乗ってる人をガン見しないですよね?
一応 私もメットとマスクしてバレない様に変装しておりますし、《親父の職人仲間とアメリカ合衆国 海兵隊は決して仲間を裏切らねぇ...》ので私は今日も捕まらず【別の意味で】身は綺麗で御座います はい。
ーーと誰に言ってるのか分からない妄想をしている所に、中2の妹が鍋を持って居間に入ってきた。
☆
「しず兄よ、さっきから何をブツブツ言うておるえ。」
ギクッ!? Σ(;`∀´) ヤベッ声に出てた?
「お、おう《三咲》...ちょっと親父に小言をな」
「そうかえ、まっ妹としては少しくらい身を汚す程度にはモテて欲しいもんじゃがの。
...あと海兵隊は見捨てないが正解じゃ」
「きやあぁぁぁ~~~っっ!!!?」
恥ずいっ恥ず過ぎるっっ!?そうか見捨てないが正解か~~って、そっちじゃねぇだろ!!バレたぁ~っ!!!
親父はベソかき俺はコタツで悶え恥ずか死にながらも妹は冷静にテキパキとテバサキを...じゃなかった鍋の準備をしていた。
うん ラッパーは諦めよう...んで、
この変な口調の妹 三女《神田 三咲》14歳
身長152㎝ スリーサイズは...
って言う訳ねーだろ!!コイツが浴室の体重計に乗ってる所に出くわしただけで平和の象徴のピースが俺の両目に飛んできたんだぞ...
つか眼を潰しても俺の記憶は消えないよバカな妹ちゃんウフフ。
まっ夜に口を縫われそうになった事は置いといて、俺達の母親が六年前に亡くなってからというものウチで飯を作れる奴は誰もいなくなった。
その時まだ小学2年だった妹は幼いながらも...いや幼かったからかもしれない...料理をする事で母さんを近くに感じたかったのだろう。
そこから妹は母さんの残した料理レシピを読み漁っては料理作りに没頭していき、いつしかコタツの上にはアノ頃母さんが作ってくれた温か~いーーー
【国際料理大会 優勝の料理】が並んでいた
ッナンデ!?バカジャナイノ!!? 普通は家庭料理とかでしょっ?
まぁ...そーいやそうだったのだ。母さんは若い頃に世界中を旅しては色んな国の料理を研究し、世界各国の料理コンクールを荒らしまくってたリアル食戟の女王だったとか。
そして日本に戻って親父と結婚した後も、色んな料理番組に出演したり、有名な料理学校の講師をしたりと実はスゲェ母ちゃんなのだ。
その母さんが結局〈卵かけご飯〉が一番ウマイと言って俺を震え上がらせたのは又 別の話...
んで母の味を生まれながらに舌に刻まれ続け、母の遺産を手にし、多分母の遺伝も覚醒させた妹は、
小学6年の時に30歳以下の若手料理人の世界一を決める国際料理大会でぶっちぎりの優勝をカマした.....のだが、友達が勝手に応募したとかドコのアイドルかってのも又 別の話...っていいのかそれ?
「のぉしず兄よ、手隙ならば箸や茶碗をテーブルに並べてくれんかの?」
「うっ面倒くせぇ...」
「何を言うておるか、動かざる者 喰わぬが如しじゃぞ?」
何!?その風林火山みたいな家訓? ってかちなみに妹のアノ変な喋り方は婆ちゃんっ子だった母さんも〔婆さん口調〕で、妹もそんな母の記憶とレシピに書いてある文字から同じ様な言葉遣いになり、そこから何故か舞妓ハンと奇跡の融合を果たし今の言葉遣いになった。
俺はその事に早めに気づいたが言葉使いくらい別にとほっといたら、前に帰省した長女の【一姉】にバックドロップを喰らった。
結局 言葉の矯正も時すでに遅しで、その後 直る事はなかった。んで今尚その喋り方が進化している事をまだ誰も知らない ...
僕 しずえもんです。
ジャイアンはいつもスネ夫と一緒にのび太君をイジメるくせに、たまに優しかったり逆にのび太君と組んでスネ夫イジッたりとジャイアンてツンデレの小悪魔的な天賦の才があるんじゃないかな?もしジャイアンが可愛い女の子だったら のび太君は絶対引っかかっるよねぇ。
次回 超職人大家族。
小悪魔でなく本物の悪魔の姉の一本です。
「日本のヒーローは異世界に喧嘩を売る。」も連載中なので見てねぇ。