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最近の若いモンは全く・・・の巻き


 校門の所で摩耶さんと合流した後、目的地まで本日は徒歩。

彼女はいつもの魔女衣装に、先ほど話していた髑髏の杖、ダンシングしゃれこうべMk3改を装備。

中々に奇妙奇天烈奇奇怪怪な格好であり、当然の事ながら街行く人が好奇の視線を投げつけて来たりもするが、摩耶さんは到って平気……と言うか、全く気にも留めていなかった。


うぅ~む……

物凄く見られているの平然としているのは、何故だろう?

視線に気付いていないのか?はたまた神経がミスリルかチタン合金で出来ているのか?

等と疑問に思っていると、黒兵衛が耳元で、認識の違いや、と呟いてくれた。

「え?どう言う意味?」


「摩耶姉ちゃん、微妙な所もあるけど、センス的には到って許容の範囲内や。それは知ってるやろ?」


「……そうだね」

確かに、微妙ながらも普段着は……まぁ、辛うじて許せるかなってレベルだ。

この間も、部屋着だろうか『益荒男』と書かれたピンク色の謎Tシャツを着ていたが……

「でも、だったら何で魔女モードになると、あんな残念……もとい、個性的なお姿に?」

もしかしてそれが彼女のロック魂?パンク精神なのか?


「せやから、それが認識の違いや。魔女はああ言うモンやと、姉ちゃんの中で固定観念化されとるねん。姉ちゃんにとってあの格好は、ビジネスマンがスーツ着るのと同じなんや。完璧に習慣化されとるから、着ている衣装がダサ…イレギュラーな装いでも、それを不思議と思わんのや。自分で違和感を感じんのや」


「なるほど。でもあんなに視線を受けているのに……普通は気付くんじゃね?」

俺ならストレスで胃に穴が開くぞ。


「その辺は慣れやな」


「慣れ?」


「摩耶姉ちゃんはお嬢様や。超の付く大金持ちの御令嬢や。小さい時からパーティーやら何やら、人前に出る事が多かったさかい、視線に晒されるのには慣れとるんや。自分かてそうやろ?一応は王やで……他人の目なんて一々気にも留めてへんやろ?」


「俺は結構、視線を気にしちゃうタイプだぞ。そもそも全く慣れていない。パーティーとか舞踏会も出た経験はあるけど、殆ど空気のような扱いだったし……注目された事は一度も無かったからなぁ」


「……相変わらず涙が出て来るような過去やな」

黒兵衛はそう呟いて、俺の頬を肉球で撫でて来た。

慰めているのだろうか?


「ん~……ところで摩耶さん」


「は、はい?何でしょうかシングさん?」

前を歩く魔女ちゃんが肩口から振り返り俺を見やる。


「いや、本日の目的地は神社と聞きましたが……」


「そうです。この先にある少し大きな神社です。とは言っても、特に観光スポットとかではないのですが……」


「そもそも神社ってなんです?いや、ある程度は予備知識として知ってますよ。巫女さんなる可愛いシャーマンがいたりする宗教施設ですよね?アニメで観ましたよ」


「……違います」

摩耶さんは何故か平坦な口調で言った。

しかもどこか醒めたような態度でだ。


「何を期待しているのか知らないけど、巫女なんて普段は大きな観光地の神社にしかいないわよ」

と、摩耶さんが下げている手提げ袋の中から酒井さんが顔を覗かせて言った。

「その辺の普通の神社には常駐してないわ。居るのは年末とお正月だけ。それも臨時アルバイトの巫女だけよ」


「ありゃ?そうなので?そいつは残念だ……凄く残念」


「現実と二次元は違うのよ。全くこの薄ら馬鹿は……そもそもここに可愛い魔女がいるのに、妄想の巫女に欲情してんじゃないわよ。本当にデリカシーの無い男ね」


「むほ?あ~……そうですね。摩耶さん、可愛いですもんね」

そう俺が言うと、摩耶さんは長い髪を大きく揺らしながら、

「え?え?そ、そんな……可愛いだなんて……な、何を言うんですかシングさん」

ワタワタと手を振り、慌てふためく魔女ちゃん。

何だか小動物を見ているようで、ほっこりな気分になる。

だが……酒井さんがINしている手提げ袋もグルングルン振り回しちゃっているのが何とも……大丈夫かな?


「ところで摩耶さん。さっきも酒井さんに聞きましたけど……その神社で何が起こっているのか、実のところ分からないと言う話でしたが……」


「そ、そうです。ランキフォイザーさんの調査書によりますと、カテゴリー2か3のあやかしの仕業ではないかと書いてありました」


「妖?」


「物の怪の類や」

と黒兵衛。

「妖や物の怪、それにUMA……色々と言い方はあるけどな。ま、それ等を引っ括るめて妖怪って言うんや」


「そうなのかぁ……って、そもそも妖怪ってなんだ?アニメ知識しか無い俺には、ちょいと分かり難いんだが……」


「あ~何て言えばエエんやか……酒井の姉ちゃん、説明したってや」

「シングの苦手な幽霊とかの類じゃなくて、既存の生態系から逸脱した摩訶不思議な生命体の事よ」


「ふにゃ?」


「カテゴリー的には概ね5つに分類されるわ。あ、もちろん体系的に確立された学問があるワケじゃなく、便宜上、私やアルが独自に解釈しているだけよ。だから他の組織とは少し違う所もあるけどね」


「はぁ……なるほど。んで、具体的にはどんなのがあるんで?」


「え?ん~そうねぇ……おつむの弱いシングに分かり易く説明すると、カテゴリー1が古代種。古き神や精霊と呼ばれるモノから派生した種よ。多分だけど、大昔にこっちの世界に来た異世界の生物が進化したモノじゃないかしら」


「黒兵衛みたいな?」


「そうね。ある意味黒ちゃんもカテゴリー1の妖怪ね。種としては、メジャーどころだとか天狗とか雪女とか……後は一つ目系の妖怪も含まれるわ。他には長面妖女とかパーントゥやパウチと言った珍しい種もいるわね。それと鬼系の妖怪は殆どがカテゴリー1ね」


「なるほど。確かに俺の世界でも鬼族の系統ってやたら多いですからね。分類学だと鬼科って独立の科が存在しているし……単眼種も、殆どが鬼科鬼属だったような……どうだったかな?それに雪女って、フローズンの系統かな?」


「で、カテゴリー2が特異種。人も含めた動植物から無機物に到るまで……ま、要は全ての物が何かしらの要因で妖怪化したものね。この間の九十九神もカテゴリー2に分類される妖怪よ。黒ちゃんとかアルの使い魔のケルベロスとか……一部を除いて、殆どの動物系妖怪はこのカテゴリーじゃないかしら。狸とキツネとか狢とか川獺とか……それ等から進化した妖怪がたくさんいるわ」


「ふ~ん……なるほど。しかし、何かしらの要因、ってなんだ?ただ歳を取っただけじゃないんでしょ?」

もしそうなら、この世界は化け物だらけだ。


「ん~……色々あるわね。何かの大きな魔力に触れたとか、誰かに呪いを掛けられたとかね。陰陽師や大陸系の導士なんかは、使役する為に犬や猫に術を掛ける事があるけど、それが逃げ出したって話もあるしね」


「なるほど」

俺の世界にいる魔獣使いも、基本的に呪文で魔獣の行動を縛るし……

それが逃げ出したら、まぁ色々とやらかすでしょうなぁ。


「そしてカテゴリー3が……シングの苦手な怨霊的なモノよ」


「え?どう言う事?幽霊の類じゃなくて、妖怪の話でしょ?」


「そうね。簡単に言えば人間や動物の恨み辛みが具現化したものよ。土蜘蛛にシイとかガシャドクロ、火車に魍魎と……こっちも多種多様で種類は多いけど、現代だと余り見ないわ。殆どが大昔に駆逐されちゃったし」


「それが良く分からんのだよなぁ。そりゃ俺の世界だって、恨んだり悔やんだりしながら死んで行くのは大勢いるけどさぁ……化けて出たりとかは無いし、それが妖怪なる生物に変化するなんてのは……うん、本当に理解出来ん」


「シングの世界だと、死んだらそれで終わりって事よね?恨みや何か大きな未練がある人も、そのまま普通に……冥界?って所に行くの?」


「基本的にはそうじゃないのかな?死んだ事が無いから分からんけど……あ、でも最後の力を振り絞って、何か魔法を放つ事はありますね。例えば遺言的な物を残す魔法だったり、相手を巻き添えにする自爆魔法だったり……中には自分にアンデッド化の魔法を掛ける場合もあると聞いた覚えが……そう考えると、死後、化け物として実体化するのも有りか」


「文化的な違いもあるのかしら?」


「どうでしょう?単に俺が知らんだけかも」


「ふ~ん……で、話は戻すけど、カテゴリー4が言霊系よ」


「何それ?」


「怪談話や都市伝説から生まれた妖怪よ。物語に出てくる化け物が具現化したのよ」


「……は?」

な、なに?どう言う意味?


「凄い困惑してる顔ね。ま、無理もないけど……実のところ、私達もまだこの種の妖怪の誕生プロセスは分かってないのよね。ただ、何千何万と繰り返し語られる物語に言霊の力が宿り、そこから生まれる……と、考えているわ。だから言霊系なのよ。代表的な妖怪として火消婆とか加牟波理入道、けらけら女とか……基本的には無害な妖怪が多いけど、近年発生する類の物は危険な種が多いわ」


「ぜ、全然に分からんぞよ」

物語から生まれる?

はぁ?幻影とかじゃなく、実体として?

幽霊の類も理解できんけど、理論(?)的には何となく説明できる。

要は恨みMAXでブチ切れ状態の魂が冥界へ行かずにさ迷っている、って事だ。

だが、こっちはもう無理だ。

物語から化け物が生まれる?

意味不明だ。

そもそも言霊と言うのが分からんし。


「で、最後のカテゴリー5が、未確定種よ。まだ未分類の種や、既存の分類に当て嵌まらない種。それと極端に目撃情報が少なくて生態の確認が取れてない種ね。目目連とか毛羽毛現がいるわ」


「要はその他ってことですね。しかし……妖怪ってのは、何か物凄く種類がいますねぇ」


「そう思うだけよ。実際は地方で呼び名が違うだけとか、その土地の風土に合わせて少しだけ変化しただけなのよ。だから基本的な種はそれほど多くないわ」


「あぁ…なるほど」

それは良く理解できるね。

俺の世界でも、住む所によって色々と変化しているもんな。

高慢ちきなエルフ族も、森に住む連中と砂漠に住む連中とじゃ、見た目からして違うもん。

更にドラゴン種なんて殆ど別の種に見えるぐらい違うし。


「それとね、妖怪は地域によってカテゴリーが大きく偏っているのよ」


「どう言う意味で?」


「例えば関東より北には、主にカテゴリー1の古代種が多く住んでるわ。多分、手付かずの自然が多く残っているからでしょうね。逆に人口が多い関東圏には、主にカテゴリー4の言霊系の妖怪が多いの」


「ほぅ…」


「ちなみに京都を中心としたエリアにはカテゴリー3、怨霊系の妖怪が多いわ。理由は……ま、言わずもがなね」


「……」

取り敢えず、京都とか奈良とか、そっち方面は行かないようにしよう。

危険を冒さない魔王……それが俺様なのだ。

「でも、本当に酒井さんは何でも知ってますなぁ」

その辺は素直に感心だ。

上級魔術大学の先生みたいだよ。


「そう?長く生きてるだけよ。……生きてるって言い方はちょっとアレだけどね」


「それで、その妖怪とやらを見つけたら後はどうするんで?大抵は何かしでかして人間に見つかるパターンだと思うんですが……」


「ま、話が通じそうと判断したら、先ずは説得よ」

酒井さんはそう言って、摩耶さんと顔を見合わす。

「私達は退魔師じゃないからね。先ずは話を聞いてみて……それで納得したら保護して、摩耶の家が所有している山林とかに送るわ。もちろん、完全に手が付けられない状態なら、それ相応の処置は取らせて貰うけどね」


「……なるほど。しかしこう言っては何ですが、何か手緩いと言うか回りくどいと言うか……」

俺なら結構、問答無用で始末してしまうぞ。

いや、確かに良心の呵責は多少はあるけど……

王族として、領民に迷惑を掛ける種族やモンスターは、やっぱ退治しないとね。


「仕方ないわよ。妖怪ってのは大半は大人しい種よ。悪戯好きも多いけどね。で、暴れたりする原因の殆どは人間にあるの。それなのに話も聞かずに一方的に排除しようなんて……さすがに出来ないでしょ?」


「う、うぅ~ん……そう、ですね」

そうなのかなぁ?

それもまた自然淘汰の一つだと俺は思うんだが……どうなんだろう?

「で、今回もやっぱ話し合い的なことから始めるので?」


「それは……ちょっと難しいかもね」

酒井さんは難しい顔で、そのまま袋を出て摩耶さんの腕にしがみ付き、そこを登り始めた。

「もうすぐ目的地だけど……感じるでしょ?」


「はにゃ?」

俺は肩に乗っている、と言うかぶら下がっている黒兵衛に視線を送った。

「妖気や。かなり殺気も混じっとるで」


「……なるほど」

やはり俺は何も感じない。

敵性魔力も……感知無し。

危機察知スキルも反応が無い。

つまり安心安全と言うことだが……警戒を解いてリラックスする事は出来ん。

皆が言う妖気とやらが探知出来ないのは、俺がこの世界の環境に適合していないからではなかろうか?

もしそうなら、危機察知スキルの精度も少し怪しくなってくる。

現にこの間も、黒兵衛と散歩していたら車に轢かれそうになったし……

「要は、常に警戒を怠るなって事ですよねぇ」


「何か言った、シング?」


「独り言でごわす。それより目的地は……」


「そこよ」

摩耶さんの肩に乗っている酒井さんが前方を指差した。


「ほぅ……」

石垣に囲まれた緑成す聖域が前方にはあった。

緩やかな石段の先には、同じく石、もしくは俺の世界には無いコンクリートなる物で出来た大きなシンボルが建っている。

あれがアニメで見た鳥居なる代物らしい。

何処となく、山間部に住む精霊族の呪術師が使う古典魔法のサインに似ているような気がする。

「あれが聖域の入り口ってワケですね」


「一応ね」

酒井さんが言うと、その後を続けるように摩耶さんが、

「昔は本当に聖域であり、また何かしらの結界が張ってあったりもしたのですが……今はその数も大分減りました」


「そうなんですか?」


「そうなのよ。殆どの神社は空き物件ね。昔はちゃんと土地神とかが住んでたんだけどねぇ」

「これも時代の流れです」


「へぇ……」

良く分からんけど、報道番組でやっていた少子高齢化とか過疎地がどうとかって話かな?


「さ、行くわよ。気を引き締めなさいよ」

酒井さんはそう言って懐から何枚かの術札を取り出す。

摩耶さんも杖を握り締め、黒兵衛も俺の肩から飛び降り、警戒態勢。

そして俺も……取り敢えず幾つかスキルを解放しておこう。

遁走スキルと死んだフリのスキルも忘れずにね。


前を行く摩耶さんと酒井さんが石段を上がり、その後を黒兵衛。

そして最後尾は俺。

……

一番後ろって、ちょっと怖い。

もちろん先頭も嫌だけど……


「かなり瘴気が濃いわね」

「ですね」

「せやなぁ…」


「……」

そうか?

瘴気と言うなら、山で冒険ごっこしていた時に偶然に出くわしたスカルドラゴンの方が凄かったけど……

何しろガチで小と大をチビったしなぁ。

しかもその後で召使に嫌味まで言われたし。


「アルの調査書からだと、怪異が起きてるのは社の奥の大きな御神木の周辺って事だけど……」

「了解です」

酒井さん摩耶さんコンビがズンズンと突き進んで行く。

俺と黒兵衛は結構のんびりだ。

と言うか、初めて見る光景に気もそぞろだ。

知的興奮が収まらない。


「へぇ……凄いなぁ。木造ってのは俺の世界にも当然あるけど、この神社ってのは……中々に珍しい建築様式だな。それに庭の造りも面白いし……何であんな所に水飲み場とか魔獣の石像が?ふむぅ、中々に謎だ」


「庭ってワケやないんやけどな。魔王の所は神社とかお寺とか、そう言う宗教施設は無いんか?」


「そうだなぁ……」

顎に指を掛け、ちょっと前を思い出す。

生まれてからずっと見てきた日常の光景なので、特にそう言った考察は当然ながらした事は無かったが……

「何か少しはあったような記憶が……ただ、そんなに大きな施設は無かったし、数も殆ど無かったな」


「そうなんか」


「古い祠とか何かしらのモニュメント的な物は街道沿いとかに点在していたけど……特定の宗教的建築物は殆ど見掛けなかったな。何しろ多種多様な種族がいたからねぇ……種族によって、宗教の意味合いとかも変わってくるからな。特定の精霊神を祀っている種族もいれば、自分の先祖だけを祀っている種族もいたり……だから大規模な施設よりは、各家庭の中で小さな祭壇を作ったりとか……そんな感じじゃなかったかな」


「はぁ……なるほどなぁ」


「もちろん、それは俺の国での話だぞ?他所の国がどうなのかは、良く知らん。ただ、宗教国家……って言うのか?国全体で特定の宗教を信奉している国は幾つかあったと思うぞ。地理の授業で習った記憶がある。けど、そう言う国って基本的に単一種族の国家で、かなり排他的なんだよ。外交とかも規制しているみたいだし、中には他種族そのものを敵視して鎖国までしている国もあるって話だったな」

そんな事を黒兵衛と話しながら、神社の周りをゆっくりと歩き、裏手へと回る。

そこには木々が乱立している小さな森があり、小さな道が奥へと続いていた。

「ほほぅ…」


「かなりの妖気やで」


「……」

いや、それは分からんけど、何とも珍妙な感じだ。

木々の葉が生い茂り、陽はまだ高い筈なのに非常に薄暗く、湿気も多くてかなり陰鬱な景色だ。

普通、こう言った陰気臭い場所には、かなり山の奥まで入り込まないと遭遇しないのだが……

「って言うか、摩耶さん達は何処でしょうか?」

前を歩いていた筈の二人……もとい一人と一体の姿が無い。

目の前は道が一本。

御神木、とか呼ばれる大きな木へと続く細い道のみだ。

迷子になる筈が無い。


「こりゃ……取り込まれたか」

俺の一歩前を歩く黒兵衛が、尻尾を膨らませながら言った。


「取り込まれた?」

チラリと後ろを振り返ると……いや、普通に歩いて来た道だぞ。


「ちゃうで。取り込まれたのは摩耶姉ちゃん達の方や」


「ありゃ?そうなの?」


「せや。さして広くない筈のこの神社から、姉ちゃん達の気配を感じる事が出来へん」


「うぅ~ん……言われてみれば確かに。となると、転移の罠とか?はたまた結界的な何かに引っ掛かったって事かな?」


「そーゆーこっちゃ」


「その割には黒兵衛、お前さんヤケに落ち着いてるな。摩耶さんはお前の御主人なんだろ?使い魔なのに平然としているのは些かどうかと思うぞ」

まるで俺の昔の家来のようだ。


「それはワテが信用しとるからや。摩耶姉ちゃんはおっちょこちょいな所もあるけど、あれでもかなり高レベルの魔法使いや。酒井の姉ちゃんに到っては百戦錬磨や。この世界でもトップクラスの術者やで」


「あ~……分かるな。摩耶さんの実力はまだ良く知らんけど、酒井さんは年季が違うって感じだな。雰囲気で分かるよ」


「せやろ。せやからな、この場合……ヤバイのはウチらの方や。主力戦力と切り離された状態やで」


「主力戦力って……あのぅ……黒兵衛さん?僕チン、一応魔王なんですけど……最終決戦兵器ですよ?」

俺がそう言うと、使い魔の黒猫は『ヘッ』と鼻を鳴らし、

「ホラー映画観て悲鳴を上げるヤツが何を言うとんのや。昨日も大昔のホラー映画観て、ギャアギャア喚いとったやないけ」


「……この国のホラー映画はダメだ。あっちの国……はりうっど、だったか?あれは平気と言うか思わず笑ってしまうんだけど、この国のホラーはダメだよぅ。番町皿屋敷とか言ったかな?皿の数を数える奴。もう本当に理解不能で、ただただ恐怖だよぅ」


「ガチホラーは平気で、古い怪談話はアウトって……ま、分かるっちゃぁ分かるが、それでもエエ歳して情けないでぇ。ましてや自分、魔王やで」


「魔王イコール何でも平気、って考えは良くないぞ、黒兵衛君」


「せやけど苦手なモンが多い魔王ってのも、ちと考えモンや。自分、人参も嫌いやないか」


「全然関係の無い話ですな。そう言うお前だって玉ねぎ食べないじゃんかよぅ」


「猫には致死性の毒やぞ」


「俺にとっては人参がそれだ」

等と下らない事を喋りつつ、互いに辺りを警戒していると、

「お?」

チュンチュンチュンと鳴き声を発しながら、茶色の小鳥が何匹か足元に飛来した。

「おや、可愛い」


「雀…?」


「スズメと言う鳥なのか?中々に愛らしいではないか」

何気に腕を伸ばすと、その腕に一匹の雀とやらが停まる。

「おろ?しかも懐っこいですなぁ」

指を伸ばして頭を撫でるが……うむ、逃げない。

それどころか気持ち良さそうにしている。

むぅ……この警戒心の無さからして、誰かに飼われていたのかな?


そんな事を考えていると、不意に黒兵衛が叫んだ。

「アカン!?こいつら普通の雀やないで!!夜雀や!!」


「夜雀?」

次の瞬間、雀達はポンッと弾ける様に変化した。

酒井さんのような和服的衣装を着た手の平大の女の子だ。

背中から羽が生えている。

そしてその手には武器。

刀を装備している者、槍や釜などを装備している者、実に様々だ。


「お、おおぅ?なんだ?もしかして妖精族かにゃ?いや、鳥の姿をした妖精ってのは、あまり聞いた事が無いなぁ……珍しい種族なのか?それとも妖精族じゃなくてハルピー族の亜種とか?」


「妖怪の一種や!!」

黒兵衛が怒声を放ちながら、夜雀なる小さき者達といきなりバトルを繰り広げていた。

フギャンフギャンと喚く黒兵衛に、チュンチュンと鳴きながら羽根を生やした女の子達が突撃しては武器を振るう。


「おやおや…」

ま、猫と小鳥……相性的に悪いから仕方が無いか。

ってか、俺も攻撃されてるし。

身体の周りを飛びながら、刀や槍で切り付けたり突付いたり……チクチクして少し擽ったいではないか。

「あ~……でも懐かしい感覚だな。ノスタルジックな気分になっちゃうよ」

餓鬼の頃、城の裏手にある山に蜂妖精、ニンフェルビーネの大きな巣があって、そこへ良く遊びに行ったモンだ。

もちろん最初は警戒され、チクチク攻撃を受けたりもしたが、何度か通っているとその内に一緒に遊んだり蜂蜜ジュースを御馳走になったり、時には愚痴を聞いて貰ったりと……

「あの頃は友達も少なく、あそこが俺の心のオアシスだったんだよなぁ」

ただ、親父が残念な死に方をした後、色々と忙しく、めっきり足が遠のいてしまったが……今でもあの巣は残っているのだろうか。


「って言うか、そろそろ落ち着き給え、お嬢ちゃん達」

俺は飛んでいる夜雀を簡単に捕まえると、指先でその小さな頭を撫でながら、

「俺は敵じゃないよぅ。ちょいと用があってここを通ってるだけだよぅ」

そう言って解き放ち、また別の一匹を捕まえ、

「敵意は無いから、ちょっとだけ通してね。別にお嬢ちゃん達のテリトリーを荒す気とかはないからさぁ」

また解き放つ。

「黒兵衛も攻撃を止めろよ。先ずは話し合いがどうとか言ってた……って、居ねぇーし」

何時の間にか使い魔の姿が忽然と消えていた。

周りを見やると……何の変化も無い。

普通の世界だ。


うぅ~ん……黒兵衛も、摩耶さん達と同じく結界に囚われたかな?

ってか、もしかして俺、いきなりぼっち?

……

どうしよう。

ちょっと寂しいし……もう帰ってもエエかな?

でも、間違いなく後で怒られるだろうなぁ……

あまつさえ罰としてゲームやアニメが禁止になったら、絶望で泣いちゃうよ俺は。


「とは言え、独りだとどうにも心細いし、何よりこの世界のルールが分からん」

こう言う時、どうすれば良いんだ?

帰るのは論外として、取り敢えず摩耶さん達を探すか……はたまた、先ずは目的地へ行ってみるか?


「御神木がどうとか酒井さんが言ってたな。そもそも御神木ってなんだよ……アレの事かな?」

小道の先に、大きな木が聳え立っていた。

幹は太く畝っており、かなりの樹齢を重ねているのが分かる。

何時の間にか攻撃を止めていた夜雀達が、俺の周りでチュンチュンと鳴いていた。


「ふむ、木の種類までは分からんが……」

何かしらの波動を感じるぞ。

木を媒体にする種族?

森精霊のドリュアド族か?

はたまた樹木擬態のトレント族?


「でも、何か微妙に違うんだよなぁ」

そう呟きながら一歩踏み出すと、不意に木陰から何者かが姿を現した。

「ふにゃ?」

異形の男であった。

和装にも似た白を基調とした珍妙な衣装を身に纏っている。

人相も白の頭巾とマスクのような薄紙で口元を覆っているので分からない。


うぅ~ん……誰だ?

この気配からして……人間種だ。

ただ、微かだけど魔力も感じるし……何より、殺気を放ってるじゃんか。

もしかして、この神社とやらの管理者かな?

勝手に入って怒っているとか……


「何者だ、貴様?」

その男は、低い声で言った。

と言うか、紙で出来たマスクをしているので、モゴモゴしていて余り聞き取れない。

「どうやって結界を破った。夜雀どもは何をしている……」


……敵、かな?

だとしたら、ラッキーだ。

と言うのも、この人間世界で自分の実力を試すチャンスだからだ。

この間の酒井さんによるトレーニングと言う名の拷問により、この世界における俺の身体的能力がある程度は掴めた。

ズバリ言うと、超平均だった。

一般人と同じぐらいの運動能力だ。

ただしそれはあくまでもスキルを全て外し、種族特性アビリティの発動なども極力抑えた、全く素の状態でのこと。

つまり、ある程度アビリティやパッシブスキルが発動している普通の状態なら、その辺の輩には負けないと言う事だ。

もっとも、それはあくまでも対象が一般ピープルが相手だった場合の話。

相手が戦士や魔法使いと言った、職業的特殊技能、クラススキルを持っていた場合、どのぐらい俺の力……特殊な能力や魔法を使わない普通状態での力が通用するのか、前々から試してみたいと思っていたのだ。


とは言え、俺もクラススキルは幾つか持っているから、ピンチになる事は先ず無いと思うんだけどねぇ……

ちなみに俺の持っているクラススキルでレアなのが、『魔王』と言うクラススキルだ。

ま、当然と言えば当然なのだが、これがまた役に立たないスキルなのだ。

効果としては、全種族に何となく好かれる……かな?と言う、魅力値に僅かに補正が掛かるだけの残念スキルだと、その昔親父が教えてくれた。

正直、特に要らないスキルだ。

って言うか、本当に効果があるかも疑問だ。

何故なら、全種族に好かれるとか言ってる割には学校行事で班を作ったりする時にハブられたりした悲しい記憶があるからだ。


「取り敢えず基本スキルを少しだけ開放して攻撃……通用したらそれで良し。通じなかったら、これからの行動は出来るだけ慎重にって事で……」


「何をブツクサと……まぁ良い。取り敢えず消えろ」

謎の白装束野郎が、懐から紙切れを取り出した。

酒井さんの使う術札のようだ。


「ん……やってみるか」

一歩踏み出すと同時に、そのまま全力疾走。

瞬く間に男との間合いを詰めるや、

「魔王パンチ」

俺の右拳が相手の顔面を捉えるや、それは鈍い音を立て弾け飛んだ。

いや、正確には爆発四散してしまった。

男は首から上が粉微塵になった状態で、血を噴出しながらその場に崩れ落ちた。


「ありゃ?あっさり勝っちった」

これは……どう言う事だ?

俺が予想以上に強かった?

はたまたコイツが物凄く弱かった?

……

術士のようだし、物理攻撃が弱点だったかも……

「って、し…しまったぁぁぁッ!?服が血みどろになってもうた」

ど、どうしよう?

怒られるかな?

よもや御飯抜きとかはないよね?


そんな事を考え、ちょいとオロオロしていると、

「シングーーーッ!!」

酒井さんの怒声と共に、小さな拳が頬を直撃した。


「ふぎゃん!?」

夜雀の攻撃は身体能力で無効化されていたのに、何故か酒井さんのパンチは頭の芯に響く。

摩訶不思議だ。


「この馬鹿!!なに迷子になってんのよ!!」


「え?え~~~……」

ヒリヒリと痛む頬を擦りながら辺りを見やると、困ったような顔をしている黒兵衛と目が合った。

その後ろで、摩耶さんがオロオロとしている。

ちなみに夜雀達はビックリして、俺の背後に隠れながらチュンチュンとか細い鳴き声を上げていた。


「全く、私と摩耶が大変な時に……で、何がどーなっているのよ」


「いや、実は敵が……」


「敵?」

酒井さんが眉を顰めながら辺りを見渡し、俺の背後で血溜りの中に横たわっている首無し術者を発見するや、

「この馬鹿がーーーッ!!」

もう一方の頬にパンチを入れて来た。

ちょっと痛い。


「え?え?やっぱ殺したのは拙かった?」


「殺すのは別に良いわよ。そこまでのプロセスが大事なの!!」


「へ?」


「あ~……簡単に殺すなって事や」

と、黒兵衛。

「どんな敵でも、先ずは捕らえて情報を引き出すのが一番重要ってこっちゃ」


「な、なるほど」

言われてみれば、確かにその通りだ。

この術者が何者で、ここで何をしていたのか……それを聞き出すべきだった。

殺すのはその後でも出来るし、場合によっては利用できる。

情報は武器であり、力なのだ。


うぅ~む、思わず反射的に攻撃しちまったが……さすが酒井さんだ。

色々と勉強になる。

俺も常に冷静にならないと……

ただ、摩耶さんがかなり微妙な顔をしてるんだよなぁ。

アニメや漫画、映画などの知識から、人間ってのは同族を殺す事に対してかなりの嫌悪感を抱く種族らしい。

だから摩耶さんは……って、あれ?酒井さんも、一応は人間だと思うんだけど……


「本当にシングは……」

酒井さんはプリプリと怒りながら、転がっている術者の下へと歩いて行く。


な、何であんなに怒ってるんじゃろう……

と思っていると、黒兵衛がそっと耳打ちしてきた。

「姉ちゃん、あっさり罠に掛かってもうたからな。それで機嫌が悪いんや」


「あ、そう言うことですか」

それはそれで、困ったなぁ……僕ちゃん、八つ当たりの対象じゃないですか。

ま、そう言う扱いには慣れているけどね。


「せやけど自分、よぅ結界に引っ掛からへんかったなぁ」


「ん?特に何も感じなかったぞ?雀ちゃんと戯れていたら、いきなりお前もいなくなっちまうし……」


「この世界の住人にしか効かへんのやろか」


「うぅ~ん……どうだろう?トラップに対する抵抗スキルとかが反応したのかも知れんなぁ」

そう言って俺は黒兵衛を抱き抱え、摩耶さん達の所へと行く。

酒井さんは、首から上が塵となった遺体の上をウロウロと動き回っていた。

摩耶さんは口元を手で押さえながら、眉を顰めてそれを見守っている。

「と、こらこら雀ちゃんよ。死体を突っ突くな。食べモンじゃないぞよ」


「……夜雀に懐かれたの?珍しいわねぇ」


「昔から小動物には好かれるんですよぅ。その代わりに友達は少ないけど」


「その夜雀、多分こいつに使役されていたのよ。何かの術で縛られていたみたいね」


「ふむ……そうなのか?」

俺が肩に止まっている小さな雀に問い掛けると、チュンと少し大きく鳴いた。

うむ、何を言ってるのか分からん。

「で、そいつは一体、何者で……」


「……陰陽師ね」

酒井さんが遺体の懐から、術札と何かしらのアクセサリー的な小物を取り出した。

「オクタグラム……正八芒星の紋に、この様式の呪符を持っていると言う事は……護法院流を学んだ術者ね」


「ごほういん…流?」


「陰陽術、導魔流の分派の一つよ。でもこの男……蘆屋家一門の術者とは思えないわね。闇営業専門のはぐれ陰陽師かしら?……摩耶、その御神木を調べて」

「は、はい」

と、摩耶さんが古ぼけた巨木の周りを調べ始める。

黒兵衛も木の根元に行き、何やら匂いを嗅ぎ始めた。


「ところで酒井さん。この雀ちゃん達は一体……」


「夜雀よ。雀に変化する妖怪。夜道で人を惑わしたり狼を呼んだり……ま、時には危険を知らせてくれたりと、良い面もあるし悪い面もある、普通の妖怪よ。それほど脅威は無いわ。確か同族種に、袂雀とか送り雀って言うのもいたわね」


「へぇ…」


「その子達は保護しましょう。人懐っこそうだし……摩耶、何か分かった?」

「は、はい」

摩耶さんが木の幹に手を当てながら返事をするが、その顔はかなり渋かった。

「この御神木……木心坊です」

「やっぱりね。それで?」

「いえ、本体は……もうダメです」

「……そう」

酒井さんは大きく溜息を吐くと、

「外道が」

吐き捨てるように呟き、力強くジャンプ。

踏み付けられた死体の首から、体内に残っていた血がビュッと噴き出した。


む、むぅ……

「あ、あのぅ……酒井さん?一体何が……」


「この男、外法を使ったのよ」


「外法?」


「そ。この御神木だけど……木心坊と言う妖怪なの。古山茶ふるつばきの霊とも呼ばれる妖怪よ。で、術を掛けてその妖怪を動けなくし、そこから霊力とか妖力を吸い取ったのよ」


「な、なんともまぁ……何の為に?」


「決まってるでしょ?大きな術を行使する為よ。大抵は呪い系の術に使用するんだけど……万が一呪いが撥ね返されても、降り掛かるのはこの妖怪の方になるしね。何にせよ、ロクでもない事に使ったに違いないわ」


「……なるほど」

相手を動けなくし、そこから生きたまま魔力を吸って自分の欲望の為に使う……

酒井さんが怒るのも無理ないわな。

まさしく外道だよ。

俺の世界の犯罪者でも、そこまで非道なのはさすがになぁ……

体内魔力が少ない人間種ならではの犯罪って所かな?


「それで、その……御神木の妖怪は?」

俺がそう尋ねると、摩耶さんは険しい顔で首を横に振った。

そっかぁ……間に合わなかったか。

これは……さっき酒井さんにも怒られたけど、この男は生かして捕らえるべきだったな。

罰は生きている間に与えないとね。

……

ぶっちゃけ、拷問するって意味だけど。


「でもこの男自身は、大した術者ではなかったみたいね」


「え?酒井さん、そんな事まで分かるので?」


「当然よ。私達がここへ来たってのがそれ証明しているわ」


「ふにゃ?」


「つまり、この男は木心坊から妖力を奪い、何かしらの術を行った。……けど、制御が上手く出来なかったみたいね。こんなに瘴気が溢れ出しているんですもの。そしてその溢れ出た瘴気が、恐らくだけど偶々近くに居た人達に災いとなって降り掛かったのね」


「あ、それで色々と噂になって……回り回って俺達が、って事ですね?」


「そう言うこと。腕の立つ陰陽師なら、術の影響が外部に漏れることは先ず無いわ。そもそも外法なんか絶対に使わないしね」

酒井さんはそう言って、懐から呪符を取り出し、それを横たわっている死体の胸元に貼り付けた。

次の瞬間、勢い良くそれは燃え上がる。


お、おやまぁ……こんがりと焼けちゃって……


「はい、これで後始末完了。全く……後味の悪い調査だったわ」

酒井さんはフンと鼻を鳴らし、摩耶さんの肩に飛び乗った。

「さ、そろそろ帰りましょうか。陰気臭い場所は嫌いなのよ」

「そ、そうですね。ランキフォイザーさんには、私から報告しておきます」

「そうして。私は昔のツテを頼って、蘆屋家の連中に色々と聞いてみるわ」


「んじゃ、俺達もと……」

俺は黒兵衛を抱き上げ、肩に乗せた。

痩せこけた黒猫の使い魔は、

「なんや……今回は何もせん内に終わってもうたなぁ」

そんな事をぼやいていた。


「ん~……そうだな。結局、何だったんだろうねぇ?」


「結果的に何かしらの陰謀を阻止した。そう言うことよ」

酒井さんが軽く溜息を吐く。

「あと夜雀を保護した。今日はそれで充分ね」


「……確かに」


「ところでシング。今日の晩御飯は何が食べたい?少しは活躍したから、リクエストを聞いてあげるわ」


「え?そうですねぇ……」

俺は何気に未だ燃え盛っている術士を見やり、

「焼肉……かな?」

そう言ったら、摩耶さんが物凄く嫌な顔をしたのだった。


追記。

帰宅途中……

お巡りさんなる、この世界の警護官に追い掛けられた。

何故?と思ったら、黒兵衛が、

「そら自分……肩に大量の雀と黒猫乗せた全身血塗れの男が歩いとったら、普通は通報されるで」

との事。

ま、そりゃそうだ。

俺の世界でも多少は騒ぎになるもんな。

この人間世界なら尚更だ。










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